「スリリングと風刺。なかなかな。」運命じゃない人 Takehiroさんの映画レビュー(感想・評価)
スリリングと風刺。なかなかな。
『運命じゃない人』(2004)
dTVの配信があと少しという事で選んだのもあるが、13年前の映画だから、私が既に37歳の頃の作品なのだが、当時からずっと出逢うのは難しい時代が続いている。主演のサラリーマン(演:
中村靖日)は恋人に失恋したばかりらしく、彼が出てくる前に、女性(演:霧島れいか)が冒頭に出てくるのだが、彼女も婚約破棄されて宿さえないというどん底の状態で、どうして二人が出会ったかというと、彼の友人のラフな男(演:山中聡)がレストランに彼を呼び出して、失恋しても新しく見つけていかねばだめなんだぞとはっぱをかけていて、彼はうじうじしていたが、たまたま落ち込みながら後ろにいた女性に、彼のために一緒の席で食事しないかと声をかけると、女性は席につく。そして男はトイレを装い出ていってしまい、彼と彼女と二人きりになり、事情を聴いたりして、店を移動して、その後、彼は自転車を押して、彼女と夜の道で会話する。なんだかぎこちないドタバタをしている。男女ともかなり不器用そうなキャラなのだが、女性のあまりの不器用さに男性が笑いをもらす。男性も女性もそんなことはしたことがないというが、本当にないだろうが、女性が居場所もないことから、男性は自室に女性を誘うが、女性に別の部屋を提供してあげる。男性は正直に前の彼女(演:板谷由夏)が1週間で出ていってしまった。別に好きな人がいて結婚すると言われたと女性に言う。女性はその前の彼女はひどい女だと憤る。私としては、こうしたいい加減な同棲が悲劇を生じるのだと思うが。女性はまだその女が好きですか。と聞くが、男性はどうしようもないというようなことをいい、女性が思わず男性を抱き寄せたが、お風呂入れてきますと男性はいったん逃げたが、鏡の前で顔をみたりにおいを確認したりした。女性が風呂に入っている間に、前の彼女が突然きてしまう。残っている荷物をとりにきたとあっけらかんとしている。すると女性同士が鉢合わせする。女性は前の彼女に怒りを表し、出ていってしまった。男は女性を追いかける。見つからない。見つけた。男「こんな時間にいくところ、ないでしょう」女「ホテルに泊まるから大丈夫です」しかし、このタイミングで見つかって良かったと思う。もう少し男性が追うのが遅いと見つからなくなってしまっていただろう。女「やっぱり、知らない人の部屋に泊まるなんてよくないし、あの人、夜にわざわざ荷物を取りにきたなんておかしい。戻ってきたんじゃないですか。だって宮田さんみたいな優しい人、すぐに忘れられるとは思わない。戻ってください。まだ好きなんでしょ」「好きじゃない」女はタクシーを拾う。「行かないでよ」「誰でもいいんですか。自分のものになりそうだったら、誰でもいいから好きになるんですか。さっき会ったばかりなのに。私のこと何も知らないのに。変です。今日はありがとうございました。」いいセリフだ。男は深夜の東京を走って追いかける。タクシーの前に飛び出して止めてしまう。息を切らせて、「頼む。電話番号教えて。もう二度と一生会えなくなっちゃうから、電話番号教えてください。せっかく会えたんだからさ。さっき会ったばかりだけど、あなたのことなんにも知らないけど、また会いたいんです。気味悪いですか。」いいセリフだ。タクシー運転手が「電話番号くらい教えてやんなよ」と急に後押しする。BGMもしゃれていると思う。タクシーが出ていって、男は小躍りしているところで、女性を気にいっていることを示している。そしてシーンが変わるが、出会いのシーンとしてしゃれた感じにも思える。ラフな男は探偵だったんだ。そこになぜか宮田の前の彼女の女がやってくる。「宮田君。元気にしてる?」「気になる?」
