ジョゼと虎と魚たち(2003)のレビュー・感想・評価
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【”帰らんといて。ここにおって、ずっと・・。”気の強い足の不自由な女の子と善なる若い男の切ない恋を描いた作品。男が、”女の子から僕は逃げた。”と言って号泣するシーンが印象的な作品でもある。】
ー 田辺聖子の同名短編小説を、F・サガンの「一年ののち」の内容を盛り込んで犬童一心監督が映画化した作品。(私見です。)ー
■この作品は、この後韓国でリメイクされ、更にアニメ化もされている。だが、大筋は同じだが描き方が大分違う。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・深夜に麻雀屋でアルバイトをしている善なる心を持つ大学生・恒夫(妻夫木聡)がジョゼ(池脇千鶴:名女優である。)と最初に会った時のインパクトから、恒夫がジョゼと彼女の祖母が振舞ってくれた朝食を美味そうに食べるシーンが好きである。
・祖母が亡くなり、行き先が分からなくなったジョゼを必死に探す恒夫の姿。
・ジョゼを見つけ、市の補助金を申請し、ジョゼが暮らしやすくするように心を配る恒夫の姿。
・ジョゼの口調は関西弁のぶっきら棒なモノであるが、自分に優しく接する恒夫に対し、徐々に好意を抱いて行く姿が良い。
ー ジョゼが、恒夫に彼女(上野樹里)が居る事を知って、”帰れ!”と言いながら、恒夫が本当に帰ろうとすると、”帰らんといて。ここに居って、ずっと・・。”と涙ながらに言う姿。そして、2人は恋人になるのである。-
<そして、「一年ののち」二人は恒夫の実家に向かうが、ジョゼは途中で海に行こうという。そして、”魚のおうち”と言うラブホテルで一泊する二人。
結局、恒夫は身体障碍者であるジョゼを親に紹介する勇気がなく、別れ、元の恋人と歩いている時に号泣するのである。
ラストシーンも、淡々とした描写だが、沁みる。一人暮らしになったジョゼは、祖母が居た時のように魚を焼いているのである。
今作は、何とも切ない恋物語なのである。>
お互いを認め合い,別れていく恋
大学生の若者と障害があり外に出られない女性の恋愛物語。男は世間知らずの若者だけれど、それ故に女性にあたらしい世界を見せてくれる。女性は学校も行っていないけれど、豊富な知識と誰にも媚びない強さと美味しい料理を作る腕前をもち、おそらく,若者が会ったことないタイプの女性だった。
結局2人は別れてしまうけれど、女性は好きな男ができたら一緒にみようと思っていた虎を見に行けたり、初めての旅行、初めての海を経験できた。男も自分が最後は逃げたんだと自覚している。そんなふうに認め合えた2人の恋は,彼女を1人で生きていけるくらい強くした。男にとっても冒頭に語られるように良き思い出なのだ。
男はちょっとヘタレだったけれど,2人にとってお互いはこの時必要だった。良き恋だったなぁと素直に感じる映画だった。
●それもまたよしや
怒りの刹那すがる女。
泣き崩れる男。
恥も外聞もない。このカッコ悪い剥き出しの本音が胸を打つ。玉と菊の間がキューって締め付けられる。
男はロマンチストで、いつも夢を見てる。
女は現実主義で、恋の儚さを知ってる。
でも、素直に心を開いて通じ合う。未来のことはわからないけど、今を一生懸命に生きる素晴らしさをこの作品は教えてくれる。
その一瞬の思い出だけで、颯爽と風を切って生きていく女性と、たまに写真なんか見返して、その思い出を振り返る男性と。
そこのみにて光り輝く。思えばこれも池脇千鶴だった
少女と男の子の境遇の違いと切ない恋愛を描いた青春映画
外界から閉ざされた少女と偶然出会った大学生との、今どきの若者の恋愛関係を純情と偽善の微妙な視点で描いた青春映画。読書生活漬けの身障者の少女の理屈と意固地な性格設定は理解できるが、妻夫木聡演じる“男の子”の優柔不断さがそのままに、この物語を追憶するナレーションの視点に客観性不足があり、結局(自分の何を見てもらいたいのか)の人物表現としての弱さがある。少女と別れて、その足で元カノと街を歩く主人公が道端で涙を流し泣くシーンには、男の子の馬鹿正直さを認めるが、やはり情けないだけで、映画としての表現までになっていない。この男の子の危うい存在感は表現されていると思うが、脚本と演出まで同じレベルにする必要はないはずである。田辺聖子の小説の作意から、映画表現へ転化したものが感じられなかった。時代設定も今一理解できない。役者はいい。妻夫木も池脇千鶴も難役を好演している。もっと良い映画にできる題材だと思う。
