ヴァイブレータのレビュー・感想・評価
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愛欲からの愛情
90分の物語には1人の女と1人の男がいれば充分なのだな。と、この映画を観てつくづくそう実感した。
凍てつく冬の夜、行きずりの旅、トラック車内で繰り広げられる愛欲。東京から新潟間の往復、およそ4日間の道のり。女の痛々しい言動は男の気を引くためなのか。そんな彼女と貪り合いながらも「面倒事はゴメンだ」と言わんばかりに一線を引こうとする男は反社との繋がりを匂わせ気に食わなければ女でもぶん殴ると嘯く。だが3日目の夜、精神のバランスを崩し泣きじゃくる女を男は後ろから優しく抱きしめる。そして女は男に身を委ねる。旅の終盤、寂れたドライブインで女が男に「私の事好き?」と尋ねる場面が好きだ。男は無骨に「好きだよ」とこたえる。そこには駆け引きなど一切ない。
序盤、コンビニで酒を購める女の身体を軽くノックして男は彼女の心のヴァイブレータを鳴らす。その無言のヴァイブレーションに誘われ女は男が待つ大型トラックに乗りこむ。もちろん目眩く欲望のために。だがいつしかその愛欲はほんの少し愛情へと姿を変えていったように思える。そうした経験は何も劇中のようなアルコール依存のルポライターと金髪運転手だけのものではない。求め合う男女、人間がいる限りいつでも、どこでも、誰にでも起こりうるのではないだろうか。だから通勤電車に揺られて喜怒哀楽が薄れがちな自分のような人間にも女が不意に口にした「私の事好き?」と言う台詞が心に響いたのだろう。
まさに心の深い所でヴァイブレータが鳴り響いた、そんな90分だった。
誰でもないあなた 誰でもない私
31才のフリーのルポライター玲を寺嶋しのぶさんが、28才の長距離トラック運転手岡部を大森南朋さんが好演。
深夜のコンビニで視線を交わす2人。
( 腰に触れて誘うんだ 👀 人によっては痴漢行為になるかも。)
出逢ったばかりの2人は岡部の大型トラックで一夜を共にする。
夜の高速、流れていく景色、深夜の街を抜けていく。まるで私自身も助手席に乗っているよう。
とても大切に扱ってくれる彼に、玲は幾つかの問いかけをする。そう、それは愛情という訳ではない ・・・。ただ互いに人の温もりを欲していた。
そう、私はもう大丈夫!
玲の心の呟きが聴こえてくるようなラストシーン。
素敵な映画でした。
ー SEEK YOU!
BS松竹東急を録画にて鑑賞
人肌恋しい雪のホワイトデーにランデブー
2003年、寺島しのぶが鳴り物入りで映画界に。
ピンク出身の廣木隆一監督、荒井晴彦脚本。原作の小説あり。
フリーライターの女は取材で出合った女たちのの摂食障害がすっかり伝染ってしまい、対話しているような頭の中の独り言が実際に聴こえるほどにイカれてしまっていた。
雪が降るホワイトデーの寒い夜。深夜のコンビニでひとり酒を物色中に、茶髪のトラック運転手と目が合い、すれ違いざまにお尻を手の甲で軽くタッチされる。
なにも買わずにあとを追って店外に。
トラックの高い助手席に招かれて、焼酎のロックをゴチになる。その先はだいたいそうなる訳よ。
ブァイブレーターそのものは出てこない。
女のハートがふるえた瞬間からのロードムービー。
酔ってもないのに29歳の寺島しのぶが有村架純にみえてしまった。
大森南朋もほぼ同年代。若い。
防寒用ボア付きの黄色い長靴。
釣り用???
オレも同じようなの持ってる😅
ナンパに使う気になって来た。雪の深夜ね。
フリーのトラック運転手の岡部は無線にハマっていた。どこかで誰かとつながっていたい。
道中、女は優しい男に癒され、電波体験も消え、元のコンビニ前で降りる。
また合う約束はしない。
寺島しのぶの放尿シーンが多め。
2025年3月14日 松竹東急の土曜シネマ
良かった
お互い何者なのか分からない男と女は、出会った瞬間動物の勘で惹かれあったのかな?寺島しのぶ演じる主人公は統合失調症の気があったり吐き食べをしたりと不安定な女性ですが、大森南朋と居ると気持ちが安定してました。こういう優しいいい男ってなかなか居ないんですけどね。だから女性受けする作品なのかしら?女性は数日優しい男性と一緒にいるだけでも癒されますから。大森南朋が思ったよりも全然良かったです。
イタイ女と優しい男のロードムービー
これって運命の出会い?出会った瞬間、背景にバラの花が咲き乱れるような劇的でロマンティックな運命の出会いは、少女漫画などでよく描かれるが、本作の運命の出会いは地味すぎる(笑)。夜のコンビニで酒を買う女、そこにやって来た金髪のトラック運転手。2人は目が合い、男は女のお尻を手の甲で軽く触って去っていく。あまりにも胡散臭い(笑)。常識ある女なら、彼のトラックに乗り込んだりはしないだろう。だが、彼女は「彼を食べたい」と思ってしまう・・・。メジャー作品も多数手掛けているが、廣木監督の真骨頂はインディーズ作品にある。特に「イタイ女」を描かせたら天下一品だ。『東京ゴミ女』では、片思いの男の出すゴミを収集する、イタイ女を描いていたが、寺島しのぶ演じる本作のヒロインも、そうとうイタイ(笑)。どこからともない「声」に悩まされ、食べ吐き(指に吐きだこを発見、何と言う微細な演出)を繰り返すアルコール依存症の30女の東京-新潟往復の旅。ゆきずりの関係以上ではないこの2人のどこが「運命の出会い」なのか?胡散臭い見た目と違い(失礼)、この男は「優しい男」。楽しく会話している最中に、突然泣き出して吐くようなめんどくさい女を、優しく介抱できる男。彼の優しさは常識的な優しさでもなく、下心のある優しさでもない、本能的に女性の求めていることを察知できる真の優しさなのだ。ゆきずりのはずの女から「私のこと好き?」と聞かれ、「好き」と答える男はいても、その後に「お前は俺のこと好きか?」と返せる男はいない。そんな彼の優しさで、彼女の心は少しずつ癒されていく・・・。時折彼女の心情を短い言葉の字幕でインサートされるのが効果的だ。一生添い遂げるのだけが運命の出会いじゃない、たった2日間でも一生忘れられない運命の出会いもある。出会ったコンビニで別れた2人・・・。まっすぐ前を向いて微笑む彼女の晴れ晴れとした表情が清々しい。
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