「古典的な価値観」少女 an adolescent(2001) R41さんの映画レビュー(感想・評価)
古典的な価値観
かつて有名な作家の似たような小説を読んだことがある。
主人公は刺青の彫師
店に届け物をするいつもの店の娘が新しくなり、その子の肌にほれ込んだ彫師が彼女を探し回った末に頼み込んで掘らせてもらったという作品だった。
この当時のものの考え方があまりにも現代と違っていることがとても不思議に思った。
この作品にもそんな感じが現れている。
じいじは昔気質 そのじいじが孫娘の背中に掘りたいというのはあまりにもズレた時代錯誤
警官は昔気質でもあり常識もあるが、警官としてはいい加減過ぎている。
しかし、そのいい加減さが田舎町では都合がいいのだろう。
さて、
葬儀屋を営む少女陽子の一家は若干複雑だ。
父の自殺理由とは何だったのだろうか?
物語から推測できるのが、妻の浮気だろう。
ひっそりとする父に対し、浮気相手のそれは激しく、おそらくい幼少期のスケマサがトラウマになるほどのことを見たのだと思われる。
男としての失墜
これが原因だろう。
さて、ヨウコの母 警官のかつての恋人 すべてを狂わす女
そしてヨウコとの口論
「ズルイ」
このズルさに込められた意味 奥深さ それとは対照的な陽子の気持ち
「スケマサを殺すわけにはいかない」
警官の常識
最後はじいじの葬式で始まった相続と家と土地の売却話
そして街を去る3人
警官は仕事を辞めた。
何もかもを捨てた3人
陽子の母は、陽子に嫉妬したというのが事実だろう。
警官が「ゾッとする」と言ったのは、彼女があまりにも魔性的だったからかもしれない。
しかし、
親子ほど離れている中学生と一緒になるという設定そのものが、今となっては古典的と言わざるを得ない。
この作品が伝えたかったのは「純愛」だと思う。
そのためにすべての常識の枠を取り除いていくという表現をしたのだろう。
すべてを取り除いて行って残ったもののなかに二人がいればいい。
それこそが純粋な愛だと作家は言いたかったのかもしれない。
しかし、
この作品の監督であり主演でもある奥田瑛二さん
この小説を見つけ、映画にしたいと思った。
主人公を自分自身にしたのは、おそらく奥田さん自身が思い描く理想の自分像と重なったからだろう。
先日、娘の安藤桃子さん監督作品の「0.5ミリ」の中に登場したこの作品「少女」
主役の安藤サクラさんが「少女」を見ながらケラケラ笑うシーンがある。
きっと桃子さんが父の作品に込めた「理想」に気づいたことを表現したのかもしれない。
男女の差 時代の差
この差を埋めるのは、割と離れた存在どうしの方が案外容易いのかもしれない。