劇場公開日 2005年6月11日

「「”これから”本でも、読みます。」」いつか読書する日 にゃろめさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「”これから”本でも、読みます。」

2025年2月4日
PCから投稿

岸部一徳と田中裕子は、
あえてこのキャスティングっすよね?
ジュリーこそ出てはいないが…。

本屋で自転車に乗るお互いの親を見かけて以来、
ミナコとカイタの時間は止まったまま。
止まったままなのでミナコは本を
買い続けるしかない。
ただ淡々と作業のように新聞を切り抜いて…。
カイタは一生地味に暮らすと心に決めるしかない。

止まっていた時間が30年ぶりに
動き出した瞬間に本棚を見たカイタは気づいてしまう。
想う人を孤独にしてしまった圧倒的で膨大な時間に。

止まっていた時間は動き出したと同時に”終わって”しまった。
もう作業のように本を買わなくてもよいのだ。
「これからどうするの?」
「これから、本でも読みます。」

50年過ごしたこの街を見下ろしながら、
離れない決心をした15の自分を確かめるように、
大きくひとつ息を吐くのだ。

このキャスティングは”あえて”かと思ったが、
あの飄々と何を考えているか不明な岸部と、
なにか捉えどころがなく本音を秘めているかのような田中は、
このキャスティングに最も相応しいと、
いや、この二人しかありえない。

にゃろめ