劇場公開日 2005年8月27日

「出来の悪さに怒りが湧いてきた」容疑者 室井慎次 タランティン・クエンティーノさんの映画レビュー(感想・評価)

0.5出来の悪さに怒りが湧いてきた

2024年10月15日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

あまりにも酷すぎて怒りが湧いたので思わず書く。

シリアスで重厚な政治劇かつ法廷劇がやりたいはずなのに、ことごとく見栄えしか考えていないリアリティの欠片もない演出で全てが台無しだった。
「こんな人いるわけない」という感じのキャラクターが「こんな場所あるわけない」というような場所で「こんな事するわけない」というようなことをずっとやっている。
そんな状況に『踊る』シリーズの登場人物がなぜか放り込まれている。

もちろん、映画はエンタメなので、鑑賞者の楽しさや爽快感や分かりやすさといったもののためにある程度のリアリティを犠牲にするのは理解できる。というか『踊る』の魅力もそこにある。
しかしこの映画でリアリティを犠牲にして得られたのは、そういうエンタメ性ではなく、監督の自己満足な「画の構図」だけではないか。
教会を改装したという設定の警察署、なぜか世紀末状態になっている新宿、会見中に携帯ゲームをする弁護士、クソほど広い部屋にクソほど広いテーブルが置かれた弁護士事務所…
こういった謎演出の数々の中のなにかひとつでも観た人のためになるものがあっただろうか?
もしこれが「話が地味な分、演出を派手にすることでバランスを取りたい」という意図なのであればそれは完全に失敗で、ミスマッチなせいで逆効果にしかなっていない。

設定そのものは割と興味深く、かつ脚本もそこまでひどいとは思わないが(ただしそれなりにひどい)、あの演出では仮に世界最高の脚本だったとしても台無しだろう。
皮肉でも冗談でもなく、映像をOFFにして音声だけ聞いたほうが楽しめるんじゃないかと本気で思う。

タランティン・クエンティーノ