「主役は 加賀情緒」夢二 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
主役は 加賀情緒
フォロアーさんのレビューを呼び水に、
配信で鑑賞。
ちょうどラヂオのニュースで「加賀暖簾」の話題を聞いたばかり。タイムリーでした。
あの竹下夢二の絵からそのまま出てきたような女衆。
そこに男前で意外にも逞しいジュリーが先生として絡む。劇中唯一の下手糞さが不思議に効いてアクセントに。これ以上ないという適役でしたね。
〽待てど暮らせど
来ぬひとを
宵待草の やるせなさ
今宵は月も出ぬそうな
〽暮れて河原に
星一つ
宵待草の 花が散る
更けては風も泣くそうな
アンニュイで細身にしなだれる「宵待草」。黒猫を抱いた「大黒屋」。
そして歌曲の、SPレコードの陰旋律。
あの世界は忘れられるものではない。
鈴木清順監督はバイオレンスとか、硬派の映画も撮るけれど、
そのベースには琴線に触れるメロディが有るから、
だから皆はその隠し味と風情に持ってかれてしまうのでしょう。
流石、血は、日本橋の呉服屋の長男です。
もちろん沢田研二や毬谷友子、そして女将大楠道代の美しさは言わずもがなですが、
銀幕における真の主役は「加賀情緒」。
大正は、時代の転換点でした。
衣装も、社会も、男と女も変わっていった時節。
古民家や旅館のしつらえ。
友禅、着崩し、格子、畳、そして床の間の美意識。
満を持しての玉三郎と原田芳雄。男たちも負けていない。
浴衣の、そしてモボの沢田研二がエロ過ぎです。
どうだろう、大正の風俗や1920年代の亜米利加の出で立ちで、僕は寫眞館で自分のポートレートを撮ってみたいですね。
セピアの。
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