「赤川次郎原作でも最高の逸品!」ふたり(1991) こっこさんの映画レビュー(感想・評価)
赤川次郎原作でも最高の逸品!
2025年5月投稿。
この映画は1991(平成3)年に作られた、大林宣彦監督の『新.尾道三部作の第一作』に当たる作品です。
当時自分は大学生で、東京へ通うように成り(今思い返すと恥ずかしいですがw)、〈東京デビューを満喫しきって居た頃〉の映画の一つです。
大林監督と云えば『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』の《尾道三部作》で超有名な監督さんでしたが、それ以外の作品はと聞かれると正直あんまり浮かばない(失礼)、知る人ぞ知る映画監督でした。
個人的には、その内の2作は名作だと今でも思います。小林聡美さんにしろ富田靖子さんにしろ、当時は〈ド新人と言っても良い役者さん〉を使って、あそこまでの傑作に仕立てた腕は、本当に素晴らしいと思います(ア、バレちゃったww)。
そんな大林監督が《新.尾道三部作》と銘打って発表した一作目でしたから、楽しみに映画館へ向かったことを覚えています。
そして終映後、しばらく席を立てなかった記憶は未だ鮮明に残っていますし、その後継続上映している映画館を『ぴあ』で探し回って、都下だろうと地元だろうとお構い無しに7〜8回、観に行ったのもハッキリと憶えています。
それほどまでにハマった感動的な映画でしたし、個人的には「中嶋朋子さん」に“恋に落ちたと言える程”魅了されてしまったお陰でもあります。
自分は男兄弟の次男ですが、主人公の二人姉妹の設定は“感覚的に”良く理解できました。そして、その片方を早くに亡くしてしまうと云う悲しみも、何となく想像出来て、心に沁み入りました。
早逝した姉が妹に言う『あなたは今後の未来(への話)が沢山ある。私は過去の昔話ばっかり…!』と云う台詞には、大林監督自身がお子さんを早くに亡くしていると云う重みが有るだけに、説得力が段違いでした。
当時、存命だった母を連れて見せに行った際には、エンドロールの主題歌を聴きながらハンカチで号泣していたのも、今となっては懐かしい思い出です。
と、ここまで書いてみて、ただただ《泣かせる映画》だと思った皆さん、決してそうでは有りません。
大林監督は、(例え新人でお芝居が下手でも)キラキラと輝くような青春真っ盛りの若者の美しさ、そしてそれは同時に《二度と帰っては来ないんだよ》と云う意味をも含む切なさを、時にはドタバタ喜劇の様な可笑しさも取り混ぜたりして、かけがえの無い『アオハル映画』として創り上げ、観客を本当に豊かな気持ちにさせてくれます。
その「笑わせる」「泣かせる」の塩梅が、某○竹の有名監督の様に『(いかにも)さぁ、ここで笑え!』『さぁ、ここで泣け!』みたいな強制される様な不自然さ(定型的な作り)が無く、『(あなたの感じるままに)笑ってください、泣いてください』と云う感じで、観客に委ねている自然さがとても上手いのです(まぁ、チョット“笑わせ”はスベってたかもだけど…w)。
総じて大林監督の《尾道シリーズ》は『二度と戻っては来ない時間、若さ、失われたら戻らない生命の煌めき,とその貴さ』を主題として作っています。
「こんなお先真っ暗な人生、生きてても無駄だ…」と考えがちな若い世代の方々にこそ、今観ていただきたい、珠玉の作品です(旧三部作も!)。
勿論、お年を召した方々にも〈自分自身の青春時代を思い出すように〉しっかり楽しめる作品ですから、未見の方には是非お奨めします。
最後のエンドロールに、大林監督と久石譲(!)がデュエットして歌う主題歌が流れ、しっとりとして映画は終わります…。ちなみにファン情報ですが、この主題歌には“中嶋朋子歌唱バージョン”もCD化されていました。