「塚本流愛のカタチ」六月の蛇 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
塚本流愛のカタチ
塚本晋也監督2003年の作品。
塚本作品と言うと、『鉄男』や最近は夏に必ず再上映される『野火』が人気。
だけど個人的には、本作はお気に入りの一つに入る。
雨降り続く六月。
お悩み電話相談室で働くりん子は、暫く夫とセックスレス。欲求不満を晴らすように、誰にも知られず、化粧をし、超短く切ったミニスカートを履いてオナニーをしていたのだが…、
その場を、かつて電話で救われた元患者の男に盗撮されてしまう。
男はりん子にフィルムを渡す代わりに、その大胆な格好で街中を歩けと要求して来る…。
女とストーカー男、夫をも巻き込む変態的な三角関係。
が、ただそれだけには非ず、人の内なる性や欲、果ては愛へと昇華していく。
人は誰だって激しい性欲は持ってるし、誰にも知られたくない性癖だってある。それこそ、りん子のような秘密の性癖がある人も居ないとは言い切れない。
ましてやりん子の場合、夫とずっとセックスレス。男だったらデリヘルなどで欲求晴らすが、一見貞淑な妻は…。
りん子の姿はまるで自分を見ているようだ。
ストーカー男に秘密と弱みを握られ、言われるがままにしなくてはならなくなったりん子。
勿論、イヤイヤ。断固拒否。顔から火が出るほど恥ずかしい。
やっと羞恥の時間から解放。
…が、指示でアソコに付けたバイブを起動させ、その快感に涙する。
自分の中の性欲が目覚め、もう止められなくなる。
こんどは自分からストーカー男に電話を掛け、再びあの快感を…。
乳ガンと診断されたりん子。手術を受ける決断をする。
夫・重彦は何も相談されず、納得いかない。時々、異常に家の中を掃除したり、重彦の鬱憤晴らしか。
ある日重彦は、“変化”したりん子を目撃する。衝撃を受ける…。
自分の知らない所で、妻が…。
さらに妻が、ストーカー男が連写する中で、服を脱ぎ捨て、セクシーにオナニーする。
重彦はそれを見て…。
如何わしいSMクラブ。現実か幻想か、奇妙な世界をさ迷う重彦。
ストーカー男から責められる。
りん子があんな霰もない性欲に駆り立てられたのは、お前のせい。
ずっとセックスレスとなり、構ってやれなかった自分のせいなのか…。
妻と夫、ストーカー男の奇妙な関係の果てはーーー。
ストーカー男役の塚本自身の怪演もさることながら、2人の熱演。
眼鏡を掛けた地味な妻から、妖艶な女へ。雨の中、フルヌードになり、喘ぐ。黒沢あすかの文字通りの体当たり演技に天晴れ!
重彦役の神足裕司は本業は役者ではなく、コラムニストやコメンテーターで(多分ワイドショーで見た事あるかも)、時々台詞も棒読みだが、その哀愁漂う佇まいの妙。
衝撃インパクトの幕引きが多い塚本作品。
が、本作は…
ラスト、いつ以来か。愛し合う2人。
求めていた愛のカタチ。
塚本作品の中でも、不思議な感動に救われる。