モスラ(1996)のレビュー・感想・評価
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企画意図を深く考えて撮ってないよなあという残念な思いが残るのです
1996年12月公開
ゴジラは前年の12月公開の「ゴジラvsデストロイア」で一旦終了しました
ハリウッドゴジラの公開が予定されていたからです
よってモスラがゴジラがお休みの間、東宝の怪獣映画を背負ってたった訳です
平成ガメラシリーズの第2作は7月の公開ですから、その半年後の事になります
平成ガメラは子供向けにしてはハード過ぎの内容で、大きなお友達向けです
でも本作はモスラのキャラクターもあり、ソフト路線で、どちらかと言うと小学生の女の子をターゲットにしています
美少女戦士セーラームーンは1992年から始まっていて一大ブームとなっていいましたから、これと企画の狙いは関連しているのかも知れません
男女雇用均等法が施行されたのは1986年のこと
その頃生まれた女の子達がセーラームーンや本作を支持したということです
戦うのは男の子だけじゃない、女の子だって!という時代にこの少女達は育った最初の世代だったのです
本編監督は米田興弘
本作が監督デビューです
この人は古くは惑星大戦争、近くは平成ゴジラシリーズのいつくかの助監督とかなされてきています
しかし参加して来た作品一覧をみると、そのキャリアは特撮以外のところに情熱が向いていた人だと思われます
特撮は仕事と割り切った人だと思います
それが言い過ぎなら、怪獣映画なのにオタクの求めるものとは違う方向性を目指そうとする人だと思います
とにかく監督の実績を残して、怪獣映画ではない世界に行きたかった人なのだと思います
怪獣映画を撮りたくて撮っていないのです
何をいいたいかというとハッキリいってつまらない
その一言です
ファンタジーなのか、環境破壊への警告なのか、マスコミ批判なのか
よくわからないのです
少女向けの企画意図だと思うのですが、主人公は少年で不徹底なのです
妹はいるものの結局添え物です
彼女が活躍しないのです
ようは企画意図を深く考えて撮ってないよなあという残念な思いが残るのです
ただ特技監督は川北紘一なので、そこは安定感があります
物語は1961年の「モスラ」のリメイクではなく、リブートです
インファント島らしきものは登場しますが旧作品での設定とは関係ないようです
お約束の小美人は登場します
モスラの歌も新録音で流れます
地球環境の守護神としてモスラは登場します
かって封印した超古代の怪獣デスギドラが環境破壊によって封印が解かれ復活してしまいます
小美人の姉妹はそれを察知して再封印しようとするがという内容です
モスラとデスギドラの戦いは光線が飛び交い大変にきらびやかです
老いたモスラは幼虫の助けを受けるのですが敗れ去ります
海に沈むモスラはやはり悲しいものがあります
親を殺された幼虫は屋久島に向かい樹齢1万年に及ぶ大木の生命力をもらい新生モスラに羽化して最終決戦となります
最終的にデスギドラはまた封印され、戦いによって荒廃した北海道の森林は新生モスラの神秘的な生命力で一瞬で元の豊かな緑の原生林に還ります
という、まあありがちの展開です
その物語展開より一番面白くて映像的にも満足できるのは、小美人の仲間の悪女キャラのベルベラが登場する序盤の家の中のシーンです
デジタル合成が駆使されて楽しいシーンが展開されます
ベルベラの衣装デザインもセンスよく仕上がっており、ミニミニサイズのドラゴンに跨がって飛び回る映像はなかなかのクォリティーがあります
小美人役の小林恵と山口紗弥加よりも、このベルベラ役の羽野晶紀が目立っています
男性陣はテレビレポーター役の萩原流行が目立っていますがあとは空気です
主人公の少年の母親役の高橋ひとみが妙に色気が有りすぎです
それでも結構な興行収入となり、シリーズ化することになります
でも次の第2作の本編監督は別の人に交代する事になります
根岸吉太郎監督の映画の助監督に付くことになったからです
別に根岸監督の弟子でもないのに
そのあと平成モスラ第三作では監督に帰り咲きますが映画はそれが最後になります
最高じゃないか
ゴジラシリーズに登場したモスラは見てきたが、他の怪獣に比べて動きが単調だし、重量感が無いので正直そんなに好きではなかった。特に「ゴジラvsモスラ」のモスラは変な光線を撃ちまくるので嫌いだった。
本作のモスラはそのvsと同じテイストな訳で、観る前は期待していなかったし、観たくなかった。ところがいざ観てみるとどうしたことか、モスラ親子の闘いに熱くなっているのである。不利な状況に不安になり、別れに胸が痛み、復活で嬉しくなり、乱射される変な光線も「いよっ!待ってました!」といった具合。不思議なものだ。
日常に絡んだ身近なテーマやロケーション、エリアスを介したモスラ理解など、構成がとても良かったように思う。子供向けだからなのだろうが、とにかく入り込みやすくて良かった。
特撮はかなり見応えあり、序盤の山が動くシーンから引き込まれた。あそこのリアリティ凄い。そこから派手な光線演出に至るまで、実に多彩。川北特撮の凄さを見た。
GYAO!
