劇場公開日 1977年10月29日

「祟りより恐ろしい妖鬼の形相」八つ墓村(1977) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5祟りより恐ろしい妖鬼の形相

2016年11月29日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

興奮

横溝正史ブーム真っ只中の1977年、市川&石坂コンビの東宝版に対して作られた、こちら松竹版。
監督は野村芳太郎、脚本は橋本忍。松本清張ミステリー「砂の器」を手掛けたこのコンビが、今作では横溝ミステリーに挑んだ訳だ。

原作はシリーズでも一、二の知名度。
ある山村の旧家の血縁である事が分かった青年が、村を訪れてから起こる連続殺人、400年前の怨念…。

1996年に市川崑が豊川悦司を迎え映画化し、その時見比べたのが初見。
最初は受け付けなかった。
概ね原作に忠実だった市川版と随分雰囲気違うし、妙に生々しく不気味で、金田一が“寅さん”だし…。
それから暫く敬遠していたが、いつぞや改めて再見したら、他の金田一映像化とは一線を画す作風がこれはこれで面白い。

おどろおどろしい古風ミステリーを、インパクト抜群の怪奇ホラーに。
殺人シーンやお馴染み異様な風体の要蔵さんは並みのホラーも真っ青。
でもそれら以上に、ラストの○○○○○の豹変と形相は小さい頃に見たらトラウマ必至。かく言う自分も衝撃的だった。と同時に何処か、妖しくもあった。
各地でロケしたという鍾乳洞も作品ムードを大いに盛り上げる。

本作の脚色はその後の「八つ墓村」映像化に多大な影響を与えたと言える。
辰弥と美也子が恋に落ちる展開、その辰弥と本来結ばれる典子の未登場、美也子の本来の相手で典子の兄の慎太郎の登場の有無も本作がベースになったと思う。
特に後者は犯人の動機にも繋がるので、各映像化によってオチが異なる場合もしばしば。
他にも有ったり無かったりするエピソードも幾つか。

舞台設定が昭和20年代から現代(1970年代)に。
山村の古めかしいしきたりや落武者の祟りなどは昭和20年代の方がやはりしっくり来る。
が、落武者のラストカットには戦慄。

キャストは東宝版に劣らぬ充実さ。
最初は違和感ありまくりの渥美金田一だが、脇に回って要所要所顔を出しては核心に迫っていく“立ち位置”は最も原作に近い。

内容のまとめ方は96年の市川版、インパクトやムードは本作。
これらが巧く合わされば、最高の「八つ墓村」映像化になると個人的に思うのだが…?

近大