われらの時代(1959)のレビュー・感想・評価
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キャスティングが光る映画化
大江健三郎の原作『われらの時代』を読んでから鑑賞しました。原作を読んだときに感じた終盤のしみじみとした感慨は映画でも描かれていました。
俳優がよかったです。
性的にも思想的にも日本に絡め取られながら、そこからの「脱出」を願う主人公の兄と、ジャズのピアノを演奏しながら無軌道な行動に走る弟。
弟の活発で野生感のある姿はイメージ通りでした。他方、兄は人を見下したり、我関せずを決め込むときの表情がよく映えます。原作では沈鬱な印象をおぼえたのですが、映画では人間関係のなかでの彼の態度が明白になっています。
安保反対の署名を呼びかける学生や学生運動のリーダーも登場して60年代を予感させますが、主人公の青年たちが具体的な問題として直面するのはいずれも第二次大戦後の国際情勢の光景です。日本とアメリカ。アルジェリアとフランス。韓国と日本。
同じように、映像の面でも、ときおりスタイリッシュなカットが挟み込まれてハッとさせられることがありますが、基本的にはセットでのカメラワークには古めかしさを感じます。二つの激動の時代のあいだに挟まれた50年代らしい作品です。
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