モスラvsデスギドラ
平成ゴジラvsシリーズが終了した後に作られた平成モスラ3部作。1996年の第1作目。
考えてみれば、あのイグアナ珍獣のせいで99年にゴジラが急遽復活する間この平成モスラ3部作が中継ぎしたので、結局のところ東宝特撮は2004年の『~FINAL WARS』まで続いていた事になる。
本当に久し振りだったのはやはり『シン・ゴジラ』な訳で…って、そんな事はどーでもいいので、久々に鑑賞した本作の感想を。
ゴジラの後は次ぐ人気のあるモスラ…という少々安易な企画。
せっかくなら毎年入れ替わりで、ラドンやキングギドラの単独作も見てみたかった。
怪獣映画でありながら都市破壊シーンは無く、ゴジラシリーズ好きには物足りないかもしれないが、一応怪獣映画のツボを抑えた王道の作りで、良質の怪獣ファンタジーとなっている。
敵怪獣は、“死のギドラ”ことデスギドラ!
封印されていた巨悪怪獣が蘇る。怪獣映画の定番。
モスラは、守る為に闘う。
北海道の工事現場から岩山が突き出す。
デスギドラの復活。
モスラvsデスギドラ。
爆発、大地が裂け、本物の炎など、川北特技監督の派手な特撮演出手腕の見せ所。
寿命僅かの親モスラの窮地に、まだ成長しきっていない子モスラが孵る。
初の親子共闘。
死別のシーンは久し振りに見たら、目頭熱くさせられた。
幼虫モスラは屋久島の樹齢1万年以上の屋久杉で繭を作り、新モスラへ進化。
デスギドラとの最終決戦!
しっかりとTHE怪獣映画。
特筆したいのは、ゴジラシリーズとは違うモスラならではの魅力。
モスラと言えば、ファンタスティックさ。
開幕のモスラが卵を産むシーン。まさか麟粉であんな風に産むとは…!
幼虫モスラが屋久杉の繭から孵るシーンは、初代モスラや『ゴジラvsモスラ』にも負けていない。
闘い終わって、デスギドラによって不毛になった土地を新モスラの力で緑を取り戻す。
環境問題メッセージも込める。
その分、デスギドラが荒々しさとヒールっぷりを全て請け負う。
デスギドラはデザインも含め結構好き。成虫をボロボロにいたぶり、幼虫をいじめ抜き、さすがの“ギドラ族”! ゴジラと対決したら?…と、怪獣映画ファンならつい考えてしまう。なので、新モスラに圧倒的劣勢のクライマックスは何だかちと不憫で…。
怪獣映画としては珍しいファミリー・ムービーにもなっている。
不仲の兄妹。言い争いが絶えない夫婦。
逃げる際の、「お兄ちゃんなんか大嫌い!」「俺だってお前なんか大嫌いだ!」っていうのは、まだ幼い兄妹ならよくあるんだろうなぁ…。
ベタと言ったらベタだが、家族が再び絆を取り戻す。
これまで“小美人”は各々個性が無かったが、エリアス姉妹はしっかり者で大人びた姉モルと快活で感情的な妹ロラ。この初めてのキャラの個性付けはとてもいいと思う。
そして、ベルベラ。“悪の小美人”だが、実はモルとロラの姉。
ラストの台詞が印象的。「いつか必ず、そいつら(人間)があんたたちに災いをもたらすよ」
乗っているガルガルや羽野晶紀のユニーク演も含め、実は案外美味しい役所かも。
個人的に本作の白眉は、LDKでのエリアス姉妹&フェアリーvsベルベラ&ガルガル。
本編班と特撮班が共同で、なかなか苦労しながらも完成したというこの“スモール・バトル”は、ゴジラシリーズでは絶対出来なかった。
今見ると演出や演技(特に子役と山口紗弥加)はチープで、特撮も合成もCGも粗い箇所もある。
また、成虫は『vsモスラ』かはビームを放っていたにせよ、幼虫が腹からビームを放つのは幾ら何でも…。
まあでも、家族愛や北海道の大自然やエンディング曲も美しく、全体的に見易い。
怪獣映画の好編。
3部作では一番好き。
ファンタジー色濃い目でも特撮は圧巻!
