墨東綺譚のレビュー・感想・評価
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生々しい濡れ場に🫣
先週の金曜日(2024/6/21)に観ました。
今は亡き津川雅彦主演の作家のおっさんが主人公の同名の小説(濹東綺譚)が原作の様です。予備知識ゼロで観ました。
物書きのおっさんは色好きで、小間使いと思しき20代前半の女の子に手を出すだけでは飽き足らず、毎日の様に出歩いては色んな女と遊んで過ごしています。
所帯を持つ事を望まないおっさんがこの女と決める女は、ある日途端に会えなくなります。
遂に結婚の約束をした女には、怖気付いて約束の日時に会いに行かず、空襲で家を失い、浮浪者の様になり、すれ違っても気づいてもらえない程に落ちぶれてしまうお話です。面白いのは裏切ったおっさんはどん底まで落ちぶれて、裏切られた女は図太く逞しく生きている点です。因果応報とでも言いましょうか。
なんだかんだでしっかりと観る事ができました。
何といってもこの作品は濡れ場が多く、ひとりで観ていても目のやり場に困る場面の目白押しでした。
局部のボカシは余計にいかがわしさを感じさせるので、なくても良かったと思います。本来、男女の身体はいかがわしいものではない筈です。
本作は1992年の映画ですが、街並みの再現度はかなり高く感じられ、住み心地の悪さや、近隣とのいざこざなども映画に出ていない様な場面も容易に想像できました。
とはいえ他の方も仰られている通り、序盤の濡れ場の汽車がシュッポッポー!と同時に男女が果てる場面は、ギャグにしか観られませんでした😅
タイトルなし
津川雅彦、乙羽信子が良かった。
杉村春子も出ていてびっくり。
荷風その人より、娼妓や客の人物がいきいきと描かれていた。
墨田ユキの白粉を塗った白い肌と林光の音楽が抜群に良かった。
1つ気になったのは序盤でセックス中に挿入される蒸気機関車が走るカット、あまりにもあんまりだ…。(観るの辞めようかしらと少し思った笑)
荷風の時代の文人達がかつて付き合っていたり文通していたり、ストーキーングしていたりした市井の女性が今になって相手が有名な小説家だったと分かり、地元紙のちょっとした記事になったりすることが00年代頃まではチラホラあったなあなどと映画のラストを見て思い出した。
中途半端な反戦脚色はあるものの濃密な人間的魅力がいい
永井荷風に関しては金子光晴の酷評や、三島由紀夫の罵倒、江藤淳の詳細な分析的厭味を読んだことがあるが、それでも小生は原作「墨東綺譚」や「断腸亭日乗」の様々な断片が好きだ。というより、きちんと読んだのがそれくらいだから、嫌いにならずにいられるのかもしれない。
さて、映画作品はどうか。これは原作とはまったく別ものの観を呈している。原作にある寂寥たる心象風景はどこかに消し飛び、やたら元気にカフェや私娼街を歩き回って快楽に耽りながら、国家権力を批判したり、女給に脅されたりする、愉快で金持ちで有名人の中年男と、彼を取り巻く女たちとの関係が描かれている。
そして気づかされるのは、本作品は「墨東奇譚」の映画化ではなく、反骨文士・荷風の後半生を軸に、「墨東奇譚」のフィクションを織り交ぜたものだということである。その意味では、小説の世界を期待する向きには不評だろう。
しかし、閨中秘技絶妙な八神康子、結婚の約束までする娼婦墨田ユキ、夜の世話まで含めた意味での家政婦瀬尾智美、抱かせたうえで法外な賠償を強請り取ろうとする女給宮崎美子、街娼窟の経営者音羽信子…役者たちは生き生きとした、色気のある演技で私娼街の男と女、女経営者の世界を描いていて、そこには何か濃密な人間的魅力が漂っている。津川雅彦や音羽信子、墨田ユキの好演が光る。
ところで、音羽の息子に赤紙が来たので、墨田が筆下ろしをしてあげるとかの話は「墨東奇譚」にあるわけがない。これは監督新藤兼人とATG流の、常套的な「反戦的脚色」であり、ほとんど無意味である。よせばいいのにと思うが、永井も小説中に反権力的コメントがしょっちゅう入るような作家だったらしいから、文句もいえないか。
このような中途半端な反戦的脚色はやめて、反骨と好色以外の荷風の人間性をもっと多面的に取り上げれば、さぞ素晴らしい映画になったろうにと惜しまれる。
さらっと学徒出陣の映像。これがいい
給仕の女、宮崎淑子がいい。荷風と関係を持っても金を堂々と請求する。警察沙汰になると、売春行為になるぞ!と脅される始末。
その後は荷風の女遍歴みたいなストーリーだが娼家のユキにはまってからは、そこの宿での物語となる。
学徒出陣のドキュメント映像。女を知らない学生さんに体をゆだねるユキ。明治神宮で万歳三唱する姿はこの映画に関係ないといえば関係ないが、これが新藤兼人らしいところ。終盤になると東京大空襲を受け、焼野原をさまよう荷風。終戦となった浅草で、置屋の女将(音羽信子)とユキ(墨田ユキ)が「あの人違う?」などとヨタヨタと歩く荷風を見て噂する。
晩年は寂しい死に方。よほど吉原が好きだったんだなぁ・・と感ずる辞世の句。
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