「子供の頃と、大人になってから見るのとでは感想が違う」映画ドラえもん のび太の恐竜 森林熊さんの映画レビュー(感想・評価)
子供の頃と、大人になってから見るのとでは感想が違う
記念すべき劇場版ドラえもん第1作。
この度子供がドラえもんという言葉を言えるようになったので、一緒に視聴することにした。どうせならば一作目から見た方が面白いかと考え、この作品から。
1980年発表ということで、実に45年前。ほぼ半世紀近く前ということになる。
自分も昔WOWOWかレンタルビデオかで見たことがあると思うのだが、多分30年ほど前の話なのでほとんど覚えていなかった。
パッと見で絵柄が古く、のび太とスネ夫の髪型の感じが90年代のドラえもんと比較してもかなり異なる。ただ、何よりもギョッとするのが、しずかちゃんがのび太達を君付けにしたり、ドラえもんと呼び捨てにするシーンがあることだ。昔はそうだったのかと思い調べたところ、アニメ第2作1期もそうだったらしく、映画3作目まではこの呼び方らしい。一応後半でドラちゃん呼びもあったが、君付けは違和感があって慣れない。
ストーリーとしては首長竜の卵の化石を発掘したのび太が、タイムふろしきを使って、卵を孵化させることに成功し、ピー助と名付けて育てることになる。子供の頃なら何の違和感も持たなかっただろうが、大人になって観るとのび太の都合で成長促進剤を飲ませられるシーンが酷過ぎると感じた。何しろ中身は赤ちゃんなのに、図体だけ大きくさせられたようなものなのだ。しかも大きくなったのに、冷蔵庫にあるソーセージ程度では絶対に胃袋も満たされないだろう。子供作品に真面目にツッコんでも仕方ないのだが、人間の都合で産まれさせられて、白亜紀に捨てられるシーンを見るとピー助が可哀想になった。
結局スモールライトやビッグライトで小さくしたり、大きくしたりを見ると何のために無理矢理大きくしたのか甚だ疑問になって来るし、小さいまま育てればいいじゃんとすら思う。しかも恐竜ハンターの介入によって、タイムマシンは壊れてしまい、気づかずにピー助は仲間もいないアメリカに放置されてしまう。飼っていた猫や犬を野に放つようなものだと感じ、非常に後味が悪い。のび太に追いすがるピー助がビンタされるシーンなど胸が痛む。しかも今まで餌を貰っていたのに、いきなり自分で狩りをさせられるのだ。のび太は生物を飼うということに無責任過ぎる。
その後、タイムテレビでピー助の窮地を知ったのび太たちが5人で救助に駆け付けるのだが、ピー助からすれば一度捨てた親が来てくれたような感じなのだろう。ネグレクトされても親を嫌いになれない子供みたいに見えてしまった。ちなみにこの時代のタイムマシンは3人乗りだったらしく、定員オーバーで故障してしまった。時間移動機能は無事だったことから、日本に移動して現代へ帰るということになり、のび太たちは一路日本を目指す。
今でもお馴染みのひみつ道具が多々出て来るのだが、この時代に既に桃太郎印のきびだんごがあったのかと思って調べたところ、なんとちょうど50年前の漫画に登場していたらしい。ドラえもんの歴史、恐るべし。実はずっと追跡していた恐竜ハンターからピー助を売り渡すように言われたことで、逆にタイムマシンを奪うという作戦を考えつくのび太達。なかなかの過激派である。しかしあっけなくしずかちゃん、スネ夫、ジャイアンは捕まり、ドラえもんとのび太が救出へ向かうことになる。タイムパトロールの介入もあって悪者は一網打尽。ピー助の仲間を見つけたことで別れを告げるのだが、最初の方で書いた通りピー助は図体がデカイだけで、のび太を親と慕う赤ちゃんなのだ。仲間が見つかって良かった、めでたしめでたしとはとても思えなかった。
どうも大人になってから見ると、最初から最後まで違和感しか無い。自分勝手なのび太はいつものことだが、それに振り回されるのがドラえもんではなく赤ちゃんのピー助というのが辛い。ピー助からすると仲間よりも親なのだ。そして親はのび太で、のび太がやっていることは完全に幸せの押し付けになってしまっている。映画に続きは無いが、本当にピー助はあの群れでやって行けるのだろうかと余計な心配をしてしまう。