武蔵野夫人

劇場公開日:1951年9月14日

解説

製作は「舞姫(1951)」の児井英生で、大岡昇平の原作から福田恒存が潤色して「お遊さま」の依田義賢が脚色したものである、演出は「お遊さま」の溝口健二で撮影は「袴だれ保輔」の玉井正夫が担当している。出演者の主なものは「夜の未亡人」の田中絹代「せきれいの曲」の轟夕起子に山村聡、「盜まれた恋」の森雅之に片山明彦、大谷伶子、進藤英太郎など。

1951年製作/92分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1951年9月14日

あらすじ

武蔵野の高台に住む道子と夫の秋山のもとへ道子の従弟勉が復員してくる。勉は道子と共に住むことを望んだが、嫉妬深い秋山は彼をアパートに住まわせる。勉の生活が荒れることを心配した道子は向かいに住む従兄の妻富子の提案で、彼に富子の娘雪子の家庭教師をさせることにする。武蔵野の小道を一緒に散策するうちに道子と勉は互いに男女として意識しあうようになった。しかしあけすけな富子はそれを秋山に暴露してしまい、秋山はそれを許す代わり富子と関係を持つようになる。ある時嵐にあった道子と勉はホテルで一夜を過ごすが、道子は勉の激情を優しくなだめるのだった。富子と旅に出たものの捨てられた秋山が家に戻ってみると、道子は静かに息を引き取っていた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.0観なくて良いです

2025年8月18日
PCから投稿

これは当時の日本においては、一つの典型的なモダンなテーマであったでしょう。しかし、時空を超えて現在にまで響いてくるものは感じられませんでした。ただ、古いだけ。溝口健二もきっとこれは取りたい作品ではなくて、会社に取らされた作品だと思うな。
ただ、中盤までの何とも言えないエロさが良かった。プラトニックなエロさと、その逆の隣の奥さんの肉感的なエロさ。それの対比が面白かったな。あるいはモンタージュというべきか。
轟夕起子はとてもスタイルが良い。それに、現代的な美人で。この女優さんは時空を超えて今でもエロい。 彼女をもっと見たい人は「洲崎パラダイス 赤信号」を見ると良いだろう。こちらの作品は、名作で。時空を超えて伝わってくるものがある。いやぁ、女優って本当にいいものですね。さようなら。

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わしのネタを映画化せいや!

3.5武蔵野の原風景を舞台に展開する、愛とエゴと享楽主義の恋愛悲劇

2021年10月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

武蔵野台地に歴史を持つ家柄のひとり娘秋山道子と従弟宮地勉との恋愛を、美しい背景の中で描いた個性的映画。フランス文学に傾倒する大岡昇平の自由恋愛に基づいた先鋭的な台詞が日本映画では珍しく、当時としてはベストセラー小説の映画化以上の大胆な試みを感じる。それを田中絹代、森雅之、轟夕起子、山村聡のベテラン俳優が演じる興味深さに、戦前の「路傍の石」などの名子役片山明彦の青年役が加わる。

道子は、終戦直前に両親を亡くして、宮地家をひとりで守らなければならない。夫秋山忠雄はスタンダールの研究家兼理論家で大学で講師をするインテリではあるが、妻道子へ対する愛情は確かなものではない。姦通に拘る自由論者を標榜していて、倫理に厳しい男性ではなく正義感も薄い。この夫婦に近所に住む道子の従兄大野夫妻が絡んで、場面展開はとてもいい。会話劇の舞台を観るような面白さがある。そこへ出征以来行方不明だった宮地勉が突然現れて、勉の世話をする道子と忠雄の仲がより不安定化する。道子は同居を望んだが、嫉妬に駆られた忠雄は勉を東京のアパートに紹介し離れさせる。このようなところのインテリ男の弱い精神面の嫌らしさが出ていて結構面白い。森雅之の演技も流石に良く、役柄になり切っている。
それでも学校生活や女遊びの乱れを危惧して、大野家の家庭教師として勉は武蔵野に呼び戻される。ここからドラマは進展していくのだが、道子と勉の接近は解るものの、忠雄は大野夫人富子へ近付いていくのだ。この森雅之と轟由起子の関係が、溝口監督の演出で通俗性を突き破る面白さがある。そして、映画は武蔵野の自然の風景や美しい景色を捉えていく。道子と勉が静かに歩いていくだけで、その内に秘めた思いを暗示させる映像美だった。

道子と勉の間に富子が介入したり、二人が村山貯水池に出かけて嵐に会いホテルで夜を一緒に過ごす場面など、フランス映画のような趣の溝口映画。原作の持つ自由な恋愛観が理由ではあるだろう。それでも予期しない出来事に翻弄される女と男を見詰める視点に、溝口らしい冷静で確かな演出力はあった。純粋に家を守ろうとする古風な道子と武蔵野台地と道子を愛する勉の、血縁と年齢差を越えた愛が、親族のエゴと享楽主義によって悲劇に終わるドラマ。愛が善とすれば、この善と悪は面白く彩られていた。

  1978年 7月14日  フィルムセンター

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Gustav

3.5作り手が原作を十分に料理できていない様な

2020年11月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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Kazu Ann

4.0溝口監督を世界のミゾクチに押し上げた秘密

2020年5月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

田中絹代42歳
しかしとてつもなく美しい
単なる美形なら、もっと綺麗な女優はいくらだっている
彼女の美貌は現代的でも群を抜く整い方でもない
それでも美しいのです

152センチの小柄で華奢
体重は40キロもあるかどうか
男性にどうしても庇護したい気持ちを起こさせます

小柄な女優なら、久我美子だって美しく清純で小さな体つきです

でも白い肌、聡明な顔つき、背筋の伸びた佇まい
気品、気高さ、軽薄を嫌う精神、落ち着き方
これは田中絹代だけにしか無いものです
令和に至るまで他に見当たりません

だから、なんとしても手に入れたい
彼女の魅力を理解できる男性はそう思うのは当然だと思います

本作はあくまで彼女を美しく撮るためだけに作られたのように思われてなりません

溝口監督が彼女を撮った1948年の夜の女たちで汚れ役に挑戦させたのとは正反対の態度です

田中絹代のファンならば、その溝口監督の彼女に恋い焦がれる視線にすぐに気付かされると思います

本作前年の米国からの帰国パレードで顰蹙を買ってスランプに陥った彼女を救い出したい
力になりたい、守ってあげたい
そんな視線が痛いほど伝わって来ます

この彼女への情熱が溝口監督を世界のミゾクチに押し上げた秘密なのかも知れません

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あき240

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