「少年法について真摯に取り組んだ映画」イズ・エー kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
少年法について真摯に取り組んだ映画
少年法に守られた少年Aと失っただけの被害者の対比。凶悪な少年犯罪事件が起こるたびに論議を巻き起こす少年法について真摯に取り組んだ映画。
無差別爆破テロという特殊な犯罪者の設定はうなずけないが、犯人が教師の息子だったという設定は妙に生々しくて感心してしまった。頭が良くて世間に無関心、インターネット世代で痛みというものを知らない子どもたち。教育問題には触れていないが、家族の愛が薄く、「うちの子に限って」と思い込んでいる親を代表しているかのようだ。
「果たして4年で更正できるか?」といったテーマの答えは観客に丸投げしてくれても良さそうなものなのに、短絡的に少年法を改正させるような展開になっている点だけは納得いかない。それというのも、野蛮で人間の心を持たない、ある意味特殊な性格の犯罪者を扱っているからだ。この内容だと、TV番組でよくあるニュースの特番で“少年法について考える”といった内容の番組の方が優れていると言ったほうがいいだろう。
爆破事件の生き残りでもあり、売春している少女の台詞「生きる実感と、その裏側で死んでいく自分」、そして息子を殺された三村(津田寛治)の「復讐することが生き甲斐」という言葉がもう一つのテーマである。こうなってくると、人間関係が複雑に絡むプロットはいささかマイナスとなり、ストレートに復讐と贖罪の父親、少年法の提議といった内容の方が面白かったであろう。
「あれだけ(爆破による無差別殺人)やって4年で出られるなら、俺も何かでかい事やっておけばよかった」という言葉が気味悪く響き、観終わった後でも頭の中にこだまするかのようだった。
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