「あの時代」パッチギ! key_westさんの映画レビュー(感想・評価)
あの時代
1968年、昭和43年という時代背景を考えるとき、この映画に描かれた歴史観は除き、エピソードの数々はエンターテイメントとしての要素を外せば事実に基づくものだと思われる。
私の父は在日コリアンで母は日本人。小学校は東京と川崎の朝鮮学校、中学は横浜の朝鮮学校で学んだ。
中学に入学したのが昭和46年なので東京朝鮮初級学校(小学校)の3年生頃の時代背景を少し話したい。
東京では年末に府中で現金輸送車が奪われる三億円事件が起きた年である。
当時、東京・十条の東京朝鮮高級学校と一部の私立高校生徒との間で連日のように小競り合いがあり、小田急線の新宿駅のホームで朝高生たちが襲われたり、国鉄(現JR)の複数の駅で反目し合い、朝高生が乗車している京浜東北線の窓ガラスが投石や傘の先端で割られて新聞記事に載ったりしていた。
映画で描かれた京都の事情は知らないが、東京でも同じことが起きていたことは事実として書いておきたい。
私は後年、高校は都立の定時制に進み、日本と朝鮮との歴史を一から学び直したから井筒監督とは異なる歴史観を持っている。
ただ在日一世の中には笹野さんが演じられたような日本人に虐げられた経験から日本人を嫌う人が沢山いたのも事実である。
同級生の親には焼肉店、ホルモン焼き店、廃品回収業、土木工などを生業とする貧しい家庭が多かったことも事実として伝えておきたい。
この映画は、そのまま東京に舞台を移してもリアルな時代背景として描かれたことと思う。
米ソ冷戦、安保闘争、ザ・ビートルズ来日からのGSブームなどが描かれたが、その後も東大安田講堂占拠、連合赤軍による浅間山荘事件などが続く、当時の時代背景を知ると、この映画をより深く理解できると思いますよ。