柳川堀割物語

劇場公開日:

解説

8年前、福岡県柳川市に起こった柳川暗渠事件を基に人と水とのかかわりあいを実写とアニメーションで描く異色のドキュメンタリー。都市化が進み工場廃液などで汚染・汚濁化した堀割を埋め立てようとする計画が発表されたが、役所の一係長が堀割の果たしてきた歴史的役割を調べ、浄化して人々の生活に役立てようと提案し、実現させる。製作は「天空の城ラピュタ」の監督・宮崎駿、脚本・監督は「セロ弾きのゴーシュ」の高畑勲、撮影は高橋慎二がそれぞれ担当。映画の構成は次のようになっている。プロローグ「川下り」水の街・柳川の四季折々の風景が映される。第一章「堀割は生きている」(水路の点描)コイ、ザリガニ、ヘビ、アシ、ウォーターヒヤシンスなど堀割に凄むさまざまな動植物と人々との暮らし。第二章「吸水場と舟とお濠端」(水路網の特色と利用)堀割はかつて人々の暮らしを支える重要な役割を果たしていた。第三章「柳川三年、肥後三月」(水路のしくみ)川の水を平らな土地に供給する堀割の仕組みは、さながら精密機械のようである。間秦曲「夏珠沙華」を背景に映像詩が展開、難攻不落の柳川城伝説や白秋前夜祭の様子が描かれる。第四章「福岡県令飯用河川取締規則」(水路が清浄だった頃)昔は掘割に蛍が飛び交い、水をすくって飲むこともできた。人々はいかにして水を清く保っていたか。第五章「列島改造の時代」(水路の荒廃)高度経済成長の時代。柳川の掘割も工場廃液などで汚染されヘドロ化し、ハエやカの発生源となった。やがて埋め立て計画が発表される、第六章「海のつくった平野」(堀割のなりたち)人々はどのようにして平野に住みついたか。平野の歴史を描く。第七章「水を“もたせ”る」(水利システムの完成)試行錯誤を繰り返しながら私たちの祖先がつくり上げた堰や桶門のシステムとその役割。第八章「水の一滴は血の一滴」(矢部川水争い)筑後川の水を取り入れる淡水取水をめぐって久留米・柳川両藩の一〇〇年を越す水争い。第九章「直訴と英断」(水路再生にむかって)中小の堀割がコンクリートで固められてしまうことに対して、一人の男が異議を唱えた。第十章「自然を生かし共に生きること」(水土のとつきあい)市民総出で行われる川や土手の定期清掃。冬の風物詩・城堀の“水落ち”と、春の風物詩・子供の“川まつり”。第十一章「住民と行政の連帯」(水路再生のあゆみ)一〇〇回を越える人々の話し合いの結果、市職員と市民が共に堀割の浄化に取り組むことになった。沖ノ端天天宮祭では、オランダ灘子に乗って舟舞台が水路を上がり下りする。エピローグ「川下り」川で憩う人々。再び水の街・柳川の風景が描かれる。(16ミリ)

1987年製作/165分/日本
配給:映画「柳川堀割物語」配給委員会
劇場公開日:1987年8月15日

ストーリー

※本作はドキュメンタリーのためストーリーはありません。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

監督
監修
広松伝
脚本
高畑勲
脚本協力
広松伝
製作
宮崎駿
プロデューサー
久保進
撮影
高橋慎二
主題曲
間宮芳生
録音
鈴木武夫
照明
八巻貢
ネガ編集
高橋辰雄
監督補
宮野隆博
解説
加賀美幸子
国井雅比古
全てのスタッフ・キャストを見る

フォトギャラリー

  • 画像1
  • 画像2
  • 画像3

(C)Studio Ghibli

映画レビュー

4.0そうだ、行こう

2024年2月18日
iPhoneアプリから投稿

40年前の話ではあるが古びれないサステナビリティ論で、複雑なシステムを単純な一点突破で地盤沈下を招いた自治体との比較は、近代批判的な臭いもするが的も得ている。一方では、中性洗剤は環境に優しく改良され、粉石鹸運動は最近聞かないが、どう転んでもそれも全ては批判から始まるものかと思う。現代的には観光資源を残した柳川。塞翁が馬である。
ここぞとでてくるアニメーション解説は分かりやすい。干上がった堀で鯉を掴みどり笑顔溢れるコミュニティ、映し出す自然や風景はアニメ的な切り取りにも思える。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
Kj

3.0ほうつほうつと蛍は飛ぶか? 地方自治とは何かを問う長大作。

2021年9月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

知的

難しい

寝られる

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 1件)
たなかなかなか

5.0高畑勲監督は凄い

2020年11月26日
Androidアプリから投稿

かなり前から存在は知っていたのですが未見でした。
福岡在住なので柳川について最低限知っておくべきかとDVDを購入しました。
高畑監督の凄さは、「太陽の王子ホルスの大冒険」のヒルダが雪原で、生命線であるネックレスを譲るシーンや「未来少年コナン」のラナが立体映像に驚くシーン等で思い知らされていましたが、今回は実写ということで短い映像そのものにも力がある。
しかし、監督が緻密に編み上げた説明シーンがないと、単に郷愁と自然環境運動を取り上げただけの映画になってしまう。
つまりそうではないところが凄いのです。
また、どれだけ素材を撮ったか想像するだけで恐ろしい。
ナレーションがNHKのアナウンサーだったり…本当に怖い(凄い)方です。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
柚子
関連DVD・ブルーレイ情報をもっと見る