「娘義太夫から始まるお話」陽暉楼 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
娘義太夫から始まるお話
冒頭、美しい娘義太夫=豊竹呂鶴(池上季実子)の舞台姿から、この映画の世界に完全に没入しました。殺された呂鶴と女衒(緒形拳)の娘が後の桃若。池上季実子の二役が素晴らしい。桃若の艶やかさ、座敷で会った若い男に初めて恋をして、浅野温子とぐっちゃぐっちゃに闘ってから、着物も髪もめちゃくちゃで好きな男に会いに行って、「サーカスの歌」を聞いて、その人の子を身ごもる。浅野温子も池上季実子も当時、まだ20代前半!オーラ爆発の女優魂に胸ときめきました。池上季実子の着物姿は半端なく決まっている。
倍賞美津子も良かったです。着物のまんまで露天風呂に殴りこみ、自分の夫を盗んだ愛人(佳那晃子の変貌ぶりが凄い)と闘う女将。とにかくこの映画に出てくる女はみんな、男主体の社会の中で、強い。ヤクザ映画は男性主演が普通ですが、女優メインのこの映画は、美しくて激しくて強くて悲しくてかっこよかったです。音楽もよかった記憶があります。今、この映画を見たら、暑苦しくて濃厚過ぎてついていけないかも知れない。でも、当時の製作、監督、脚本家とスタッフと役者が作り上げたフィクションの世界の熱量は変わらない。
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