「すべては庇護のもと…」映画ドラえもん のび太の恐竜 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
すべては庇護のもと…
記念すべき劇場版ドラえもん第1作。卵の化石から生まれたピー助とのび太の友情と別れを描いた普遍的作品だ。
現代編ではピー助の成長を丁寧に描いておきながら、白亜紀にタイムスリップした際には容赦なくスモールライトを照射してミニサイズに戻しまくっているのが笑える。
ドラえもん一行の大陸横断サバイバル旅行はやはり心くすぐられる。特にキャンピングカプセルと桃太郎印のきびだんごを活用するシーンが良い。こういう空想性と実利性が半々くらいのひみつ道具が一番画面映えする。
それはそうと本作が奇妙なのはドラえもん一行の行動が実のところ大人の監視下にあったというリアリズムだ。現代世界でのび太が周囲にバレないようにピー助を育てていたときも、過去世界で生死を賭けた冒険を繰り広げていたときも、常に彼らを恐竜ハンターが監視していた。
一行がプテラノドンに襲われ絶体絶命のピンチに陥った際、プテラノドンを撃墜してくれたのは恐竜ハンターたちだった。それがのび太からピー助を奪うための交渉の糸口だということはわかるものの、敵に助けられてしまうというのはなんとも苦々しい。
ラストも未来からやってきたタイムパトロールの助力を得る形で恐竜ハンターたちを追い詰めた。いやあ、ど徹頭徹尾大人の影がちらつき続ける映画だったな…
以後の作品ではドラえもん一行がガチのマジで世界の命運を握らされることが多く、観ている側としても過度にハラハラしてしまう。俺がまだ幼い子供であればむしろワクワクしただろうけど、今や同級生たちがチラホラ子供を持ち始めている世代の人間としては、ワクワクよりも心配が勝ってしまう。
こういう「大人が常に周りにいる」という作品のほうが心理的負担は少ないな…というのが正直なところだ。