森の向う側のレビュー・感想・評価
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雨天曇天
残念ながら劇場公開とVHS化のみでDVD化や配信はされていない。
村上春樹の初期の短編小説『土の中の彼女の小さな犬』(短編集『中国行きのスロウ・ボート』収録)の映画化で、映画の存在はずいぶん前(といってもDVD時代への移行後)に知ったが、わざわざVHSを購入してまではなあ……と思って観てこなかった。でも村上春樹の映画化だし、そういやネットのVHSレンタルがあったなと思い出して、どうせDVD化されることもないだろうしとレンタルして観てみた。
正直出来のほうはあんまり期待してなかったんだが、予想外になかなか面白かった。原作の内容は全く忘れてたが、村上春樹の小説世界の雰囲気を非常に上手く再現していて、80年代アート系日本映画感も濃厚。そういう映画って僕はかなり好きだ。海岸のホテルで出会った男女が延々会話するだけの映画なんだが、75分という短さもあり全然退屈しなかった。流れるピアノ音楽もすごくいい。あえて難点を言えば主演のきたやまおさむって人が強面でいまいちイメージに合わなかったかな。本名は北山修といってミュージシャンなどの活動と共に精神科医・臨床心理学者をしてる人らしい。台詞運びも若干拙いが、その淡々とした感じはむしろ村上小説の登場人物に合ってたかも。もう1人の主演の一色彩子(現・一色采子)という女優さんはすごく良かった。ほとんど2人しか登場人物がいないからこの人の功績は大だろう。監督の野村恵一って人も全然知らなかったが、寡作ながらも結構作品を発表してた人でした。それにしてもずっと雨と曇りと夜のシーンばっかりの映画で(原作がそうだからだけど)、ホテルの一面が全面ガラス張りで雨がずっと打ち付けてるんだが、雨はホースとかで降らせたにしても、曇りの日ばかり選んで撮影したんだろうか? 僕は雨の映画も結構好き。実際の雨はあまり好きではないんだけど。
あんまり面白くて、観終わってから原作を読み返してもう1度観てしまった。多少原作とは変えられてたが、その変えられた部分もいかにも村上春樹っぽい。あるいは他の村上作品から引用してるのかもしれないけど。ま、とにかく面白かったです。
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