劇場公開日 1978年4月8日

「松田優作の魅力を爆発させる そのためのストーリー、演出です それが何より優先される、そういう方針の映画だと割り切って観るべきです」最も危険な遊戯 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0松田優作の魅力を爆発させる そのためのストーリー、演出です それが何より優先される、そういう方針の映画だと割り切って観るべきです

2022年2月3日
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鑑賞方法:DVD/BD

1978年4月公開
低予算プログラムピクチャ専門の東映セントラルフィルムの旗揚げ第一作

東映本体との関係は、例えればユニクロとGUみたいな関係みたいなものとでもいいましょうか

本作の監督の村川透は元日活
1960年代は舛田監督などの下で助監督を務め、1972年に初監督作のロマンポルノで注目を集めたのですが日活を退社してしまいます
郷里に帰り数年のブランクの後日テレで「大都会 闘いの日々」で監督として復帰されます
その後東映セントラル、角川映画などで活躍されるのは御承知の通り

その村川透監督自身の、テレビドラマではない、映画の監督としての復帰第1作です

主演は松田優作
松田優作はテレビシリーズ「太陽に吠えろ」のジーパン刑事として1973年7月から主演し人気がブレイクしました
1974年10月の最終回での「なんじゃこりゃ!」の殉職シーンは半世紀も経つのに未だに語り草です

しかし松田優作は「太陽に吠えろ」以降、もう一つ精彩を欠いていました
主演映画も経験していたのですが今ひとつの印象しかないのです

松田優作と村川透監督の出会いは、その1976年1月から放映開始された「大都会」シリーズの時です

松田優作を映画のドル箱スターに押し上げたのは村川透監督です
本作からたったの2年半の間に、村川透監督、松田優作主演のコンビで5作も撮影したのです

最も危険な遊戯(本作)
殺人遊戯
蘇える金狼
処刑遊戯
野獣死すべし

テレビドラマでも、1980年の超有名な「探偵物語」の監督を数話ほど村川透監督が務められています

松田優作の筋肉はブルース・リーを思い出させますが、より厚みがあります
しかも絞られています
現代ならこのような肉体を作り上げる俳優はさほど珍しいことでもないでしょう
誇らしげにトレーニングを撮らせています
しかし当時の日本でここまで見せる筋肉の肉体を作った俳優は他にいませんでした
この筋肉は千葉真一を超えています
その筋肉、そして長い手足、しかも高身長
ぶっきらぼうな暴力的な話し方だけど、どこかおかしみがある雰囲気
今までにない新しい時代のヒーロー像です

この松田優作の魅力を爆発させる
そのためのストーリー、演出です
色々突っ込みどころは満載ですが、全ては松田優作という希有な素材を出し惜しみせずに使い切る
それが何より優先される、そういう方針の映画だと割り切って観るべきだと思います

村川透監督の演出は、かなり洋画ぽい映像です
伝統的な東映ヤクザ映画的な演出に引きずり込まれそうになるのを懸命に踏みとどまっているのが見て取れます
どこかでみたような洋画的構図が多用されます
ダーティハリーの引用が目につきました

従来の東映アクション映画が演歌か歌謡曲なら、本作にはニューミュージック的な趣があるのです
今風に言えばシティポップです

大野雄二の音楽がこの映画には、大変にマッチしておりこの音楽でなければ、せっかくの映像が活きなかったでしょう

エピローグの渋谷道頓堀のストリップ小屋のシーンで流れる音楽にニヤリとします
本作の前年の秋に公開された「人間の証明」のテーマを上手く大野雄二流にアレンジしてある曲でした

このOS劇場、実在のものです
いつの間にかなくなっていました

あき240