ヴィタールのレビュー・感想・評価
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死を匂わす
チョイ役でストレスが溜まる中、やっと浅野忠信を主演に塚本作品が観れる喜びと、現在進行形で廃れない二人の新鮮味。
塚本晋也が撮るラブストーリーは何処か不器用で隔たりのある感覚、そこを巧く体現できる存在感の浅野忠信による無感情な演技。
記憶を取り戻していく中、失ってしまった大きさ、二つの世界、無い世界を選択し、取り戻す大切さ、もう一人の女性、周りの優しさ、正気の今へ、素直に観れば純粋な恋愛映画と受け止められる。
2度見ても撃沈!
塚本晋也監督2004年の作品。
交通事故で記憶を全て失った解剖医学生が、実習で解剖にのめり込む内に、現実と記憶の狭間を彷徨さ迷う…。
2004年のヴェネチア国際映画祭で絶賛されたらしいが、嘘付いても仕方ないので、はっきり言ってしまおう。
自分は全くダメダメだった!
一応塚本作品らしい鮮烈で不思議な世界観は展開しているのだが、最後まで意味が分からず。
何を見ているのか、何を見せられているのか。
昔一度見た時もそうだった。今回再挑戦しても撃沈。
ある意味、この作風を表しているのかもしれないが…。
主演・浅野忠信の独特の佇まい、狂気を滲ませる存在感はいつもながら見事。
魅せられたのは唯一そこだけ。(★採点も)
塚本晋也っぽくない
エルグロ控えめ。主人公の恋人がなぜ目の光がなくなってしまったのか。もう少し背景が知りたい。親を見る限りまともそうなのに。入れ墨や事故の原因もなんかありそう。恋人の運命を知るかのように検体の希望をしたのもなんかあんのかな。踊りはコンテンポラリーダンスの先駆者?美しかった。検体そのものに興味が湧いた。
映像美
事故で記憶を、なくした博(浅野忠信)はなぜか医学書に興味を示すようになり、医学部に入学。その解剖実習で割り当てられた遺体はかつての恋人だった。実習にのめり込みながら記憶をとりもどしつつある博の愛の姿を美しい映像で、描いている。浅野忠信もよかった。
グロテスクでありつつ崇高な愛の世界
「ヴィタール」とは「生命に不可欠な器官」、または「核心」。事故で記憶を失った医大生が、解剖実習にのめりこむことによって、「記憶」を取り戻しつつ、次第に「現実」を見失っていく・・・。無機質な解剖実習室や主人公の荒れ果てた部屋、または昭和の佇まいを残す商店ですら、どこか硬質で近未来チックな舞台。青年の暮らす「現実」世界は青みを帯び、薄暗い。登場人物は張り付いたような無表情のまま、悲しみや絶望や怒りを表現し、さながら能面のような気迫を感じる。その生活観の無い「現実」世界とうって変わって、明るい陽光を浴びた南の島の楽園のような風景。そこは医大性の死んだ恋人が暮らす、この世とあの世の狭間・・・。そこで美しいコンテンポラリーダンスを披露するのはバレリーナの柄本奈美。彼女の演じる医大生の恋人は、死の間際、自分を献体として、愛する人に解剖されることを望む。彼女の思惑通り、男は彼女の“骨の髄まで”自分の物とし、「核心」を得てゆく。男にとってその「核心(愛)」はフェイクか、リカルか?世界のクリエーターに絶賛される塚本ワールドは、グロテスクであり崇高な愛の世界だ・・・。
いのちってなんだ
鉄男からずっと、フィジカルの物語を描いてきた塚本晋也。それは都市開発の暗喩だったり、マッチョで暴力的な欲望だったりしてきた。
バレットバレエで恐らく大きな転機を迎えた監督だ。若者群像らしき映画なのだけど、何か違う。妻を失った中年男と、チーマー集団の欲望と暴力の乱交。監督のトーキョーへの思いににケリをつけた作品じゃなかろうか、、、とぜんぜんヴィタールの話にならないのだが、フィジカル、マッチョ、エロス、それまで生の肉体のパワーが描いてきた塚本が、死について描いた恐らく初めての作品。それがヴィタールだ。解剖実習を通して死者と対話し、自らが再生していく物語。あらゆるところで、いのちが軽んじられる昨今、こういう映画こそ時代に必要だとおもう。
印象「泣ける」にもチェックしておいたが、誤解を招かぬように補足すると、一般的ないわゆる「涙の強盗」映画ではなく、しみじみと胸の奥でジーンとくるような映画。見終わった後も、1週間くらいその映画のことを考えてしまう。それが私にとってのベストムービー。
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