「バカでも分かるタイムマシンSF」サマータイムマシン・ブルース といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
バカでも分かるタイムマシンSF
『四畳半タイムマシンブルース』を先日鑑賞し、そのオリジナル版である本作も気になったので鑑賞しました。『四畳半タイムマシンブルース』は本作のストーリーをなぞるような作品のため、ストーリーはほとんど理解した上での鑑賞となります。
結論としては、悪い意味で映画的でなく舞台っぽい作品でした。
やたらと説明的な台詞が多くて、観ていれば分かることを登場人物たちが懇切丁寧に台詞で説明するもんだから、物凄く冗長に感じましたね。おそらく大半の観客にとっては説明過多です。映像的な制約がある舞台演劇ならば説明的な台詞が多いのは十分理解できますが、映像で説明できる映画でそれをやっては鬱陶しいだけです。
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仲間内で楽しく活動している大学のSF研究会。ある日、部室に設置されたエアコンのリモコンをコーラを溢して破損させてしまう。猛暑の中、項垂れている研究会の部室に、ある日奇妙な機械が設置されていた。その機械を操作するうちに、それがタイムマシンであることが判明した。彼らはそのタイムマシンを使って、エアコンのリモコンが壊れる前に回収しようと画策するが……。
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この作品、非常に評価は高いしそれなりに面白いとは思いますが、正直私にとってはかなり期待外れでした。というのも、舞台の脚本をほとんど手直ししていないのが分かるレベルで説明過多なんです。本作は監督である本広克行さんがヨーロッパ企画の演劇に惚れ込み自らプロデュースして映画化したという経緯があるので、舞台版へのリスペクトから脚本に手直ししなかったという可能性もありますが、それは映画監督としてどうかと思います。
これは映画評論家としても活躍するライムスター宇多丸さんが、本広克行監督が本作同様に劇団ヨーロッパ企画の原作を映画化した『曲がれ!スプーン』という作品の評論でおっしゃっていたんですが、演劇が大好きな本広克行さんは演劇をそのまま映画にすれば当然面白いと本気で思っている節があって、舞台版の脚本を映画用に手直しするような工夫をほとんどしていないらしいです。
舞台と映画。同じように見えますが、映像的な制約という意味では両者は全く違います。舞台では観客と演者の間に距離があったりCGなどの効果が使えないため、表情やタイムスリップ描写などはしっかり見せることができません。そのため舞台では映像に代わって説明的な台詞が多用され、観客も暗黙の了解で観ているため脚本に違和感は抱きません。しかし映画では演者の顔をアップにすれば表情がしっかり見えますし、CGや合成でタイムスリップ描写はいくらでも表現できます。そのため映画は「映像観てれば分かる」ということが舞台よりも多く、映画で舞台と同じセリフを言わせてしまうと「分かり切ったことをいちいち説明されてる」と感じてしまい、なんだかくどいし鬱陶しいし馬鹿にされているような気分になります。心底不愉快でした。
「多分、基となった舞台版は面白いんだろうな。でも映画は冗長で鬱陶しいな。」ってのが本作を鑑賞していてずっと思っていたことです。やはり舞台と映画では同じ脚本でも見え方が全く異なるんだということを再認識できた意味では、観て良かったと思える映画でした。