劇場公開日 1997年9月27日

「伊丹監督らしく自身の経験をユーモラスにエンターテイメント作品に昇華させているのは流石です。」マルタイの女 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5伊丹監督らしく自身の経験をユーモラスにエンターテイメント作品に昇華させているのは流石です。

2025年4月27日
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2月21日(金)からTOHOシネマズ日比谷さんで開催されている「日本映画専門チャンネル presents 伊丹十三 4K映画祭」(監督作品を毎週1作品、計10作品上映)も遂にラスト!そして完走!最後の作品は『マルタイの女』。

『マルタイの女』(1997/131分)
伊丹十三監督10作品目にして遺作。
『ミンボーの女』(1992)公開直後に同作を快く思わない組関係者に襲撃された際に自らが警察の警護対象者(=マルタイ)になった経験から着想された作品。

すでに海外ではケビン・コスナー主演『ボディガード』(1992)、クリント・イーストウッド主演『ザ・シークレット・サービス』(1993)などの傑作が公開されていましたが、伊丹監督らしく自身の経験をユーモラスにエンターテイメント作品に昇華させているのは流石です。

主人公・磯野ビワコ(演:宮本信子氏)の命を狙う側に当時社会問題なっていた新興宗教を選ぶところが社会派監督の真価を発揮、実に攻めていますね。

本作では三谷幸喜氏が初期段階に脚本に参加。
伊丹組の常連に加えて三谷組の常連、西村雅彦氏、近藤芳正氏らが新たにキャスティングされているのも新鮮ですが、伊丹監督からちょうどバトンを受け継ぐかたちで同年『ラヂオの時間』(1997)で三谷氏が監督デビューしたのは運命的なものを感じますね。

残念ながら本作が監督の遺作。
監督デビューの『お葬式』(1984年)から本作までの約10年は、バブル景気前の高揚感にはじまり、狂乱のバブル好景気に踊り、バブルが弾けて急速に日本が停滞した超激動期。
常に独自の感性で「お葬式」「グルメ(ラーメン)」「マルサ」など先見性、メッセージ性がある題材を時代の空気に合わせて選好、演出方法など試行錯誤しながら、年に1本ペースで製作、いずれもがヒット若しくは世間の興味を引いていたのは、尊敬の念を覚えます。

もし監督が今でもご存命でしたら果たしてどんな作品を撮り続けていたでしょうか。
数多の社会問題に鋭く迫りつつ、娯楽作品として分かりやすく表現、耳目を集めて作品を通じて世の中が良い方向に向かうことが多々あったかもしれませんね。

矢萩久登
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