連合艦隊のレビュー・感想・評価
全5件を表示
大和の乗組員は負けると分かっていたのか?
何回見ても日本が勝つ事が無いたけに、亡くなった人達を祀るのはわからくもないが、彼らがいたから、今の我々がいると言う考え方は違う。こう言った人がいなかったら、別の人達が生きていたような気がする。
今から40年前の映画だが、日本海海戦が映画の中の1945年の40年前。
時間が経つのは早い。日本海海戦に勝たなければ、もう少し早く戦争を止めていたかも知れないし、真珠湾攻撃も無かったかも知れない。勿論『たらねば』は歴史には無い。
それは兎も角、この映画を見てて、思った事。大和の乗組員は負けると分かっていたのかなぁ。映画ではみんな負けると思っている。勝つつもりがない。
この時点で負けていれば、沖縄戦も東京大空襲も原爆も無かったわけだから、この人達がいたから、今の我々がいる♥はやっぱり間違いだと想うけどね。
まぁ、我が祖父は臆病な人だったんで、早くから安全な所へ逃げていたんで、生き残れたけどね。だから、こう言った状況では、真面目な人程生き残れないと僕は思う。僕なら絶対に戦艦なんかにゃ乗らん。家族の為でも乗らん。自分が死んでしまってはそれまでよ。
映像はよかった
1940年(昭和15年)、連合艦隊司令長官・山本五十六(小林)の反対にもかかわらず、海軍大臣・及川古志郎の「やむを得ない」という一言により日独伊三国軍事同盟が締結された。
帝国海軍の取った道のりをドキュメント映像を散りばめながら進めていく手法で、どことなく単に史実に沿っていっただけの戦争ドキュメンタリーといったイメージ。さらに、架空の人物たち、本郷家と小田切家を中心として戦争に参加する様子を描いているのだが、これがまた中途半端。どちらも志願して海軍、特攻隊へと入った息子たち。赤紙を受けた小田切武市(財津一郎)ですら、元々海軍曹長で戦艦の整備担当であるほど軍人家庭の姿なのだ。したがって、“市井の人々を描いた”とする監督と脚本家・須崎勝彌が元々旧海軍の出身ということもあり、一般市民の目で見られてないことが市民感覚の無さを露呈しているのだ。
悲惨な死体の山をも描いているが、実際に殺されるといった胸を痛ませるシーンは皆無。痛みが伝わってこないだけでなく、やはり美しく散っていく海軍を描いているイメージが残る。大和を「やむを得ず」出撃させる及川大臣への批判も見受けられるが、結局は勝つための戦争ではなく、国のため、天皇のために体裁を保とうとすることを潔しとしただけ。出撃前夜に本郷真二(金田)の横で寝ていた兵士が泣きじゃくっていたことが唯一死ぬことの恐怖を描いていただろうか。
その真二の兄(永島)が死んだことにより、結婚したばかりの陽子(古手川祐子)を妻にもらうといった悲恋も描いているが、その古手川の表情が全くだめ。男の身勝手な態度に翻弄されるといったことを言いたいんだろうけど、これが映画の中で浮いてしまっている・・・そんなことより戦争に対する憤りってもんはないんかい!!といった脚本だ。
映像はミニチュアの戦艦。9000万円かけたというからその特撮技術は凄い!まぁ、模型を作りたくなる映画だわな。
海が見つめた悲しき叙事詩
DVDで3回目の鑑賞。
大切に育てた息子を送り出す父と母の心境。様々な想いを胸に戦場に赴く若者たち。彼らの無事な帰りを祈る人々。…
戦争を経験していない私には、ただ想像をたくましくするしか無いのだが、その心情を慮ると涙が止まらなかった。
中野昭慶特技監督が描く戦闘シーンのスペクタクルは筆舌に尽くしがたい迫力があると共に、本編と相まって、戦争の悲惨さを克明に浮き彫りにしていた。
クライマックスで描かれた、戦艦大和の壮絶な最期は忘れられない。中野特技監督が得意とする紅蓮の炎が大和を包み、天にも昇る勢いの火柱を伴った大爆発。
それはまるで、連合艦隊の断末魔のように思えただけではなく、多くの人たちの抱く想いを焼き尽くし、容赦無く呑み込んでいった末に立った墓標のようにも見えた。
根拠無き精神論・根性論、十死零生の戦法である特攻など、無謀かつ神頼み的ないい加減さで戦争を遂行しようとした当時の軍部には、怒りしか湧いて来ない。
夢や希望、愛や喜びを残酷に奪っていく戦争は、決して繰り返して良いものではなく、未来永劫起こらないように努力していかなければならないと痛切に感じた。
[以降の鑑賞記録]
2020/08/29:WOWOWシネマ
2020/10/18:Blu-ray
2023/04/07:Blu-ray
2024/10/08:Blu-ray
※修正(2024/10/08)
松林宗惠戦争作品の集大成
