陸軍中野学校
劇場公開日:1966年6月4日
解説
時代劇スターの市川雷蔵を主演に迎え、かつて日本に実在したスパイ養成所を題材に描いた「陸軍中野学校」シリーズの第1作。昭和13年。士官学校を卒業し陸軍に入隊した三好次郎は、自分と同じ幹部候補生らと共に都内のとある場所に集められる。そこは後に「中野学校」と呼ばれる日本初のスパイ養成所で、次郎らはその第1期生として選ばれたのだった。彼らは名前を変え、外部との連絡も一切絶ち、過酷な訓練を受ける。一方、次郎の恋人・雪子は音信不通となった次郎の行方を捜す手がかりを求め、参謀本部のタイピストとして働き始める。「刺青」の増村保造監督がメガホンをとり、「眠狂四郎」シリーズの星川清司が脚本を担当。
1966年製作/96分/日本
配給:大映
スタッフ・キャスト
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2022年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
日本のスパイものの傑作。実在した諜報活動員を育成する機関を題材に、家族や恋人をとるのか、任務をとるのかで引き裂かれる人物たちを見事にドラマチックに描いている。死んだことにされる諜報員候補生たち。お国のために約束された将来も犠牲にして諜報を学ぶが、影働きのためにその功績が日の目を見ることは少ない。
主人公には婚約者がいる。婚約者の女性は突然消えた主人公を探すために陸軍でタイピストとなるが、重要な機密を知ってしまい、運命のいたずらで外部に機密を漏らしてしまう。それを知った主人公は、任務のために非情の決断を迫られる。正体を隠さねばならないスパイと、婚約者の愛情との葛藤に揺れつつ、国のために人生をささげる非情さが描かれる。
諜報活動は影働きとはいえ、非常に重要なもので、一つの情報が数万の兵の命を左右することもある。スパイとは、そういう大きな全体の犠牲となる「個」の代表的な存在だ。そこがしっかり描かれた本作は、欧米のスパイものの傑作と比べても劣らない素晴らしい作品だ。
ワクワクする、戦争は嫌いなのに兵器は好きって矛盾してるけどすみません
スパイ大作戦
2022年4月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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時代も時代、流石に陳腐化は否めず、価値観も大きく現代と違う為、登場人物の行動原理への違和感や理不尽さ、関係構築への唐突さなど、首を傾げたくなる部分はある。
しかし、物語の構成が見事で様々な要素が上手く重なって重厚なストーリーになっていた。特に主人公と婚約者が互いにスパイとして対比がなされ、敵もまたスパイだというのも上手いと思った。そしてやはり主人公が最後、元はといえば健気に自分を追ってきた婚約者を自らの手で仕留めるのも残酷で切ない。物語冒頭の幸せな雰囲気だったのがさらに効いている。
古くても80、90年以降、基本は現代の映画を見慣れている自分からすると、白黒の昔の映画は鑑賞するのにある程度の体力はいったが、十分満足できた。
…せっかくベルト式のカメラを観客へ提示したのなら、コード表の写真を撮る時それを使えば良いのに。
(ベルトにそのままちっちゃいカメラが付いているのは面白かった。)
2021年8月17日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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1938年、士官学校を出た三好次郎陸軍少尉(市川)は草薙中佐(加藤大介)の訪問を受け、次々と質問を受けるが、その後陸軍省に出頭を命ぜられる。そこでは18人の若い少尉が集められ、制服を脱いで軍隊用語の使用禁止を命ぜられ、スパイ養成学校に入れられることになった。将来も名誉もないスパイ。名前も偽名を使わされ、家族や恋人、外とのつながりを一切禁じられたのだ。三好の婚約者雪子(小川)とも音信不通となり、彼女は次郎の消息を探し始めるのだ・・・
婚約者を探すため、陸軍参謀本部・暗号班のタイピストとして雇ってもらった雪子。しかし、元の会社の英国人社長ベントリーの情報で次郎が銃殺されたと聞かされる。悲しむ間もなく、その社長から陸軍のスパイを依頼されたのだ!
卒業試験は英国の暗号文解読のためのコードブックを領事館から盗み出すこと。盗み出すことに成功するが、盗まれたことに気づいた英国側がコードをすぐさま変えてしまう。中野学校の名誉を守るため、参謀本部が怪しいと睨んだ次郎。調べてみると雪子が情報を漏らしていたことに気づく。
ノイローゼになって首吊り自殺で1名脱落。バーの女にうつつをぬかし、仲間の軍刀を売ろうとした罪で切腹を命ぜられた学生(実際は刀に飛び込んでいった?)。そして、憲兵に捕まるであろう雪子を自らの手で死に導いた次郎。普通の人間の感情が徐々になくなっていく様子が恐ろしいし、草薙の思想にもろ手を挙げて共感する学生たち。陸軍の暴走を止めようといった考えは敵国側にも共通するのに、どうしてこうもいがみ合わねばならぬのか。戦争が若者たちの心も変えてしまう。