劇場公開日 1978年10月7日

「本作がデビュー作とは思えない薬師丸ひろ子氏の演技力と人を惹きつける瞳の輝きの美しさ、透明な存在感はまさに奇跡的なキャスティング。」野性の証明 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0本作がデビュー作とは思えない薬師丸ひろ子氏の演技力と人を惹きつける瞳の輝きの美しさ、透明な存在感はまさに奇跡的なキャスティング。

2025年4月24日
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鑑賞方法:映画館

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新文芸坐さんにて「完全版 最後の角川春樹」出版記念『日本映画変革の時代・スペクタクル』(2025年4月14日~24日)と題した特集上映。本日2本目は『野性の証明』。

『野性の証明』(1978/143分)
前年の『人間の証明』(1977)をさらに上回る超スペクタクル大作。
血縁のない父娘の親子愛を主軸に前半は集落の集団殺人事件と地方都市を支配するコングロマリットの巨悪な不正を暴く社会派ミステリー、そして後半は自衛隊の特殊部隊や戦車部隊に立ち向かう一大スペクタクルアクションに広がる壮大なストーリーが実に1本で3本分ぐらいの贅沢な内容。

中野良子氏、夏木勲氏、三國連太郎氏、松方弘樹氏、丹波哲郎氏、ハナ肇氏、梅宮辰夫氏と主役級の豪華キャスティングも見どころですが、歴代最高の自衛隊特殊工作隊員という難役を圧倒的なスターの輝きと鍛え抜かれた体躯とキレのある動きで観客を納得させる高倉健氏、そして本作がデビュー作とは思えない薬師丸ひろ子氏の演技力と人を惹きつける瞳の輝きの美しさ、透明な存在感はまさに奇跡的なキャスティング。公開から50年近く経過しても彼女の衝撃的なデビューに匹敵する女優さんは思い当たりませんね。

前半の社会派ミステリーだけでも十分お釣りが来る内容ですが、後半の特殊レンジャー部隊の精鋭22名との死闘、カルフォルニアで撮影された実際の戦車やヘリコプターに立ち向かう味沢岳史(演:高倉健氏)はまさに時代を先取りした『ランボー』、画面に映し出される戦車、ヘリコプターも実物でミニチュア感はまるでなくハリウッド超大作と遜色がない大迫力ですね。

養娘・長井頼子(演:薬師丸ひろ子氏)の死の悲しみを抱きつつ、彼女を抱え数百の敵兵、戦車部隊に単身ピストル一丁で立ち向かうシーンで終わり、味沢の結末を描かないラストは高倉健氏の放つ存在感も相まって実に痺れます。
『プライベート・ライアン』(1998)のトム・ハンクス演じるジョン・H・ミラー大尉のラストも単身ドイツ軍の戦車にピストル一丁で立ち向かいグッときましたね。

またラストシーンに流れる町田義人氏の『戦士の休息』も実に心に響く、これ以上ない名曲。
『人間の証明』同様、初期の角川映画は音楽の使い方が実に効果的で相乗効果を産んでいますね。

矢萩久登
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