ゆきゆきて、神軍のレビュー・感想・評価
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笑えるのだろうか
奥崎謙三は、大まじめです。
奥崎謙三は、大まじめに「田中角栄を殺す」と宣伝します。
奥崎謙三は、大まじめに天皇にパチンコ玉を打ちます。
一般的に奇行と呼ばれる行動をとる奥崎謙三を、まともである私達は「狂人」と呼ぶのでしょう。しかし、彼の様な「狂人」を作りだしたのは誰なのでしょうか。彼の様な「狂人」が作り出された原因は何だったのでしょうか。
「戦争」という言葉を並べるのは簡単かもしれませんが、「戦争」という名の下で行われる数え切れないおぞましい出来事全てを私は経験したことがありません。「戦争」という言葉から数ある想像しかできません。
だからこそ、私は決して彼を笑うことはできないのです。
私が、彼と同じく国家権力によって数え切れないおぞましい経験をさせられたとするならば、フィルムの中の「狂人」は、奥崎謙三ではなく、「私」であったかもしれません。そこには、数ある想像の中で「戦争」を論じていたまともな「私」は存在していません。戦争の「責任」をひとり背負わされた「狂人」と呼ばれる「私」が存在しているだけです。
ゆきすぎて、圧倒。
名前は微かに存じ上げていたけれど、それにしても凄まじい。
狂気じみたアナーキストと見下してしまったらそれまでだが、
この圧倒的なグロテスク感に思いきりエンターテインメント
を感じてしまった自分は何なのだろうと思ったくらい超感覚。
彼の行き過ぎた言動を由とはしないけれど自身の持つ正義を
何が何でも押し通そうとする熱血魂は見上げたもので、今時
誰がここまでやり通せるものだろうかと驚いてしまう。彼が
例えば明らかにカメラを意識したうえで演技していたのだと
したらかなりの演技派といえるし、あのままの男だとしたら
(こっちが正解だろうが)危険極まりない発狂型コメディアン
として映像化されていて大成功といえる。ともあれ、真相は
明らかになればなるほどさらにグロテスクで吐き気がするが、
この事実を声にして戦争を認識させる過程に意味を持つ作品。
ある意味ダークヒーロー
戦争を憎み、戦争責任を追及し続けた過激な男のドキュメンタリー。
戦後直ぐのごたごたの中で部下を銃殺した上官を
40年かけて探し出し、天罰を下す。
好意的に捉えればそうなるが、実際は非常に独善的。
手段は非合法だし、勝手な思い込みだし、
そもそも当事者じゃない赤の他人に説教をくらう筋合いはない。
ともかく、そういう人間を作ってしまったという意味では
彼もまた戦争の犠牲者なのかもしれない。
類を見ない【怪物】がここに居る
戦争が生んだ大量の殺戮兵器は数知れず、しかしそれらを併せても遜色ない程の強烈なるキャラクターを持つ男がいる。
奥崎謙三
そのあまりにも凄すぎる行動の数々は、時には彼なりの“計算”が見え隠れするのだが、カメラはそれさえも敢えて余すところなく映し取る。
《戦争責任》は一体誰にあるのか?
それを明らかにする為にはどんな行動をもいとわない。
作品の中で、食人事件を自身で追求しながらも、その強烈な個性から印象が薄まってしまっているマイナス面もあるが、様々な問題点をも含め、全ては“俺が正す”とゆうとてつもないパワーに代えてしまう程に、類を見ない《怪物》がここに居る。
暴力と聖なるもの
どこまでも行けるところまで行って、たとえ途中で力尽きて行き倒れても、そこが、神の花の美しく咲く野辺であるなら本望だ…と題名は語る。
本物のテロリストがいったいどんな思考をしているのかと、私は最近、そればかりが気になっていた。
奥崎謙三は、私のそんなあまい「興味」を一蹴した。
革命と死と愛と神を、同時に見せつける。
共同体の維持のために暴力は発生し、なんらかのかたちで殺害が正当化される。
犯罪行為を隠蔽するのに、とりわけ最大の禁忌にまつわる殺害を隠蔽するのに、上官たちは「良心」を傘に何も語らない。
このとき、さてどうなるか、だ。
奥崎謙三は、神の供犠のルールにもとづいた復讐や制裁をおもいつき、当然に暴力を伴うことになる。「知らぬ存ぜぬは許されない!」とキレる。
目的と過程によっては、神は暴力を肯定するのか。人類にとって途方もない難題を残したまま、奥崎謙三は死んだ。
普通ってなに?常識ってなに?そんなもんガソリンぶっかけて火つけちまえ
奥崎謙三という人間は法律にも常識にも捕われず、ただ自分の信念と美意識、倫理感に従って行動する人だ。
その様をカメラに映すことで、一般の人間との乖離が浮き上がり、その異常さに時には苦笑せざる得ない。
しかし、異常なのは社会か奥崎か、両方か?
HIPHOPグループSIMILABの
「普通ってなに?常識ってなに?そんなもんガソリンぶっかけて火つけちまえ」
というリリックを思い出さずにはいられない。
衝撃の作品、戦争の悲惨さを知らなければならない作品
1987年の話題作だから、今から二十年以上も前の作品。ユーロスペースでの興行記録を未だに持っていると、原監督は豪語していました。噂だけは聞いていましたが、とうとう観てしまい、こんな恐ろしい映画があるのだということを再認識しました。今までドキュメントは取っ付き辛いと思っていましたが、今まで見たドキュメントが取っ付き辛かっただけで、がつんと鷲掴みにされ、引きずり回された驚愕の122分でした。この作品の3分の1ぐらいは、目をつぶり考え込まされていました。この作品自体の良し悪しは避けますが、日本の歴史の一面に大岡昇平さんが書いた「野火」のような歴史的な事実があり、それを知る事が平和な日本を築いていく事なんだろうと思い、この重い作品の紹介をしてしまいました。
DVDは発売しているそうです、覚悟して、でも是非、観てください。
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