「モスラvsデスギドラ」モスラ(1996) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
モスラvsデスギドラ
平成ゴジラvsシリーズが終了した後に作られた平成モスラ3部作。1996年の第1作目。
考えてみれば、あのイグアナ珍獣のせいで99年にゴジラが急遽復活する間この平成モスラ3部作が中継ぎしたので、結局のところ東宝特撮は2004年の『~FINAL WARS』まで続いていた事になる。
本当に久し振りだったのはやはり『シン・ゴジラ』な訳で…って、そんな事はどーでもいいので、久々に鑑賞した本作の感想を。
ゴジラの後は次ぐ人気のあるモスラ…という少々安易な企画。
せっかくなら毎年入れ替わりで、ラドンやキングギドラの単独作も見てみたかった。
怪獣映画でありながら都市破壊シーンは無く、ゴジラシリーズ好きには物足りないかもしれないが、一応怪獣映画のツボを抑えた王道の作りで、良質の怪獣ファンタジーとなっている。
敵怪獣は、“死のギドラ”ことデスギドラ!
封印されていた巨悪怪獣が蘇る。怪獣映画の定番。
モスラは、守る為に闘う。
北海道の工事現場から岩山が突き出す。
デスギドラの復活。
モスラvsデスギドラ。
爆発、大地が裂け、本物の炎など、川北特技監督の派手な特撮演出手腕の見せ所。
寿命僅かの親モスラの窮地に、まだ成長しきっていない子モスラが孵る。
初の親子共闘。
死別のシーンは久し振りに見たら、目頭熱くさせられた。
幼虫モスラは屋久島の樹齢1万年以上の屋久杉で繭を作り、新モスラへ進化。
デスギドラとの最終決戦!
しっかりとTHE怪獣映画。
特筆したいのは、ゴジラシリーズとは違うモスラならではの魅力。
モスラと言えば、ファンタスティックさ。
開幕のモスラが卵を産むシーン。まさか麟粉であんな風に産むとは…!
幼虫モスラが屋久杉の繭から孵るシーンは、初代モスラや『ゴジラvsモスラ』にも負けていない。
闘い終わって、デスギドラによって不毛になった土地を新モスラの力で緑を取り戻す。
環境問題メッセージも込める。
その分、デスギドラが荒々しさとヒールっぷりを全て請け負う。
デスギドラはデザインも含め結構好き。成虫をボロボロにいたぶり、幼虫をいじめ抜き、さすがの“ギドラ族”! ゴジラと対決したら?…と、怪獣映画ファンならつい考えてしまう。なので、新モスラに圧倒的劣勢のクライマックスは何だかちと不憫で…。
怪獣映画としては珍しいファミリー・ムービーにもなっている。
不仲の兄妹。言い争いが絶えない夫婦。
逃げる際の、「お兄ちゃんなんか大嫌い!」「俺だってお前なんか大嫌いだ!」っていうのは、まだ幼い兄妹ならよくあるんだろうなぁ…。
ベタと言ったらベタだが、家族が再び絆を取り戻す。
これまで“小美人”は各々個性が無かったが、エリアス姉妹はしっかり者で大人びた姉モルと快活で感情的な妹ロラ。この初めてのキャラの個性付けはとてもいいと思う。
そして、ベルベラ。“悪の小美人”だが、実はモルとロラの姉。
ラストの台詞が印象的。「いつか必ず、そいつら(人間)があんたたちに災いをもたらすよ」
乗っているガルガルや羽野晶紀のユニーク演も含め、実は案外美味しい役所かも。
個人的に本作の白眉は、LDKでのエリアス姉妹&フェアリーvsベルベラ&ガルガル。
本編班と特撮班が共同で、なかなか苦労しながらも完成したというこの“スモール・バトル”は、ゴジラシリーズでは絶対出来なかった。
今見ると演出や演技(特に子役と山口紗弥加)はチープで、特撮も合成もCGも粗い箇所もある。
また、成虫は『vsモスラ』かはビームを放っていたにせよ、幼虫が腹からビームを放つのは幾ら何でも…。
まあでも、家族愛や北海道の大自然やエンディング曲も美しく、全体的に見易い。
怪獣映画の好編。
3部作では一番好き。