「この人たちの血、骨、肉によって、戦後の日本はあり、21世紀に生きる私達日本人がいるのです」連合艦隊 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
この人たちの血、骨、肉によって、戦後の日本はあり、21世紀に生きる私達日本人がいるのです
奈良県、橿原神宮と神武天皇陵の宏大な森の一角に、空母瑞鶴の慰霊碑があります
何年か昔に、参道から少し入った小さな公園のような一角に迷い込んで偶然それがそこに在ることを知りました
丸くロータリーのような広場の中央の緑地の中心に立つ電信柱程の高さのオリベスクのような石柱です
そのてっぺんには零式艦上戦闘機の精密な模型が上昇中のような姿勢で飾られています
50名程の老若男女と孫と覚しき小さな子供達がその慰霊碑をとりかこんで静かに談笑されていました
瑞鶴の生き残りの乗組員や遺族の方の慰霊祭のあとのようでした
自分が場違いな闖入者であることを悟り早々にその場を立ち去りました
空母瑞鶴は、本作にあるように開戦時最新鋭の空母として八面六臂の活躍をして1944年10月25日に沈んだのです
本作は特撮が駆使され戦闘シーンを克明に描きます
しかしどことなく特撮シーンには現実感が感じられず、まるで怪獣映画の戦闘シーンのようです
しかし、それらは本当に合ったことなのです
シームレスに21世紀に生きる私達とつながっているリアルな実際に生きていた人々の物語なのです
東京、靖国神社の境内に遊就館という博物館があります
2005年頃小泉政権時に首相の靖国参拝が行われ、中国や韓国から激しく抗議と非難を受け、国内の世論もまた大きく割れて揺れました
自分としてはこの問題をどのように考えて良いか判断つかず、現地現物現実を見るしかないと思い、そこを訪れることにしました
神社自体は、大きな神社であるということで他とそう変わりはありません
遊就館は大きな艦上爆撃機彗星の実物の展示があったりして戦争博物館の趣があります
しかし決して戦争を賛美しているものではありません
古代から現在に至る歴史の中で、私達日本人の祖先達がいかに内乱、外敵を退けて日本の統一と平和を守る為に苦難を乗り越えていったのかがテーマの博物館です
古代、中世、近世に渡る武具や古文書の展示、当時の国際情勢の解説はその視点で歴史を振り返って考えさせてくれる素晴らしい展示の数々です
その順路の最後の小部屋
そこには小さな顔写真が四方の壁、天井にいたるまで埋め尽くされています
全て特攻隊員として死んでいった人達の写真なのです
その写真には氏名、年齢、出身地、大戦中の軍の所属と階級、そして遺書が添えられています
圧倒的な迫力です
号泣しました
涙が止まらなくなりました
その時自分の靖国参拝への結論は出ました
本作は正にそれと同じことをやろうとしたのだと思います
そんな浪花節は聞きたくない!
小澤提督の言葉もまた心から正しいと思います
センチメンタルで思考停止しているに過ぎません
しかし
愛する人たちの為に戦う
人に愛と犠牲がある限り、その民族は滅びない
戦艦大和出撃の夜、信二の独白もまた尊いのです
遊就館のあの部屋を埋め尽くす本当に生きていて命を投げ出した人たちのこのような思いによって戦後の日本はあり、21世紀に生きる私達日本人がいるのです
これもまた間違いの無いことだと思います
本作単独だけで、その結論にまで至る事ができるかは、自分には疑問です
本作はセンチメンタルに流れ過ぎだと正直思います
しかし伝えたいメッセージはそれなのです
連合艦隊という当時の日本のベストオブベストのエリートの人々の行動、判断もまた描かれています
連合艦隊の高官達と同じ間違いを、戦後の日本人は繰り返してきました
東日本大震災の対応、失われた30年への対応、新型肺炎への対応・・・
本質的な失敗の問題の根本原因は少しも正されていないのだと思わずにはいられません
谷村新司の有名な主題歌群青はエンドロールで流れます