学生時代から8/15が近付くと戦争映画をみることを毎年の常にしているが、数多くの作品の中で、この作品ほど
“先の戦争の全てを俯瞰的に、しかも市井の市民の戦争”を綺麗に綿密に描ききった作品はないだろう。
好戦派や非戦・反戦派、いずれが見ても心に残る言わば『中戦』と言うべき作品なのは松林宗惠監督と脚本の須崎勝彌さんと言う本当に戦場に赴いた人が描いた戦争映画だからと言えよう。
台詞に数多く印象的な言葉が散りばめられ、主要出演者各々の見せ場が悲劇的で物悲しく、戦争の無常を切々と訴える。
主人公は山本五十六役の小林桂樹であるものの、前半で戦死し、中盤はレイテ沖海戦で囮を引き受けた小沢治三郎役の丹波哲郎が芯ある司令として、後半の大和出撃は伊藤聖一役の鶴田浩二が優しく物語を引っ張るが、何より、下士官上がりの海軍軍人の一家である小田切家と、内心は戦争に複雑な思いを抱えながら二人の息子を戦死で失う本郷家の視点で物語全体が進行していき、それは戦争を生きた全ての家庭に何かしらの想いを込めた作風とも言える。
小田切家の父親(財津一郎)が息子(中井貴一)の海軍兵学校入学と優等卒業を喜ぶ反面、特攻隊志願を反対するのは“軍人にも良心がある”と言う今の作品では絶対に描けないシーンでもあろう。
本郷家の二人の戦死と二人に愛された婚約者(古手川祐子)が翻弄される姿は戦争中によくあった光景とも言える。
戦局いよいよ逼迫の度を増す中で連合艦隊旗艦『大和』を指して、
「大和に生き恥をかかせないで下さい」と沖縄への出陣を主張する連合艦隊神参謀に、小沢治三郎の放った「そんな浪花節は聞きたくない」は、あの戦争の中で“浪花節”の如き闘いがあったことの裏返しかもしれない。
それに小田切家の父親が命を賭けて沈み行く大和の高熱の注水弁を回して壮絶に死に絶えた後、息子が空から、「お父さん、ほんの少しだけ長生きするのがせめてもの親孝行です」と心の中で呟き、沖縄に特攻するラスト、本当に説明・注釈一切不要の見事さである。
途中、狂言回しの如く幾度か作戦の言い合いをする草鹿龍之介(三橋達也)と宇垣纏(高橋幸治)の台詞が戦争の全般的な流れを説明してくれているし、改めてわざわざ終戦の事細かな事を描く必要も無い、作品を創る側も見る側も全てを承知出来ていた、そんな時代の作品だろう。
出演者の多くが出征経験があり、三橋達也に至ってはシベリア抑留まで経験している、創り手が戦争の経験があるのとないので、作品の重みがだいぶ変わってくる。
戦後50年を期に創られた作品には稀薄になってしまい、21世紀の戦争作品では
『俺は君のためにこそ死にに行く』のような英雄譚のみで描いた作品や、戦争をいちいち細々説明しなければ話の進まない『永遠の0』、そして“軍人は全て悪”と断じ斬った民放の戦争ドラマ、見ていて合点の往く作品が減ってしまったのは、戦争の時代を生きた人が減ってしまったことが原因だろうが、時間の流れとは言え、誠に悲しい。
松林宗惠監督、須崎勝彌脚本の戦争映画は本当に外れがなく、どの見地・どの思想の人でも見られると思うし、
今、戦争から70年以上が経ち、我々世代が老人を含む大人から聞いた戦争の話を今の子供は聞く機会がない、その事実も悲しいことではあるが、是非、若い世代に、CGに比べた特撮云々ではなく、ストーリーそのものを見て貰いたい作品であると思う。
特攻隊操縦士のせめてもの親孝行がせつない
総合65点 ( ストーリー:65点|キャスト:65点|演出:65点|ビジュアル:65点|音楽:65点 )
第二次世界大戦における日本の海戦史をおおまかながらも忠実に追う部分と、それに参加した無名の数名の兵士たちの二つの視点がある。だが前半の部分はただ本に書かれてある歴史の薄っぺらい要約にすぎなくて物語としてつまらないし、摸型の飛行機や船が絵を背景に登場する映像もたいしたことないしでつまらない。歴史の解説に時間をかけすぎで、この部分は殆ど無くっても問題ない。敗色濃厚なマリアナくらいから物語を始めてもいいくらい。登場する軍人たちの演技もわざとらしさが目立つ。ただしそれまでのしょぼい船の摸型と違って、1/20の大きさで作られた大和の摸型だけは他とは迫力が違う。
後半になってから水兵やら飛行機の操縦士たちやその家族やらが中心になってきてからようやく映画らしくなってくる。それまでの歴史の要約編にすぎなかったものが、やっと死とは隣り合わせながらも生き生きとした登場人物たちの直面する戦争の話として動き出す。彼らが参加している戦争というものがここでようやく視聴者にも伝わってくるようになる。沈みいく大和を見ながら特攻隊の操縦士が言う「親よりも少しだけ長生きする」というせめてもの親孝行がせつない。
全5件を表示