「今度の舞台は空の上」映画ドラえもん のび太と雲の王国 森林熊さんの映画レビュー(感想・評価)
今度の舞台は空の上
海底人、地底人と来て、ついに登場した天上人。相変わらず22世紀なみに文明が進んでいるのはお約束。雲の上に王国を作ることになったのび太たちはゲームセンターやレストラン、各々の家などを作成していく。こういう街作り系は見てて楽しいし、羨ましい。子供の頃は絶対に分からなかった株式王国という概念も面白かったが、残念ながら設定は生かされず。それにしてもポンと3万出すスネ夫に驚くが、しずかちゃんが100円というのもビビる。ジャイアンの50円はまぁという感じだが。
一度は太平洋のど真ん中まで出ていた雲の王国だったが、偏西風に流されたのか槍ヶ岳の頂上に引っかかってしまう。すると雪山の中から巨大な亀が現れ、しかも男の子を背負っていた。男の子は空腹、疲労、低体温だったため、その日は放置して帰る5人。酷くない?しかも放置している間に天上人が現れ男の子を連れ帰ってしまう。男の子がいないことに気付いた一行はまいごさがし機「ごはんだよー」を起動。お腹が空いていれば匂いに釣られて出て来るはずと考えたが、一向に出て来ない。
男の子を発見した槍ヶ岳に行って手掛かりを探そうとするが、探しているうちに王国を見失ってしまう。そうして見つかったと思った雲には絶滅動物が暮らす世界が広がっていた。そこは絶滅動物保護州であり、天上人であるパルパルとグリオに出会う。歓迎されたのかと思いきや軟禁されたことから不信感を抱き脱出することにした一行。しかし雷雲の直撃によってタケコプターは破壊され、しかもドラえもんはコンピューターに不調をきたしてしまう。なんとかドラえもんとのび太は追っ手を振り切るが、しずかちゃん、スネ夫、ジャイアンは保護という形で捕まってしまう。
しずかちゃん、スネ夫、ジャイアンは中央州へと連行され、パルパルからノア計画について教えられる。一度地上世界を雨で水没させ、地上人の文化レベルを原始時代まで戻すことによって環境汚染を止めるというものだった。そのためにも一度地上人を避難させるため、生物を殺すことが目的では無いとのこと。天上連邦議会で決議待ちの案であり、その議会の証人として3人は中央州に呼ばれたのだった。
しかし割とツッコミどころが多い。核兵器や原発が雨で流されてめでたしめでたしになる訳もなく、必ず汚染されてしまうし、当時でも54億8000万人いたという人口+動物をどうやって避難させるのか、仮に避難させても食糧問題でダメだろというのが容易に想像出来る。極めつけは環境汚染がどうのというなら、ご自慢のソーラーパネルの技術を地上人に提供しろよという。
しかも地味に何千万もいるらしい天上人。ご自慢の技術力でもっと穏便にいくらでも裏から地上人を操るとか出来るだろと思えてしまう。大統領はこの計画の矛盾点に気付いていたような描写があるのだが、天上人はアホばっかりなのか?という疑問符が浮かんでしまう。しずかちゃん、スネ夫、ジャイアンはなんとか反対意見を言うが、結論ありきの法案なため糾弾される。パルパルが何も知らず連れて来られたのだから不公平と指摘した事により審議は延期となるが、旗色は悪い。
一方、頼りのドラえもんが故障で途方に暮れるのび太の前にドンジャラ村のホイが登場する。誰これ?と思ったが、どうもアニメで登場していたキャラらしく置いてけぼり感が半端ない。まぁドラえもん、のび太の人脈や人徳というのは伝わるが。ホイの案内によって向かった先にいたのは保護した男の子タガロだった。空から逃げることを提案され、ホイの持つ万能手綱をムカシダイダラアホウドリに使うことで脱出するのび太とドラえもん。王国に帰ることを願うが、当然カムフラージュされた王国はなかなか見つからない。そんな時、ごはんだよの匂いに釣られたことで王国への帰還に成功する。ご都合主義といえばそうだが、ちゃんと説得力があるのがいい。
ご飯を食べ、とりあえず一度どこでもドアで家に帰ろうと考えたのび太は出た先の家が大洪水に巻き込まれ、流されていることに驚愕する。しかも階段を降りようとしたところ、下から水が上がって来てあっという間にドラえもんと濁流に流されてしまう。絶体絶命のピンチに何故かドラえもんが復活。水につけたら復活したんだろうか。偶然流れて来たどこでもドアに入り王国に戻るドラえもんとのび太。世界が滅亡したと絶望するのび太だったが、どこでもドアの時差調整ダイヤルが10日も進んでいたことにドラえもんが気づき、これは回避出来る未来だと考える。
タガロと同じく地上から連れて来られていた密猟者4人が脱走し、偶然雲の王国へ辿り着く。せっかくごはんだよで辿り着くことに説得力あっていいなと思ったところにこれである。そして4人からノア計画について聞いたドラえもんは天上人との交渉のための武器として雲もどしガスの存在を明かす。雲の王国にはガスタンクが設置されており、その中に雲がためガスで固めた雲を元通りの雲に戻してしまう雲もどしガスが貯蔵されていたのだ。対等に話し合うには、相応の武力が必要だということが嫌でも分かるシーンである。9条があるから侵略されないとか、お花畑なことを言っていてはダメなのだ。
計画の中止を迫るドラえもんだったが、密猟者に拘束されてしまう。説得に訪れたパルパル、しずかちゃん、スネ夫、ジャイアンも同じく捕まってしまう。更に密猟者によって雲もどしガスが発射され、エネルギー州を直撃。エネルギー州は分解されてしまう。あくまで脅しだったはずの雲もどしガスが発射されてしまい、大量の犠牲者が出てもおかしくない状況になり責任を感じたドラえもんは扉を頭でぶち破り、更にタンクへ突撃。溢れ出した雲もどしガスによって雲の王国は崩壊して行く。
最終的にはドラえもんが身を呈して最悪の事態を回避したこと、ドラえもんとのび太が助けて来た人達の証言、環境が再生するまで天上人の移住を無制限で受け入れると植物星の大使が発表したことによって天上人は翻意する。この植物星大使であるキー坊もアニメに出ていたキャラなので置いてけぼり感がある。全体的になるほどと思いつつも、海底人、地底人と違い、天上人が終始上から目線で偉そうなのだ。また、オゾンホールの影響がということを言ったり、地上に割と干渉している割にはやってることが遅い。