潜水艦イ-57降伏せずのレビュー・感想・評価
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和製潜水艦映画の白眉
Amazon Prime Video(東宝名画座)で鑑賞。
原作は未読(現在は廃版か?)。
松林宗恵監督×円谷英二特技監督、本作が初となる顔合わせで描き出す戦争ヒューマン・ドラマ。和製潜水艦映画の白眉と言って差し支えない素晴らしい作品でした。
艦長以下、艦長に絶対の信頼を置くクルーたちの繰り広げる人間模様と、特撮で描かれる緊迫の戦闘シーンが見事に融合して、戦争と人間の濃密なドラマが胸に迫りました。
タイトルが回収されるクライマックスの悲壮は筆舌に尽くし難いものがあり、任務が無意味となる展開しかり、戦いに赴いた意味もしかり、戦争の悲惨さが伝わって来ました。
世界水準の潜水艦映画! クライマックスの決戦はもう痺れまくりました! こんなに燃える戦争映画はそうないと思います
本作は1959年7月公開
大怪獣バランが1958年10月公開
宇宙大戦争が1959年12月公開
円谷英二の仕事としてはこの間に挟まっています
特撮は見事
海中を進む潜水艦、海面を走る敵駆逐艦
水中を疾走する魚雷、爆雷を投下する敵哨戒機
どれもこれも見事
特撮ファンなら、観てないのは恥ずかしいことだったと感じるはずです
しかも本編が凄い
本物の潜水艦で潜行や浮上シーン、甲板作業、艦内セットも本物をそのまま使っているシーンがあると思われます
それ程凄い
チャチさは皆無
海外の潜水艦映画に全く見劣りはしません
世界水準の潜水艦映画です!
眼下の敵は1957年の作品、日本公開は1958年1月
日本からの潜水艦映画の回答が本作だったのです!
海上自衛隊が発足してまだ5年目
潜水艦はこの撮影に提供された「くろしお」ただ1隻のみ
それも大戦中の米軍の主力潜水艦だったものを譲り受けたものです
潜水艦のり、日本海軍とはこうなのだという、役者達の行動、立ち振る舞い、言葉遣い
その考証の再現度合いもまた素晴らしいです!
ストーリーがまた凄い!
太平洋戦争末期、沖縄方面で特攻の海軍版の人間魚雷回天号の作戦行動中のイ57号潜水艦から始まります
タイトルから、玉音放送を無視して終戦以降も戦い続ける潜水艦の物語のように想像する向きもあろうかと思いますが、全く違います
沖縄からマレーシアのインド洋に面したペナン島基地に向かえとの指令が入るのです
訝りながらペナン島に着くと、大本営から参謀が飛行機で秘密指令をわざわざ直接伝えにきています
ペナン島基地から長駆1万海里、インド洋を越え、喜望峰を回り、大西洋はモロッコ沖合100海里、スペイン領カナリー諸島パルマ島へ向かえ
目的は某国外交官二名を本土決戦が始まる前に、和平交渉のため秘密裏に欧州に送ること
どうです!
燃えるでしょ!
この設定、宇宙戦艦ヤマトの元ネタだと勝手に思っています
戦って、戦って、戦い抜いて死ぬことが男じゃないですか!
というような艦長、先任士官、パリパリの新任少尉、下士官、乗組員ばかりなのです
艦長は一旦命令を拒否します
しかし参謀は改めて説明します
沖縄が陥落した今、本土決戦はもういつ始まるかわからない
始まってしまえば、日本は滅亡してしまう
本当に日本人のほとんどが死んでしまうのだ
それを防ぐ為に、この作戦をやり遂げなければならないのだ
こう作戦目的の重大性を熱く説得され、艦長は自ら、やる!やり遂げると固く決意するのです
この艦長を池部良が演じるのですが、まあ格好いいったらありゃしない!
軍医の平田昭彦もまたいい!
先任士官の三橋達也もベテラン士官の味が凄く出てます
そして参謀役が藤田進です
参謀役が似合うこと!
彼がウルトラセブンで地球防衛軍の参謀役をする、その源流は本作かも知れません
1945年恐らく7月中旬頃、イ57号潜水艦はカナリー諸島に向け出航します
途中様々な苦難を乗り越えていかねばなりません
敵駆逐艦や、哨戒機に発見されたり、艦内で騒ぎが起きたり、暴風雨を承知で突っ切ったり、途中止むを得ず交戦したりします
戦死者もでます、急病人もでます
外国人外交官は二名
しかもその内1名はうら若き女性なのです
もうそれだけで艦内がざわつきます
ポツダム宣言は7月26日、原爆投下は8月6日
イ57号潜水艦は間に合うのか?
果たして、遥か1万海里を敵中突破して到達出来るのか?
外交官二名を無事届けることができるのか?
そして日本への帰投はどうするのか?
その答えはぜひ本作をご覧頂いてご確認下さい
クライマックスの決戦はもう痺れまくりました!
こんなに燃える戦争映画はそうないと思います
オススメです!
イ57号潜水艦は実際にその艦番号の潜水艦が戦争中ありましたが、全く関係ありません
その潜水艦の性能ではそもそも1万海里を航海すると航続距離ギリギリでこの任務は果たせません
もっと大きい艦型で航続距離も倍以上あり、その他の性能や装備が符合するイ53が本作のモデルの潜水艦のように思われます
潜水艦イ-57無駄死にせず
近年…と言っても10年くらい前に『ローレライ』『出口のない海』『真夏のオリオン』などがあったが、当時としては珍しかったであろう和製潜水艦映画。
1959年の作品。
ある極秘任務を受けた潜水艦イ-57。某国の外交官父娘をスペイン領のカナリー諸島に輸送するというものだった…。
潜水艦映画の王道、息を潜め、レーダー探知、魚雷の爆音や衝撃、敵との攻防はスリリング。
むさ苦しそうな潜水艦内部や乗組員たちの描写もなかなかリアル。海軍出身の松林宗恵監督が細部までこだわったという。
任務の詳細は乗組員たちには知らされず。任務に疑問の声が高まる。
任務の詳細を打ち明け、皆、任務には否定的。が、艦長の為に命を懸ける覚悟は出来ている。
外交官の娘は日本人も軍も潜水艦も嫌っている。
ある時高熱を出す。熱を下げる為に氷を作ろうとするが、それには艦内の燃料をカットし、乗組員たちが猛暑に耐えねばならない。
かくして氷は出来るが、娘はそれすら拒否、軍医長は叱咤する…。
艦内の人間ドラマもなかなか見応えあり。
これがハリウッド映画だったら外交官の娘と軍医長は恋に落ちているだろう。
全編に渡って円谷特撮の真骨頂。
モノクロ作品だがクライマックスはカラーフィルムで撮影され、それをまたモノクロに戻し、なるほど言われて見れば映像は鮮明。
任務は成功。任務を終えたイ-57は再び戦いに戻り、海に沈む…。
任務の目的は日本に有利な和平の為。
が、それから程なく、終戦。
彼らは無駄死だったのか…?
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