明治侠客伝 三代目襲名のレビュー・感想・評価
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極道を襲名する漢
名匠・加藤泰監督1965年の作品。 同監督初の本格任侠映画。 名作と言われるだけあり、確かに非常に良かった! 明治40年の大阪。古くから続く地元のやくざ一家、木屋辰の二代目が祭りの日に刺された。犯人は明白。商売敵の星野建材が敵対する唐沢組と組んで潰しに掛かって来たのだ。 親分がやられて黙っていられねぇ! 殴り込みじゃあ! 待たんかい、おメェら! 木屋辰一家は昔気質のやくざであっても、売られた喧嘩を喧嘩で買わない。 これからの時代、事業で勝負する。 親分は一命を取り留めるも、決定的証拠は無く。 遊び呆けている二代目の一人息子・春夫は憤慨。 一家の信頼厚い若衆・浅次郎は堪え忍ぶしかなかった…。 ある日浅次郎は遊郭で、唐沢に身請けされそうになった娼妓・初栄を助け、情熱的な恋に落ちる。 が、唐沢組と因縁深くなり…。 そして遂に、親分が死去。それ以前にも悪質な嫌がらせをしてきた星野×唐沢のそれはさらに激化させていき…。 よくあるステレオタイプな任侠アクションではなく、情感たっぷりの任侠ドラマだと感じた。 一応星野建材は堅気の会社、木屋辰はやくざ一家。それ故の理不尽。時々、逆に見えてくる。 親分亡き後、三代目に選ばれたのは、実子の春夫ではなく浅次郎。これには血気盛んな春夫は納得いかず、葬式の場で大揉め。すると、普段穏やかな浅次郎がやり返す。これも全て春夫を思って。また、ある決断をする。それに心打たれ、春夫もようやく目が醒め…。ここ、一番じ~んと来た。 新たな門出。が、またまた星野×唐沢の凶行妨害が…。 漢気溢れる鶴田浩二に惚れ惚れ。 津川雅彦も駄目若造から立派な跡継ぎへ、さすがの巧演。 演者で特筆は、木屋辰に客人としてやって来た渡世人役の藤山寛美。最初はちと他人の家の事情に土足で上がり込む感あったが、ある修羅場を助けてからは頼りになり、命を張った終盤のあるシーンはグッとさせられた。 鶴田演じる浅次郎と藤純子演じる初栄のラブストーリーでもある。若き藤(現・富司純子)、川辺でのシーンなど、美しい。 しかし両想いになってから、初栄の浅次郎へのアプローチが激しく、重い。今で言うと、肉食系…? 高倉健が出演した往年の任侠映画でもそう。 堪え忍び、堪え忍び、堪え忍び… 遂に怒りを爆発させる! 最後はこうでなきゃ! が、そこに痛快さは無い。 極道を襲名した漢は、哀しみを決して語らず…。
上方の喜劇王藤原寛美、その芸達者の笑いと人情のスパイスが加わってこそ、本作は最高の娯楽作品になったのだと思います
やくざ映画 日本映画の一ジャンルとして、なくてはならない存在です その中でもやはり東映のやくざ映画が飛び抜けています 1963年の人生劇場 飛車角に始まり、1965年9月公開の本作、同年10月の高倉健主演の昭和残侠伝はジャンルとして確立した中の一つの頂点と言えると思います 日本人の心の琴線に触れる要素がこれでもかと散りばめられています 料理でいえば、幕の内弁当?いや豪勢なお節料理でしょう! 心服する器の大きい親分 目の覚めるぐらい立派な大親分 卑怯で外道なライバル 意地らしくも可憐な女心をみせる美しいヒロイン こらえてこらえて最後には意地と筋を通す主人公 言ってみればこのパターンに過ぎないのかも知れません しかし何度観ても痺れるのは日本人の心の成り立ちに深く結びついている筋書きなのでしょう 本作も突き詰めればパターン通りです しかしその満足感のレベルが著しく高いのです 鶴田浩二、藤純子、嵐寛寿郎、丹波哲郎 悪役ぶりが素晴らしい安部徹 どれもこれも配役がピタリとはまっています そこに上方の喜劇王、藤山寛美がコメディリリーフだけでなく、見事な演技の冴えをみせて大いに盛り上げています この時期、彼は松竹新喜劇を莫大な借金で首になり、東映の岡田社長の世話で映画出演を始めた頃だったのです この芸達者の笑いと人情のスパイスが加わってこそ、本作は最高の娯楽作品になったのだと思います
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