「ちょっとね。」「嘘つけ。あんな城みたいなマンション買っちゃって、大変だよ」探偵神田は、女を調べていた。そもそも五歳サバ読んでた。(実は私は10歳サバ読んだ女に婚活で出会ったことがあり・・・。でも懐かしくもある)。そして女は組長の女で、交際詐欺師だった。探偵「あんたやくざなめると長生きしないよ」「外国に逃げたいの。手伝って。宮田君の部屋にパスポートがあるの」そういうわけか。女は探偵の携帯番号をやくざの携帯に入れてしまったとかなんとか。そうしたこともあるのか、探偵は宮田の部屋からパスポートをとりにいく。「あんたに事件起こされて新聞なんかに載せられたら、宮田は余計落ち込むよ。それにやくざから金奪って無事なわけないよ」コメディータッチでもありながらサスペンスタッチにもなってしまった。個性的な作品な感じだ。なんかやくざと遭遇しそうな危険な展開から抜け出せたようで、探偵がせっかく改善をはかろうとするが、女は百万を渋るが、探偵が押し切って、返しに忍び込む。「なんだお前」「バイク便です」みると、後輩が先輩やくざに頭をはられている。気づかれたが、間一髪、エレベーターで逃げる。命がけの百万円の仕事だ。百万をやくざに返し、別の百万を女からもらい。オンナは「今に私の金の匂いから、
いつか取ろうと思ってたんでしょ」「あんたみたいな考えじゃ自殺するよ。宮田は中学生時代からの親友だったからだよ」。「あんたみたいな人嫌いじゃないんだけどね」女が去る。加藤探偵はハードボイルドだ。ところがやくざに見つかってしまい、加藤探偵はどうなるのか。車で事務所まで
パンツ一丁で座らされる。組長が登場すると、詐欺師の女も一緒にいた。なぜだ。組長(演:山下規介)が探偵と恋愛詐欺の女を座らせて、「あんたはやくざのメンツをつぶしたんだよ。あんたの部屋調べたら、あんたいい仕事すんじゃない。あんたかえっていいよ。」「ありがとうございます」
しかし、ひどい女と関わるとろくなことがない。すごい構成だと思うが、100万円はいった荷物は
宮田の部屋にまだあったのに、知らない宮田は前の彼女の整理として全部捨ててしまった。またピンチだ。これは宮田とさみしい女の恋愛ものではなかった。かなり怖い設定なのだが、組長が
山下規介なところがほっとさせてくれる。キャスティングによってはしゃれにならない。それにしても詐欺女は悪の度合いが強い。どこまでもとんでもない感じ。案の定か、とんでもない金額の札束を持って逃げてしまった。宮田も加藤探偵も浅井組長も、詐欺女のためにとんでもないことになる。
しかし、映画の工夫というか、軽トラなど、伏線がなるほどと思わせる。加藤探偵が追い込まれたのも、詐欺女の嘘からであった。映画はいったん話が逆戻りしたのか、前後の脈絡がちょっとわからなくなった。さすがに組長、シートベルトをせずに運転していた。音楽の使い方も面白いと思う。映画の時間が前後していたんだな。それでわかってきたが、すごい構成だな。そして、金が絡むと、
清純そうに思えた、最初のさみしい女さえ・・・。ここは衝撃的であった。しかし凝ってるというのか、
すごい作品だと思ってきた私。金の絡む不信な世の中でも、タクシー運転手のセリフがオアシスに思える。「不器用でまっすぐな男がいいんだ。幸せにしてくれるんじゃないか」みたいなセリフを言った。ところが、最初の女は教えた電話番号は嘘だった。理由もあるにはあったが、加藤探偵は宮田に嘘を教えたんだよ。諦めろよ。というが、宮田は書き間違えたんだよ。あの人はそういう人じゃないとお人よしである。少なくとも宮田と加藤探偵の友情は本物だ。そしてあっ。と思って、なんだろうと思ったら、この映画はまだ味があった。しかし、なんともやるせないような。それでも心ある人はいるんだったというような。高度な映画かも。脚本とも、内田けんじ監督は1972年生まれ。