「面白い作品を作ろうとロボットアニメ以外の大人の恋愛模様やアイドルを盛りこんだ熱量はガンガン伝わりますね。」超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
面白い作品を作ろうとロボットアニメ以外の大人の恋愛模様やアイドルを盛りこんだ熱量はガンガン伝わりますね。
1984年の公開から40周年を記念して『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』が4K ULTRA HD化して1月25日(土)から全国40館で上映中。
早速、TOHOシネマズ日比谷さんのSCREEN5(TCX仕様16.5×6.9m)の巨大スクリーンで鑑賞。
同館では『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』も上映中。偶然にも『ガンダム』と『マクロス』、そして両作品に携わった<庵野秀明氏祭り>となりました。
『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(1984)
劇場版から先んじて1982年10月からTBSで放送されたTV版の放送は何と日曜午後2時。
午後1時半のアニメ版『愛の戦士レインボーマン』との2本立てで、VHSも普及していない時代、遊び盛りの小学校低学年にとって在宅率は低く、ずいぶんと攻めた放送枠でしたね。
案の定、本放送はほとんどスルーでしたが、主要メカの「バルキリー」が実在の戦闘機F-14トムキャットからロボット形態するアイディアが斬新でカタトクトイスから発売された可変可能な玩具も実に精巧で当時大人気でした。
今思えば『トランスフォーマー』よりもずいぶん前に可変ギミック玩具を企画開発、販売していたことになりますね。
プラモデルはまだまだ『機動戦士ガンダム』が全盛。
本作も今井科学(イマイ)と有井製作所(アリイ)から発売されたのですが『ガンダム』以外にも『太陽の牙 ダグラム』『戦闘メカ サブングル』まで手を広げていたので諦めざるを得ませんでした。
きちんとTV放映、本作を観たのは小学校高学年ぐらいでしょうか。
特にテレビ東京系列で夕方帯に頻繁に再放送をしていましたね。
やはり驚いたのは美樹本晴彦氏の描く地球側のキャラクターデザイン。
版権イラストのような繊細で高密度の男女とも美しいキャラクターたちが躍動する様は既存のTVアニメとは別格、新時代を感じましたね。
そして板野一郎氏が演出した戦闘機の超高速アクロバティック戦闘シーン、ミサイルの一斉発射の芸術的な軌道と糸引く白煙にも度肝を抜かれました。全くCGのないセルオンリーの時代にあれだけの情報量を描ききったことに脱帽です。
最後は音楽。
TV版のOP 「マクロス」とED「ランナー」は共に作曲・編曲を羽田健太郎氏が担当。歌唱は尾崎紀世彦氏を彷彿とさせるビブラートを誇る藤原誠氏。疾走感あるOP,メロウなEDともにアニメ史に燦然と輝く名曲ですね。
映画版では作詞・安井かずみ氏、作曲・加藤和彦氏が手がけた『愛・おぼえていますか』も<銀河系でヒットした流行歌>という設定に説得力がある名曲。
歌唱はリン・ミンメイ役も演じた飯島真理氏で、売上もよく実際に『ザ・ベストテン』などの歌番組にも出演、当時TVアニメ主題歌が歌番組で流れることなど少なかった時代、アイドル声優の第1号というべき活躍で、そういった意味でもエポックメイキングな作品でしたね。
今回、30年ぶりに鑑賞しましたが、ストーリーも実に当時としては野心的でしたね。
主人公・一条輝、トップアイドル・リン・ミンメイ、年上の上官・早瀬未沙の男女の三角関係は韓流ドラマさながらで、確かに小学校低学年にはハードルが高い内容でした。TV版とは設定は違いますが、男と女が分かれて長年戦争が継続、「文化」の力(=カルチャーショック)で敵を殲滅するストーリーは今でも斬新ですね。
とにかく『機動戦士ガンダム』に対抗しようと若いスタッフが結集、面白い作品を作ろうとロボットアニメ以外の大人の恋愛模様やアイドルを盛りこんだ熱量はガンガン伝わりますね。そして『ガンダム』同様、以降のサブカルチャーに多大なる影響を及ぼしたことは今回の鑑賞で改めて確認できましたね。