劇場公開日 1980年11月22日

「野村監督にしてやられましたホラー映画として観てたでしょう?そんな監督の声が聞こえてきそうです」震える舌 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0野村監督にしてやられましたホラー映画として観てたでしょう?そんな監督の声が聞こえてきそうです

2022年4月23日
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鑑賞方法:DVD/BD

1980年公開
内容は普通ならガチガチの医療映画になるところ、ホラー風味で撮られているところが特徴です

破傷風にかかった6歳の少女
大した病名ではないように思えるけれど、実はなかなかに難病でかつ想像以上の重篤さです
それは劇中でも医師の台詞として説明されます

この難病の苦しみの光景は1973年のエクソシストを思いおこさせるように仕組まれています

つまり悪魔たる悪性の病原菌が少女に乗り移って、少女や両親を苦しめていると思わせる映像なのです
さしずめ中野良子が演じる女医は、神父に相当します
悪魔払いは様々な医療行為に置き換えられる訳です

看病で疲れ果てて、両親が心神耗弱に陥るシーン特に母役の十朱幸代が錯乱してしまう演技は迫真性があります
まるで悪魔が乗り移ったかのようです

6歳の少女
可愛い盛りです
その子供が身をよじって苦しみもがき、悲鳴を上げ続けるシーンが長く何度も何度もあります

子供を持って、高熱を発してうなされたりした経験が有れば、さらに威力を倍増して、観客まで心神耗弱にしかねないほどです

物語はハッピーエンドで唐突に終わります
しかし、ホラー映画にすれた観客はそんな訳がないと疑ってしまうのです
もうひと波乱あるはず
いまか、いまかと身構えてしまうのです
しかし、そのままエンドマークがでてしまうのです

なぜなら本作はホラー映画ではなく、医療映画なのですから

私達観客には、結局のところ専門的な医療のことは分からないのです
まして難病となれば、医師の言うとおりにただ看病して快癒を祈るしかないのです

だったら、悪魔払いと大して変わらないでしょう?

つまり野村監督に観客はしてやられているのです
ホラー映画として観てたでしょう?
違いますよ、普通の医療映画です
だからハッピーエンドだったでしょう
そんな監督の声が聞こえてきそうです

さすがです

あき240