「新選組でいちばん強かった男」壬生義士伝 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
新選組でいちばん強かった男
Amazon Prime Videoで2回目の鑑賞。
原作は未読です。
家族を愛し、故郷を愛し、義を守るために、幕末の京都を駆け抜けたひとりの侍、吉村貫一郎の生き様が胸に迫って来ました。南部盛岡藩で貧しい暮らしを送る家族を養うために、断腸の想いで脱藩して新選組に入隊後、危険な任務も厭わず人を斬っていく貫一郎…。「おもさげながんす」を口癖のように言いながら、受け取った給金をせっせと家族の元へ送る日々…
人殺しとしてしか生きられない己自身を嫌悪していた斎藤一は、新選組と云う血生臭い集団にいながらも、人当たりが良く心優しい態度を崩さない貫一郎と出会ったことで、当初は彼を憎悪していましたが、徐々に心情が変化していきました。
やがて倒幕が主流となり、新選組が属する幕府側は賊軍に落とされ、鳥羽伏見の戦いが始まり、激烈な戊辰戦争へ…
貫一郎と旧友・大野次郎衛門の友情は、涙無しには観られませんでした。満身創痍で大阪蔵屋敷に駆け込み、帰藩を願い出た貫一郎に、非常にも切腹を命じた大野…
立場上、貫一郎ひとりの命のために、藩全体を危険にさらすわけにはいかず、友情と職務を天秤に掛けての苦渋の決断だったことでしょう…。その心中や如何ばかりか?
中井貴一のひとり芝居が胸を打つほどの名演技でした。
家族ひとりひとりへ、明るい未来が訪れることを信じて言葉を遺し、故郷に想いを馳せながら、最後の意地とばかりに盛岡の米で握られたおにぎりには手をつけず、大野から情けで渡された大和守ではなく、グニャグニャの刀で腹を切った…
少々冗長気味でテンポが崩れてしまっているような気がしましたが、長回し撮影によって感情が途切れること無く、ストレートに伝わって来る名シーンでした。
※修正(2021/10/20)