夢二のレビュー・感想・評価
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花様年華のあの曲が
鈴木清順という変わったおじいちゃんはキライじゃないんだけど、映画のほうは··· 余貴美子、広田レオナ、毬谷友子と個性的な女優を起用する目のつけどころはさすがデス。 とくに吹越満と2度くっついたり離れたりの広田レオナ様の漬物樽シーンは見ものでした。 大根にしておくにはもったいないキレイなお御足。 花様年華のあの曲のルーツがこちらの映画だったとは😅
『花様年華』の「夢二のテーマ」から…
ウォン・カーウァイ監督の『花様年華』が大好きで、 その『花様年華』に使われている曲「夢二のテーマ」も大好きなんですが、 元々この映画の曲って事で、この映画に興味を持ち、 鈴木清順 生誕100年記念 SEIJUN RETURNS in 4K にて、観賞。 つげ義春やデヴィッド・リンチみたいな、不条理で、不可思議で、奇々怪々な、世界観。 大好物で、とても気に入りました。 “大正浪漫三部作”らしいですが、他のも観なきゃ(笑) この映画の為に作られた曲「夢二のテーマ」は、 まるで『花様年華』の為に作られた曲みたいに『花様年華』の方が合ってる(笑) 「夢二のテーマ」は先日まで上映してた『ヨーロッパ新世紀』にも使われてて、ビックリしました。 曲の話ばかりになったけど、映画の方も、ウォン・カーウァイなど、海外にも影響を与えた監督だそうで、それも納得の出来。 日本家屋だったり、女性の日本髪だったり、着物だったり、今や失われた日本の原風景が懐かしく美しい。 沢田研二さん演じる夢二は、大正から昭和にかけ活躍した画家らしいです。 この映画、名作だと思います。
映画界の新古今和歌集
鈴木清順監督生誕100周年記念ということで、「大正浪漫三部作」と言われる「ツィゴイネルワイゼン」(1980年)、「陽炎座」(1981年)、そして本作「夢二」(1991年)の3作が4Kデジタルリマスターされて公開されたので、(スケジュールの関係で)まずは一番新しい「夢二」から観に行きました。 題名の通り画家の竹久夢二(1884年~1934年)の半生を描いているものの、内容的には虚実取り混ぜており、特に派手な女性関係が有名な夢二と交友があった女性として、彦乃(宮崎萬純)やお葉(広田玲央名)は実在したようですが、物語上最も重要な巴代(毬谷友子)は実在しなかったようです。 そして特徴的だったのは、極めて幻影的な映像が満載で、和歌で言うなら巧緻を凝らした新古今和歌集みたいな映画だったなと言うのが第一印象でした。また、劇中夢二の描いた絵や、作詞した「宵待草」の曲が効果的に使われ、この辺りはまさに半生記と言いうる作品でしたが、使い方の芸術点が非常に高く、「大正浪漫三部作」の掉尾を飾るにふさわしい作品でした。 俳優陣ですが、何と言っても主役のジュリーこと沢田研二が若くてカッコよく、とにかくゾクゾクとさせられました。昨年「土を喰らう十二カ月」では老成した作家を演じていましたが、本作ではギラギラしていた頃のジュリーそのものであり、懐かしさもあって痺れました。また、鈴木清順作品では常連の原田芳雄も、ジュリーとは対照的な野太い男の役を素のままといった感じで演じており、こちらも良かったと思います。ジュリーと原田芳雄の間で揺れ動いた巴代を演じた毬谷友子も、妖艶すぎて見惚れてしまいました。一瞬筒井真理子に似ているなと思いましたが、勿論全然違いました(笑) それにしても、本作が制作されたのは1991年であり、平成に入ってからのこと。令和とは直接地続きの時代ではあるものの、今大正時代をここまで美しく、自然に再現できる映画が出来るかと考えてみると、中々出来ないんじゃないかなと思いました。勿論予算の関係もあるでしょうが、この30年余りで人も風景も日本が大きく変わってしまったため、もうこうした新作をお目に掛かることは出来ないのではと感じたところです。そういう意味では、非常に貴重な作品だと言えるかと思います。 そんな訳で、とにかく俳優陣も背景も含めて、映像全体が非常に綺麗な作品であり、100年前の時代に思いを馳せた本作の評価は、★4.5とします。
前二作にあった魅力がほとんどない
鈴木清順監督の大正浪漫三部作の三作目。これまでの「ツィゴイネルワイゼン」「陽炎座」と比べるとかなり物足りない作品だなと感じた。 前二作と違って原作がないオリジナル脚本だからかもしれないが、何となく勝手に期待している、現実と虚構が入り乱れるような摩訶不思議なものが足りない。もちろんあればいいというわけではないのだが、虚構によって登場キャラクターが何かに飲み込まれていく様が薄く、つまりそれは作品からにじみ出る熱量不足に直結してるように思える。 わかりやすく言えば、これまであった、強い感情からくる極端な行動というのがない。もっと具体的に言うならば、作品から「死」の匂いを感じないのだ。 浪漫三部作は、愛情と、そこから付随する死、つまり愛と死の物語だと思う。 本作「夢二」も前二作同様に愛と死がテーマといえるが、爆発的に訴えてくる力強さがない。 あくまで前二作との比較になってしまうけれど、一番大事なキャラクターである主人公夢二に魅力がない。 得体のしれないものに飲み込まれていく、狂気に似た不安感がない。 死に怯え、死を愛する、逆にいえば「生」を存分に満喫している感じが夢二にはない。 夢二の生きること、夢二の場合は絵を描くことに対する情熱描写が足りてない。 つまり、ただのおちゃらけた女たらしにしか見えないのだ。 それでも、前二作と比べて表面的なストーリーのわかりやすさは群を抜いている。観やすさという点では悪くないかもしれない。個人的には物語のわかりやすさなど求めてないのでプラスに作用しないが。 あとは、夢二ではなく演じた沢田研二を魅力的に魅せるというところはいいんじゃないかと思う。肝心の夢二というキャラクターに魅力がないのでなんとも複雑ではあるけれど。 観やすくわかりやすくなったことで前二作にあった不穏さ不気味さが薄れ、結果として平凡で退屈な作品になってしまったように思える。 つまらないとは言わないけれど、目を見張る魅力的な部分もない。前二作が面白かっただけにかなり肩透かしを食った気になる。
清順美学、ココに極まる
鈴木清順、浪漫三部作の完結編にあたる本作は「陽炎座」からだいぶ時間を空け前二作にあった原作は持ち合わせないオリジナル作品でありながら実在の人物である"竹久夢二"の半生を風変わりに捉えたブレない監督の手腕は健在!? 唐突な時系列の描写に幻想的な映像と物語の筋が見当たらずオチまでスッキリしない展開に戸惑いもするが不思議な世界観に魅了されてしまう。 なにわともあれ、原田芳雄に大楠道代や麿赤兒といった俳優陣には[お疲れ様でした]と言いたい!? 観ている側より演じている方がこの難解な浪漫三部作に困惑していたような気がしてならない。
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