「パニックホラー的要素がある」映画ドラえもん のび太のパラレル西遊記 森林熊さんの映画レビュー(感想・評価)
パニックホラー的要素がある
まんま西遊記がモチーフの今作。孫悟空が実在すると信じるのび太は一人で三蔵法師に会いに行ってしまう。そこで本当に觔斗雲に乗る自分そっくりの孫悟空を目撃する。まぁ大体の人は気づくだろうが、これは未来ののび太自身である。ドラえもん、しずかちゃん、スネ夫、ジャイアンを連れて再度この時間軸に来ようとしたのび太だったが、タイムマシンは1ヶ月前後するから全く同じ時間帯は無理と宣言する。さすがに1ヶ月前後は酷くないか?ちなみにこのタイムマシンが喋るのは今作と次作のみである。
結局孫悟空に会えなかったことから、ドラえもんはヒーローマシンを出して、ゲームの中で孫悟空になったのび太をオープンワールドにすることで現実世界に出すというインチキで乗り切ろうとする。しかしのび太が調子に乗ってしまった結果バレてしまう。ところがヒーローマシンをオープンワールドにしていたことで、なんとゲーム中の敵キャラも現実世界に進出してしまう。それに気づかずにドラえもんはヒーローマシンを片付けて現代に戻った結果、なんと妖怪が支配する世界へと変貌してしまっていた。前作に引き続きまたもタイムパトロール激怒案件である。
ここからが結構なホラーテイストとなっており、新聞に隠れるパパの影に角が見える、ママが蛇や蛙の肉を出す、トカゲのスープが出て来るなどかなり不気味な展開になる。翌日学校に行くとなんとここも大きく変貌しており、とても学校とは思えない風貌になっている。更に三蔵法師が最後は妖怪に食べられるという結末になっており、のび太、しずかちゃん、スネ夫、ジャイアンは驚愕する。しかも妖怪の正体を現した先生に驚き逃げ帰る。
先生だけでなくのび太のママまで角が出て来てようやくドラえもんは歴史が変わってしまったことに気付く。さすがに遅い。5人は再びヒーローマシンを起動した時代に戻り、歴史の修正を試みる。のび太は孫悟空、しずかちゃんは三蔵法師、スネ夫は沙悟浄、ジャイアンは猪八戒となって本物の三蔵法師を妖怪の魔の手から助けることにし、ヒーローマシンに金角を戻すことに成功する。
三蔵法師はリンレイという少年を1週間前から連れて旅をしていたのだが、実はこの少年は妖怪であり、三蔵法師を捕まえるためのスパイだった。翌朝三蔵法師としずかちゃんは別々の場所で捕まってしまう。三蔵法師やのび太たちと出会ったことで心変わりしたリンレイは火焔山へとのび太達を招き入れる。あらゆる罠をかいくぐって進んだものの、リンレイも知らなかった落とし穴に落ちてドラえもん、のび太、スネ夫、ジャイアンに加え、先に捕まっていたしずかちゃんと三蔵法師も絶体絶命のピンチに陥る。
牛魔王がドラえもんを食べようとしたその時、ドラミちゃんが現れて間一髪のところでドラえもんを助ける。その隙を突いてリンレイがのび太達の縄を切って解放する。リンレイは牛魔王と羅刹女の子供である紅孩児だった。のび太も再びピンチに陥るが、最後の力を振り絞り如意棒を巨大化させることで牛魔王を倒すことに成功する。リンレイは三蔵法師と旅を続けることとなり、ドラえもん達は無事に現代に戻り、鬼ではないママに出会ってのび太、しずかちゃん、スネ夫、ジャイアンは涙を浮かべる。
今作までが昭和作品のドラえもんとなっている。ヒーローマシンのゲーム自体も最初はファミコンのような形になっており、時代を感じるが、オープンワールドというのは当時としては非常に斬新である。ただせっかく術が多いと言われているのに、孫悟空の術が全く見られない。スネ夫やジャイアンですら武器でペチペチと叩いているだけということで爽快感が薄い。どうせなら雑魚敵も多いので、バッタバッタとなぎ倒して欲しいところ。