雪夫人絵図(1950)のレビュー・感想・評価
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美しい映像とやり切れない内容
おひい様の美しさは、冒頭で語られる濱子(久我美子)の言葉から期待で胸がいっぱいになる。しばらくしてやっと姿を現すおひい様=雪(木暮美千代)の嫋々とした美しさは期待を超えた。髪型といい、顔の白さと品の良さといい、着物(紗の着物)といい着つけといい、おひい様で「雪夫人絵図」だった。そんな彼女に勝ち気な言動は似合わないし、強固な意思も期待できない。雪の前で放蕩養子の夫は嫌らしく暴力的で、かといって彼女あっての遊び三昧だから雪を手放すことは絶対にない。雪の心の頼りはお琴の先生だけだが、こいつも「あなたはもっと強くならなくては」と理想論をこねるだけで、雪の為に夫に正面から素面で物言う自信も気概もない男だ。
旧華族が経済的にも文化的にも生活のあり方でも大きな変化にさらされて壊れていくのは段々にというよりあっという間で儚い。おひい様過ぎた雪が可愛そうでならない。そうでない旧華族も居ただろうが、天涯孤独の雪は変な男しか周囲に居なくて食い尽くされてしまった。朝靄の芦ノ湖に雪の帯締めと帯揚げを濱子が投げ入れて投げつける言葉は、冒頭の言葉があるから余計に悲痛に響いた。
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