ヴァイブレータのレビュー・感想・評価
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イタイ女と優しい男のロードムービー
これって運命の出会い?出会った瞬間、背景にバラの花が咲き乱れるような劇的でロマンティックな運命の出会いは、少女漫画などでよく描かれるが、本作の運命の出会いは地味すぎる(笑)。夜のコンビニで酒を買う女、そこにやって来た金髪のトラック運転手。2人は目が合い、男は女のお尻を手の甲で軽く触って去っていく。あまりにも胡散臭い(笑)。常識ある女なら、彼のトラックに乗り込んだりはしないだろう。だが、彼女は「彼を食べたい」と思ってしまう・・・。メジャー作品も多数手掛けているが、廣木監督の真骨頂はインディーズ作品にある。特に「イタイ女」を描かせたら天下一品だ。『東京ゴミ女』では、片思いの男の出すゴミを収集する、イタイ女を描いていたが、寺島しのぶ演じる本作のヒロインも、そうとうイタイ(笑)。どこからともない「声」に悩まされ、食べ吐き(指に吐きだこを発見、何と言う微細な演出)を繰り返すアルコール依存症の30女の東京-新潟往復の旅。ゆきずりの関係以上ではないこの2人のどこが「運命の出会い」なのか?胡散臭い見た目と違い(失礼)、この男は「優しい男」。楽しく会話している最中に、突然泣き出して吐くようなめんどくさい女を、優しく介抱できる男。彼の優しさは常識的な優しさでもなく、下心のある優しさでもない、本能的に女性の求めていることを察知できる真の優しさなのだ。ゆきずりのはずの女から「私のこと好き?」と聞かれ、「好き」と答える男はいても、その後に「お前は俺のこと好きか?」と返せる男はいない。そんな彼の優しさで、彼女の心は少しずつ癒されていく・・・。時折彼女の心情を短い言葉の字幕でインサートされるのが効果的だ。一生添い遂げるのだけが運命の出会いじゃない、たった2日間でも一生忘れられない運命の出会いもある。出会ったコンビニで別れた2人・・・。まっすぐ前を向いて微笑む彼女の晴れ晴れとした表情が清々しい。
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