「歴史は進歩してる!」パッチギ! スコア105さんの映画レビュー(感想・評価)
歴史は進歩してる!
「歴史の進歩とはなにか?」と問われたときの一つの答えとして、「不条理の苦痛をひとつでも解消していくこと」というのがある。
本人の意志ではどうにもならないことで、不当な扱いを受けていることを「不条理な苦痛」という。例えば、肌の色とか国籍とか出身地とかは、本人の意志ではどうにもならない。そんな不条理な苦痛を解消していく社会を実現していくことが、歴史の進歩と言えるのではないだろうか。
むかし、お世話になった会社の創業者はいわゆる在日2世で生きていれば80歳半ばになっている。その社長とこの映画の公開当時に「パッチギ!」談義となった。
その社長はうれしそうに「あの映画はオレらの青春時代とかぶるんだよ!ホントにあんな感じだった!」
「仲間の〇〇が日本人生徒にやられた、仕返しに行こう!とかやってたもんだよ!笑」
みたいな感じだった。
ただ、その後神妙な面持ちでこんなことも語っていた。
「大学卒業を控えた就職活動では、どうしようもない差別的扱いをうけたよ。どこの面接官もいうんだよ、『きみは確かに優秀な学生だ、ウチで活躍していく姿も想像できる、ただ、申し訳ない、君の出生だとウチでは採用できないんだ』ってな、だからオレは自分で創業することにしたんだよ」
その社長はいわゆる東京六大学といわれる名門大学を首席で卒業していたとのこと。そんな彼でも、出身地という本人の意志ではどうにもならないことで差別的な扱いを受けてきた。
この映画の長老的役柄(笹野さん)の人は、その社長よりもひと回り以上上の年代になる。もっとキツい差別的扱いをされていたことは想像でき、その時の蟠りも同時に想像できる。
ひるがえって、いまこの令和の時代はどうであろうか?完全ではないにしろ「不条理な苦痛」は幾分ではあるが解消されてないだろうか。(むしろ不法者への優遇を問いただそうとする潮流はあるかも)
公開から約20年経ち、この映画をみると日本社会の歴史的な進歩を実感できる。
当時は、まあ普通の熱い青春群像劇であったが、久しぶりに観た「パッチギ!」はとても興味深い映画に感じられた。