新モスラ三部作第1部。
VHSで鑑賞。
「ゴジラVSデストロイア」でゴジラ・シリーズが一旦の区切りを迎え、ハリウッド版公開までの繋ぎだったのか、35年ぶりにモスラの主演作が製作されました。ゴジラ・シリーズとの差別化を図って、ファンタジー要素を前面に押し出した作風でした。都市破壊シーンはありませんし、自衛隊も登場しませんでした。バトルエリアも森林地帯に限定されていました。
エリアス三姉妹と云う小美人たちがこれまで以上に神秘的要素を強調して描かれ、小型モスラのフェアリーと三姉妹の長女ベルベラが操るガルガルが、主人公の家の中で小さな空中戦を繰り広げるなど、まるでメルヘン。
子供を主役にして、さながら昭和のガメラ・シリーズのような趣きがありました。ジュブナイル的なストーリーが展開されました。大人たちの振りかざすエゴをぶち壊す力の凄まじさは子供ならではだなと思いました(笑)。
モスラが主役なだけに、女の子も観られる特撮映画を目標にしていると見えて、男の子が観ると少々物足りない…のかと云うと、全くそうではないのが驚き桃の木山椒の木。
上記のように都市破壊シーンは無いのですが、デスギドラのビジュアルは抜群にカッコいいし、モスラとデスギドラのバトルを描いた大迫力の川北特撮が堪能出来るから文句無し。
デスギドラが三つ首から放つ爆裂火炎が森を焼き払い、大地を引き裂き、火薬増し増しの大爆発が画面を彩りました。
デスギドラは、柔らかい印象のモスラに対して、これまでの東宝怪獣とは一味違ったクリーチャー感が足されたギドラ系怪獣になっているのが好ポイントでございました。
冒頭、モスラの産卵シーンが描かれました。幼い頃から、モスラはどうやって卵を産んでいるのかとても気になっていましたが、あんな幻想的な感じだったんだなぁ…
衝撃的でした。産んでいるのは産んでいるわけですが、体の中からポンと出て来るわけではないんだなと驚きました(笑)。
幻想的と云えば、デスギドラとの対決に敗れた親モスラの仇を討つため、幼虫が屋久杉の根元に繭を張り自然のパワーを貰って新モスラとなる場面が秀逸でした。なんと美しい。
はじめは敵にこれでもかと云うほどコテンパンにやっつけられてしまうものの、最終的にはモスラがチート的な新しい能力を得て、強敵を圧倒的戦力差で駆逐すると云う図式は本作で成立していました。最後にモスラが勝つと云う潜在的な安心感があるからこそ、気持ち良く観ていられるのかもしれません。
[余談]
本作のテーマは森林破壊。企業だけでなく、日々を暮らす個人も資源を無駄に消費していくことで環境破壊の一旦を担っているのだと突きつける、なかなかに社会派作風。
メディアのエゴも添えて。
[以降の鑑賞記録]
2020/11/05:Netflix
2023/10/22:Blu-ray
※リライト(2020/11/05)
※修正(2023/10/22)
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