劇場公開日 1961年5月27日

宮本武蔵(1961)のレビュー・感想・評価

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5.0宮本武蔵・視覚化の決定版①

2023年5月20日
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泣ける

楽しい

興奮

内田吐夢監督の重厚な演出と、中村錦之助さんの熱演とダイナミックな殺陣で魅せる映像版・宮本武蔵の決定版‼️1年に1作ずつの5部作の第1部。1番の見どころは武蔵が千年杉に吊るされるシーンで、武蔵と三國連太郎さん扮する沢庵との問答が強く心に残る、武蔵の人間形成において重要なシーンだと思います。

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活動写真愛好家

4.0錦之助、浪花、三國の全能振りが見事

2022年4月29日
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鑑賞方法:映画館

興奮

映画チケットが4月末までだったので、何を観るか迷っていたら、動画サイトで本作をおすすめしていたので渡りに船と鑑賞。真田好き・柳生好きなので錦之助さんはネット動画やCSなどでお見かけしたことはあるのだが、私の生前の映画を映画館で観るのは初めてかな。カラーか白黒かと思っていたらデジタルリマスター版で鮮明なカラー。

錦之助さんは評判は聞いていたが、イメージ通りで、今は時代劇が廃れたこともあるが、現在は似たタイプはいない。野盗の情婦として木暮実千代さん、本位田又八の母(おばば)として浪花千栄子さんと伝説の女優が出てくるのだが、木暮さんはセクシーで美しさ・技量共に素晴らしい。『おちょやん』は見ていなかったが、浪花千栄子さんはエンターテナーとして申し分なく、見てないでいうのも何ですが、朝ドラを見ていた人は観るべきだと思う。後半は沢庵和尚役の三國連太郎さんが持ち味を発揮、沢庵の企図で武蔵が大杉に吊り下げられるシーンでの遣り取りは大いに見応えがある。特に錦之助さんと、浪花千栄子さんと三國さんの全能振りは見事でオールスター的なアツい作品となっている。

武蔵がお通さんに助けられたあと、風見章子さん扮する姉が囚われていそうな、野外の牢を探索するシーンが出てくるのだが、今ならCGで簡単に描けるが、当時はセットを構築するのに大変な労苦を費やしたんだろうなと想像。時代劇が隆盛を誇っていた様相の一端が覗えた。結構短期間で5部作放映されるので、機会があれば続きも観てみたい。

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bluewavesky

3.0壮大なる一代記のプロローグ。

2020年8月25日
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鑑賞方法:DVD/BD

知的

吉川氏の『宮本武蔵』を原作として、5本に分けて撮った、その第一作目。
 『バカボンド』等でなじみのある方もいらっしゃる方にとっては興味深い章であると思うが、一般的にイメージする剣豪・宮本武蔵の姿はここにない。
 それどころか、拝一刀や『柳生一族の陰謀』で知る萬屋錦之介氏の姿もない(ラストに面影があるか…)
 映像的な工夫も、昨今の凝ったものを見てしまうと、終盤亡霊が出てくるシーンは凝っているが、それ以外は、あんな大杉のあるお寺を良く見つけてきたなとかくらいで”普通”に思えてしまう。
 なので、獣みたいな武蔵(タケゾウ)が、わあわあ言って村がかき回されて、時代劇でおなじみの武士が出てきて食傷、くらいの印象でスルーしてしまいそうになる。

 だが、その”普通”に見えるセットがすごい。時代考証を隅々までしているのではないかと思える造り。花祭り。仏壇。家の造り。着物の着方…。(歴史に詳しくないのであくまで印象)

 そして、出色は三國氏の演技。
 私的には”顔の濃い一族”。背が高く、足も長い。なので歩く姿は、私がイメージする和尚っぽくない。なのだが、最初の第一声は笠智衆氏の”御前様”をイメージしてしまった。印を結ぶ姿、あくらから立ち上がる所作。すべてが美しい。
 飄々として、のらりひょんの風体をしながら、不動明王的な様相も見せる。「仏に逢うては仏を殺し…」という禅の言葉があるが、そのイメージ。何を考えているのかわからないが、芯(信)があり、軽妙に人を煙に巻いていく。だが、不思議と慈愛を感じられて、わざと人を陥れるようなことはしないだろうと思えてしまう。
 なので、三國氏演じる和尚を疑う方ータケゾウ・おばば・青木…-の、己の欲まみれになっている姿が、浮かび上がってくる不思議さ。
 こんな風に演じられるなんて!