素敵な恋物語
アニメ版を観るにあたって、つい懐かしくて借りてしまいました。
かなりクセの強い立ち上がりで惹きつけられます。
仕送りの食材での兄弟の会話と、その横でパイをガン見してる中学生がとてもリアル。
他にもどこか憎めないDQN幸治にチーム蒼天龍。「鳩が出るよ?」のサーファーなど細い演出が多いのも面白い。
何より、ぶっきらぼうなジョゼがすごい可愛いらしく、とても魅力的。
対して恒夫が本当何処にでも居るような大学生で、だらしないけど憎めない感じですね。
乳母車の二人乗りは世間の目やしがらみから解放されるような、とても良いシーンだった。
当時話題になったベッドシーンは、いやらしさよりもどこか可愛らしい印象。
そして何より池脇千鶴のクソ度胸でしょう、実に役者です。
その出会いから落ちるべきして恋に落ちる二人、だからこそ静かに終わる二人なんでしょう。
今観てもすっとする、素敵な恋物語でした。
作品にすごく勢いを感じる
これまで、韓国版やアニメ版が製作されるほどの作品だから、やっぱり見ごたえがあった。
妻夫木聡、池脇千鶴、上野樹里、江口のり子、、、今をときめくキャストが若くて、監督も含めてすごく勢いがあったんだろう。
鬼気迫る熱演は、引き付けられた。
その後の活躍には納得がいく。
若さとは、時に優しくてそして残酷で
池脇千鶴も妻夫木聡も上野樹里もみんな若
その時がずっと続くと思っていた
先のことなど考えなかった
今が幸せで毎日が嬉しかった
若さとは今日のこの時のことで
明日は遠い未来なのだろう
そこはとても居心地がいい
今だけに生きれたら幸福なのかも
だけどジョゼはどうだろう
スピッツの歌詞が頭をよぎる
「ささやかな喜びをつぶれるほど抱きしめて」
思い出は美しい
過去形から始まる2人の物語 車椅子を買おうと提案する恒雄に あんた...
過去形から始まる2人の物語
車椅子を買おうと提案する恒雄に
あんたがおぶってくれたらいいやん と
突き放すジョゼ
実家にジョゼを連れて行こうとする恒雄に対して
『自分の重さ』から目を離すなと知らせるかのように
結果『逃げた』と泣く恒雄だけど
決して弱さだけじゃない。
逃げる事を選んだ強さも感じられる
辛い別れになっても出会い、過ごした時間は
無駄じゃない
電動車椅子で颯爽と風をきるジョゼの
後ろ姿が美しかった。
古い荒屋に閉じ込められて生きてきても
可愛いらしいら切り抜きを襖に貼り
女の子の心で生きてきたジョゼが
とても愛おしく感じました
悪くはないけど未来があるアニメ版のほうが好き
アニメ版を先に見て、その批評を先に読んでいたため、もっと身障者のことを掘り下げてドロドロと描いている映画かと思ったら、そんなことはなかった。身障者が云々ということにこだわって観るのでなく、「たまたま好きになった相手が身障者だった、その出会いと別れを描いた作品」という観方のほうがしっくりくる。
僕が別れた理由は、だいたい100個くらいあって、1つめは・・・
音楽担当「くるり」のわりに、
非常にBGMが少ない。
その分、ラストの「ハイウェイ」が
グッとグググっと響いた。
すごい。
恒夫はだれにでも優しく、
面白く、好かれる人。
弟もそんな感じ。
だれにでも優しい人って、
誰かには冷たい人。
ジョゼは強く、
自分に正直な人。
じぶんに正直な人って
誰かを傷つける人。
もう一度
2人の気持ちが
混じり合うことがあれば、
こんどはきっとうまくいく。
だって、別れる理由なんて
何ひとつなかったんだから。
『僕には旅に出る理由なんて何ひとつない
手を離してみようぜ
つめたい花がこぼれ落ちそうさ』
哭く
おいおいと哭くラストが印象的である。果たせなかった悔悟と解き放たれた不安か。男の恋愛心が話の軸になり、妻夫木聡の表情にでる不足と充足の変化の機微に目がいく。水族館閉鎖の後の重たい疲れ感、サービスエリアで何気に将来を約し、その保証のなさに確かめるように縋り付く姿。犬のようでもある。
ジョゼを演じる池脇千鶴は、やはり自我が崩れず周囲に安定をもたらす。むしろ男の方が不安定で振り回されている。障がい者像を覆す演出は特筆すべきもの。助けを求めて縋るのではなく、心を埋めることを求めて男を欲する。そして、ふたりの関係を悟り、自ら決裁する。貝殻のベッドにあって、回る魚のイルミネーションが身体に映り込むシーンが美しい。
