「ジブリの中では主張がはっきりしている作品」平成狸合戦ぽんぽこ movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
ジブリの中では主張がはっきりしている作品
自然破壊や都市開発に対してはっきりと懐疑的な主張を打ち出しつつ、その理由や背景を当事者の動物達の目線で、観ている者が共感できるように伝える作品。
社会的なテーマを取り扱いながらも、俯瞰ではなく個々のタヌキの人生や家族の事情が描かれており、動物相手だと想像力がわかない人でも、取り返しのつかない事をしている実感が湧く。
「タヌキが“消えてなくなった”ってやめて貰えませんか?化けて消えられるタヌキはまだ良いんです、ウサギは?」とカメラ目線で投げかけてくるタヌキにはっとする。
作品に浸る中でタヌキの心情を想うとほろりとするが、人間の暮らしからうまく生きる術を得られない、非雑食のウサギや他の動物達はタヌキより更に大変な思いをしている。言い出せばキリがなく、ありやとんぼのためにでも住居建設をやめねばとなると極端な気がするが、どこか小さな事でも一か所人工的な手を加えれば、それは「生態系を壊す」に等しいのだと自覚をさせられる。
故郷を襲われ、仲間が命を落とし、、それは過激派が出てきても仕方がない。国土を巡る紛争と全く同じだが、片方が圧倒的不利な状況。
それでも、変幻へんげを武器に、互角でないにしろ爪痕を残せたタヌキ達の団結力と工夫には頭が下がる。
多摩ニュータウン、相模原市藤野町、町田、、実在する地名が沢山出てきて当事者意識を持ったあとの、化けられない並のタヌキ達が宝船に乗り死出の旅へと集団自決する描写。歌とともに明るく描かれているが、人間界に化けて馴染めるタヌキすら現実には存在しないとしたら??人間は自分達の快適な暮らしのために、ただ生き物を大量殺戮しているのと同じこと。
時代が変わってもタワマンやら新たなる建設は止まらないが、せめて、建てる建物は長持ちする品質で、リノベーションしながら大切に長年使用されてほしい。
妖怪パレードの不気味すぎず美しさ楽しさもあるアニメーションがとても見応えがあり、ジブリってすごいなと感じる。