 それに対する萬屋氏(この当時はまだ中村氏)。
 上記のような剣豪のイメージで観ると、へっぴり腰で、棒切れ振り回しているだけで、形もできておらず、なんだこれと思ってしまう。声も調子はずれ。時折、裏声のような叫び声をあげる。
 だが、演じているのは、腕っぷしが強いだけの、剣道も習ったことのない青年。幾つの設定だろう?20歳前後か?もっと若い設定かもしれない。そう考えると、声の出し方から、棒の振り回し方から、何から何まで、役に合わせて作りこんでいる。惜しむらくは、萬屋氏この映画公開時の実年齢が29歳。アップになると、やはり青二才には見えないところか。
 いろいろな評を読むと、萬屋氏にとって、この連作映画は転換期だったらしく、武蔵の成長とともに、萬屋氏の演技の成長も観られるという。

年齢で言うなら、木村氏もすごい。映画公開時38歳だが、モラトリアムの青年に見える…!

”強さ”を追い求めた男・宮本武蔵。それはのちに『五輪書』に結実する。兵法書と聞くが、人生の指南書として挙げる人もいる。

その生涯が今ここに始まる。

5作全編通して鑑賞した後だと、評価が変わるかもしれない。そんな予感を感じさせる第1作であった。

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とみいじょん

3.060年安保闘争世代の鎮魂歌

2019年11月12日
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鑑賞方法:DVD/BD

60年安保闘争の翌年の1961年公開ということに着目して観るべきだ
60年安保闘争世代の鎮魂歌として、当時の若者達の胸に響くようにとの意図で製作されていると強く感じる

本作は5部作の1作目として製作されている
原作は文庫本にして8巻もの分量のある大長編で、忠臣蔵並みの超人気小説なのだから5部構成で企画されても納得はできるのだが、それでも、それほどの長さが本当に必要だったのか?
一体何故5部まで膨らむのか?という疑問がまず浮かぶ

その疑問の答えは、結局のところ監督の内田吐夢と脚本の鈴木尚之が撮りたかったのはこの第一部だけだったのではないかということだ

本作を単体の映画として撮りたい
となると、この長大な物語を序盤にあたる部分だけで一本の映画にしてしまえば、構成のバランス上全5部となってしまう

それでも仕方ない
メインの剣豪としての物語は、ハッキリいってついだ、それぐらいの気持ちだったのではないだろうか

そもそもこの第一作の本作では剣豪の時代劇であるにも関わらず一切の殺陣がないのだ

国論を二分した60年安保闘争が敗北したことを天下分け目の関ヶ原の合戦に見立てて、宮本武蔵を学生運動崩れの若者になぞらえてある

沢庵和尚に諭される言葉の数々は、宮本武蔵に向けているようで、実は観客席の若者達に向けられているのだ

天下分け目の戦いに敗れ戦のない世の中になった
そのことにうちしがれたり、むやみやたらに暴れたりしてそんなことで世の中が変わるものか、千年杉のように微動だにせぬわ!

村民から敵視されるのには、武蔵自身の内面に問題があるのだ

頑健な身体と優秀なる血筋を誇れども、それを活かすことを知らず、辺り構わず暴れまわるだけならば、ただの獣とかわりはしないのだ

今は和漢の書を読み力を蓄える時だ
どんなに良い血筋でも磨かなければ腐って獣の血になってしまう

それが本作のメッセージだったのだと思う
それを言う為だけにこの5部構想がぶち上げられたのだと思う

そのメッセージが当時の若者達の胸を打ったのだと思う

浪速千恵子や、特に三國連太郎の演技はみものだ
中村錦之助の若い迸るエネルギーは過剰なほど

しかし本作だけでは映画としての物語性もカタルシスもたいしてない
当時の若者が、くすぶり続ける情熱をどう鎮めたらよいのかと挫折感を胸にかかえていたからこそ本作の意義や価値というものが胸に届いたのでは無かろうか

21世紀に生きる私達が、そのような背景を知らずして見ても、果たして感動を得られるのかは疑問だ

60年安保闘争の世代はこのような建設的に挫折を止揚する鎮魂歌の映画があった
一方、70年安保闘争世代はどうか?
このような未来に向けた建設的な鎮魂の映画はあったのだろうか?
残念なことに思い当たらないのだ
傷を舐め合うようなものしか見当たらないのだ

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あき240