新井浩文のキャラは、天涯孤独との縁を切る要素となり、ジョゼの自立性を高めている。あまりの無茶苦茶に苦笑い。初々しい上野樹里はジーンズがよく似合う。張り手の応酬に背を向ける少女との構図が楽しい。そして、冒頭から圧巻の婆役の新屋英子。この舞台設定を一目で表現する。
覚悟して別れて未来に立ち向かうジョゼ
アンハッピーだという人もいますがコレもある種のハッピーエンドでしょう。恒夫が逃げたことによって2人は別れたように見えますが、実写版の方もジョゼの方から身を引いたようには考えられないでしょうか。確かに恒夫は弟の言うようにビビってしまい、前の彼女と出会ったことで安直の方へ逃げたと思います。ナレーションでも自分から逃げたと言ってますね。でも「逃げた」であって嫌いになった訳でなく、別れの際にジョゼがアッサリと見送ってくれたことでジョゼの愛情を知り、又自分の不甲斐なさで咽び泣いたと思うんです。
ジョゼはきっと恒夫とは別れたくなかった(祖母が亡くなった後、恒夫が訪ねて行ったときの取り乱しかたを思い出してください)けど恒夫のことを思って、出ていく時は冷静な風に見せてたんだと思います。
だからアニメ版も実写版もジョゼの方から身を引いた(引こうとした)のは同じで、アニメ版では恒夫がジョゼから逃げなかったことで素敵なハッピーエンドになり、この実写版はジョゼの自立ということで、ジョゼのハッピーエンドになったと考えられます。
以前映画館で観て、2回目はVODで。 何といっても池脇千鶴が美しい...
以前映画館で観て、2回目はVODで。
何といっても池脇千鶴が美しい。下肢不自由ながらも強気な女性を見事に演じきっている。
ところで、妻夫木聡がびびったのは何か。
彼女が障害を持つ身だったからか、それとも愛の強さに耐えかねたのか。
後者かな。
それもまたよしや
前提:アニメ版を先に観た。アニメ版を観る前からいつか観ないといけないと思っていたが機会を得られずパソコンの画面で観た。
環境:大阪在住であるがロケ地は大阪では無いんだな。映画館で観てないので、途中に検索して知る。やはり映画館で観るべきだった。
感想:観て本当によかった。
アニメ版も良かったが、こちらもまた名作。同じ原作とは思えない。新しい作品として観れた。
環境2:結果的にアニメ版を先に観てよかった。それぞれの良さがある。
感想2:結局、恒夫はジョゼの何から逃げたのだろう。世間体では無いと私は思う。20代なんて逃げる事だらけだ。珍しい事じゃ無い。これからも逃げるだろう。そういう役には妻夫木聡がよくハマる。
感想3:ジョゼは特に語らない。電動車いすのスピードが表すこと、魚を焼く穏やかな表情。想像をするのに充分なラストだった。
追記 2022年4月12日
昨日、約1年ぶりにテレビ画面で観た。
やっぱり良い作品だ。年に一回くらい観る価値は十分ある。
青年と下肢不自由な女性との出会い
原作は田辺聖子氏の小説、
青年と下肢不自由な女性の出会いと別れ、
自立と成長譚を描くクール&シャインな物語、
監督は犬童一心氏
少し是枝風味と言えば易いかダーク&クール醸し
切なき肌温からの成長譚描く青春群像劇の秀作。
包丁は人に向けるな、トカレフは買うな。
乳母車の少女との非日常の物語
アニメ版が公開とのことで、予習のため鑑賞、原作未読。
身障者との日常をリアルとファンタジーを絶妙なバランスで描いた作品。
妻夫木聡の真面目系クズっぷりよかったです。いるいるこんな大学生。
池脇千鶴のツンデレ薄幸美少女感、こんなの惚れないほうがおかしい。
その他、江口徳子や新井浩文など最強の脇役陣も完璧でした。
映画全体の雰囲気が淡々としているのに居心地のいい映像でした。
ファンタジーなら障害が大きければ大きい程、恋は燃え上がるものですが・・・
ハッピーエンドではないのに希望に満ちているラスト、素晴らしかったです。
劇中セリフより
「暗い海に漂う貝に戻るだけ、それもまた良しや」
最高の日々が過ぎ去ったとしても、失ったわけではない。
思い出として心に残る、それが前に進むための糧になるのかも知れない。
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