Little Birds イラク戦火の家族たち

劇場公開日:

解説

2003年3月のアメリカによるイラク侵攻以来、『ニュースステーション』や『News23』でイラクからの中継リポートを続け、ボーン・上田記念国際記者賞特別賞を受賞したビデオジャーナリストの綿井健陽が、取材期間中に記録した123時間余の映像から作り出した映像作品。空爆で2人の子供を奪われた父親サクバン、右目を傷ついた12歳の少女ハディールらを主人公に、バグダッド、アブグレイブ、サマワなどイラク各地を舞台に、戦火の中で懸命に生きる人々を丹念に描く。

2005年製作/102分/日本
配給:Project Little Birds
劇場公開日:2005年4月23日

ストーリー

取材は2003年3月に始まった。空爆前の豊かなバグダッドの日常、子供たちは、朗らかな笑顔をたたえていた。激しい空爆が始まり、惨禍が人々を襲う。老人や女性、そして子供たち…。次々と弱いものが大きな犠牲となっていった。バグダッドへの米軍入城の瞬間をとらえた綿井健陽は、米軍の戦車の前に立ちはだかる一人の女性の叫びにキャメラを向ける。「How many children have you killed? Go to the hospital and see the people dying!」(お前たち何人の子供を殺したんだ? 病院に行って、死んでいく人たちを見てこい)。その言葉に突き動かされた綿井は、翌日バグダッド市内のサウラ病院で凄惨な状況を目撃する。瀕死の娘を抱えたアリ・サクバン(当時31歳)は、イラン・イラク戦争で2人の兄を失い、自らはイラク軍兵士として徴兵され、クェート侵攻に参加し、そして今回のイラク侵攻で3人の子供を空爆で失った。それから一年、「戦争で人を殺すために、人間は生まれてきたわけではない…」と、サクバンは戦乱のイラクの現状とこれまでを語る。米軍の非人道兵器「クラスター爆弾」で右目を負傷した12歳の少女・ハディールや右手を失った15歳の少年・アフマド。戦火に傷ついた様々な家族を描きながら、綿井は戦争の「意味」を問う。

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映画レビュー

5.0イラク自衛隊派遣の目的・・・それは飯を食って、記念撮影することだった!

2021年8月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

(綿井監督トークショー付きにて鑑賞)
 「ニュース・ステーション」や「NEWS23」などのイラク報道でお馴染みのフリージャーナリスト綿井健陽氏が自ら撮った123時間に及ぶ映像を再編集し、TV未公開部分をも含めて102分の映画を作った。戦争ドキュメンタリー映画は何本も観てきましたが、これほどまで市民に密着し、心を通わせたものは少ないでしょう。しかも被害に遭ってるのは民間人ばかり。戦争の一番の犠牲者は弱い一般市民であることが痛いほど伝わってきました。

 心に響くイラク人の言葉、「日本人はなぜこの戦争を支持してきたんだ?」。日本がイラク戦争を支持したという事実はイラク全土に知れ渡っている。綿井氏はもっとも痛い部分を突かれ弁明するが、その言葉は字幕にも書かれなかったようだ。日本人というだけで、地元の人たちに嫌われはじめると取材も苦労が絶えなかったと思います。そんな中での取材の敢行。病院内の映像では爆風で脚がちぎれたり、脳みそが飛び出した頭を押さえたり、内臓がはみ出したりと、直接的な映像こそなかったのですが、子を失った親の慟哭や悲痛な叫びが胸に響いてきました。

 不発弾を触って腕を失った子供。子供からすれば、平和な生活に突然やってきた戦争。大人の視点で見れば、イラン・イラク戦争、湾岸戦争と、戦争が永遠に続いて、家族を失う悲劇としか映らない。そして、「人間は戦争をするために生まれてきたのではない」という言葉が重くのしかかってきます。

 日本では衆議院総選挙の真っ只中。「フセインは大量破壊兵器を隠している」と主張し、米ブッシュ政権を支持し続けてきた政治家たちは、論点をすべて郵政民営化にすりかえて頑張ってるところなんですね。ブッシュ支持の政策を貫いたおかげで、元来親日派だったイラク人が日本人を敵視するようになったことなどは、多分、彼らにとってはどうでもいいことなのでしょう。

 綿井氏のトークショーでは貴重な意見も聞くことができました。イラクにおける医療などの重要な援助をもっとも頑張っているのは、軍隊ではなくNGOなのだと・・・そして軍隊を派遣している国のNGOはゲリラに狙われやすく、フランスのように派遣していない国ほど狙われずに活躍できるとのこと。自衛隊さえ派遣しなければ、若者が拘束されることもなかったろうに・・・

【2005年9月映画館にて】

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kossy

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