宮本武蔵 一乗寺の決斗のレビュー・感想・評価
全3件を表示
宮本武蔵・視覚化の決定版④
内田吐夢監督の重厚な演出と、中村錦之助さんの熱演とダイナミックな殺陣で魅せる映像版・宮本武蔵の決定版‼️1年に1作ずつの5部作の第4部。琵琶のゆるみやしなりを今の武蔵にたとえて諭す吉野太夫役の岩崎加根子さんの存在感や、一乗寺に向かう武蔵とお通が再会、お互いの想いを伝え合うシーンなんかホント美しいですね。そしてモノクロ画面に切り替わって展開される武蔵対73名の吉岡一門の一乗寺下り松での凄まじい決闘シーン‼️5部作の最大の見せ場のみならず、黒澤明監督の「七人の侍」と並ぶ最高のチャンバラシーンだと思います。
60年代安保闘争への鎮魂歌という、本シリーズの真のテーマに回帰
力作です 物凄い映像も有ります しかし、流石に飽きて来た感があります とはいえ、クライマックスの一乗寺下り松の73人対一人の決闘シーンは最高の見物です 大立ち回りの殺陣はもちろんですが、撮影が凄い アメリカの夜と呼ばれるフィルター式の明度彩度を落として夜間を表現する手法のようでどうも違うようです 何かしらフィルムの現像段階での特殊な手法のように思います 夜が明けて、辺りが白みだす様がその特異な手法で見事に表現されています、太陽が昇るであろう方向の空だけが明るく、次第に明度が上がって行くのです 彩度は変わらず極端に落としたままですが、すべてが終わり逃げ切った武蔵が仰向きに倒れ込んでいる次のシーンでは周囲のシダの葉が朝日であろう真っ赤な色彩に染まっており劇的な効果を上げています 敢えてこのような色彩の無い映像とすることによって、殺戮の凄惨さを抑えつつ、この殺戮の無意味さ、空虚さを表現しようとしたものではないでしょうか この決闘シーンでの独特の白黒というべき映像画質が翌年の飢餓海峡のW106方式と呼ばれる特異な映像画質に繋がっていくのかも知れません 物語はいよいよ佳境 吾は正しい そう頑なに果てしなく一直線な武道に対する武蔵の考えが、遂に壁にぶち当たるところで終わります ラストシーンでは平和を希求して武蔵は観音菩薩像を拙いなりに彫り上げます しかし彼の希求している道は阿修羅の道なのです その矛盾がはっきりとしてきたのです これこそが宮本武蔵シリーズのテーマです 60年代安保闘争、全学連運動に敗れ、それでもなお、吾は正しいと頑なに主張する若者へのメッセージこそが本シリーズの真のテーマなのです とすると、この一乗寺下り松の決闘とは、国会前デモそのものを描いていたのかも知れません 第二作、第三作とこのテーマはなりを潜めて単なる剣豪映画でしたが、ようやく真のテーマに回帰してきた訳です しかし、1961年から年一作ペースの製作できて、本作は1964年の正月映画です 最早60年安保闘争も昔話、東京オリンピック、高度成長の時代です こんなメッセージを観客はもう誰も望んでいなかったことでしょう ならば、本作は単なる時代劇大作に過ぎなくなってしまいます こうしたことも本シリーズの次作完結編の製作が怪しい雲行きになるのもむべないことです さて、弟子の城太郎少年は前作で柳生屋敷に置いてけぼりをくらいますが、本作で偶然京で再会します しかしまた、郭から高い柵から脱出して、武蔵から折しも聞こえてきた城太郎の父、青木丹左衛門が吹いているてまあろう尺八を追えと指示されたまま置いてけぼりをくらいます 次作完結編には登場せず、これにて退場となります 果たして彼は父と再会できたのかどうかは定かにはされません お通さんにしろ、城太郎にしろ、少し宮本武蔵は冷たすぎです 伝七朗と決闘する蓮華王院の裏手とは、映像を観ての通り三十三間堂です 京都国立博物館のすぐ近くです 一乗寺下り松は現存してますが、本作のような大木ではありません 松の木の脇に大きな石碑が決闘の地を知らせています 松の前には謂われを書いた高札もあります 叡山電鉄で出町柳駅から三つ目の一乗寺駅下車し東に徒歩10分ほどです そこから南に徒歩10分歩けば、こってりラーメンで全国に有名な天下一品ラーメン総本店もあります
シリーズも佳境に突入
シリーズもいよいよ佳境に突入する第4弾。
名門の2代目を倒すも、後悔の念を抱く武蔵。
新たな理解者を得て、人間形成に更なる磨きをかける。
一方、地に落ちた沽券を晴らさんとする吉岡一門。しかし、伝七郎とて武蔵の相手とは成らず無念の結果に。
こうなれば武蔵打倒の為…と、どんな卑怯な手段をも選ばず、結果にこだわる。
映画は、武蔵と関わりを持つ出演者ご一行を、ほぼ前半部分に紹介し、以後吉岡一門側からの思惑を中心に進む。
その為に、人の死の儚さと、世の中の無常との矛盾を考える原作の理念とは、少しずつかけ離れて行く。
かくして全面対決の時来たる。
周到な罠も、武蔵の“死中に喝!”の精神が打ち砕く。
この際、死闘をモノクロにて描写。凄惨な画を用いずに、水墨画の如く描く。
武蔵が漏らす「ハア!ハア!」と言う、枯渇した言葉にならぬ喘ぎ声がその凄さを物語る。そして…。
小次郎が見守った戦いの果てに、武蔵に残されたのは中傷だけであった。
いよいよ小次郎との運命の戦いが近づいて行く。
全3件を表示