「『震える舌』──恐怖と絶望を超えて心に刻まれる名作」震える舌 hollowhollowさんの映画レビュー(感想・評価)
『震える舌』──恐怖と絶望を超えて心に刻まれる名作
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映画『震える舌』は、単なる医療ドラマやホラー映画を超えた、人間の極限状態を描いた衝撃作です。泥遊び中に釘で手を傷つけた5歳の少女・昌子が破傷風を発症し、家族が直面する絶望的な日々がリアルに描かれます。
特に昌子役の若命真裕子の演技は圧巻。幼い少女が見せる鬼気迫る苦しみの演技に、観る側の精神も削られます。加えて、家族の葛藤や母・邦江の精神崩壊寸前の姿が痛々しく、それぞれのキャラクターが極限の状況下でむき出しにする「人間らしさ」に胸が締め付けられます。
この映画には安堵の瞬間が一切なく、不安と緊張が最後まで続きます。しかし、だからこそ家族の苦悩と必死の姿が真に迫り、観る者の心を揺さぶるのです。音楽や派手な演出に頼らず、役者の演技力とシンプルなカメラワークだけでここまで圧倒される作品は稀有です。
観賞後には心身ともに疲労感が残りますが、それでも「観てよかった」と感じる、不思議な力を持った映画です。恐怖や絶望だけでなく、その先にある「生きることの意味」まで伝えてくれる一作。覚悟を持って、ぜひ体験してほしい映画です。
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