復讐 消えない傷痕のレビュー・感想・評価
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【”冗談じゃねえ!“ありふれた日常の脇で虚無的に生き、破滅していく男達二人の姿を黒沢清監督が、乾き切った映像で描いた作品。】
ー 今作は、前作「復讐 運命の訪問者」の続編的な位置にあるが、前作を観て居なくても何の問題もない。-
■前作で、闇資金調達組織の手先の狂った兄弟に妻を殺された安城(哀川翔)。妻の復讐を果たすために暴力団の吉岡組長(菅田俊)と兄弟分のような関係を築きつつ、妻殺しの黒幕を追い敵討ちを続ける。
やがて同じアパートに住む服飾学院生の美津子(小林千香子)を糸口に、日本流通企画元会長・小笠原陶一郎(逗子とんぼ)の存在に行き当たり、その命を狙って邸宅に乗り込む。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作でも、冒頭から刑事を辞めた安城は矢鱈に人を撃ちまくる。そして、前作同様に安城には銃弾が当たらない。当たらないったら、当たらない。
・そして、今作では安城の復讐を遂行する姿と並行して、その非人間性により組員全員に国士会に逃げられた若き菅田俊演じる吉岡組長の姿が、印象的に描かれる。
・吉岡は手柄を立てた部下を祝う仲間の前で、後ろからシャベルで頭をカチ割り銃弾を頭に撃ち込むのである。そして、”足が付かない様に、処理しとけ”と言い、一人歩み去るのである。
■吉岡と安城が、アサヒナオンセンに二人で行くシーンも、二人が虚無的に生きて居る事を示すシーンである。夜中の蛇行する山道を吉岡は鼻歌を歌いながら、目を瞑り運転する姿。その隣で虚無的な表情で前方を見つめる安城。
<安城は、小笠原陶一郎の背後に彼を操る存在がある事を知りつつ、末期の寝たきり状態の小笠原の面倒を見る文江に銃弾を撃ち込み、更には小笠原に銃弾を撃ち込む。
安城の癖なのか、何度も何度も撃ち込むのである。
一方、吉岡組長は、鼻歌を歌いながら国士会に乗り込み、組員を次々に撃ち殺しつつ、自身も撃ち殺されるのである。
今作は、虚無的に生きる二人の男が、破滅の道を辿る過程を乾き切ったトーンで描いた作品である。>
続編
冒頭では覚醒剤絡みでの暗殺集団の運転手をしていた安城。その中の一人が復讐のターゲットだったようだが、その取引相手である山野辺を殺害。生き残りを逮捕した警察だったが、そいつが安城の写真を見せられ主犯だと告げる。
中橋署の西刑事は課長(大杉漣)にかけあうものの、課長は安城の復讐を容認しているかのようで取り合ってくれない。西は独自に闇資金ルートの資料を手に入れ、安城に情報交換を持ちかける。しかし、安城は完全無視。
前作と違い、黒沢清本人が脚本を担当。序盤には車に乗った吉岡組組長(菅田)と子分と安城のシーンが4分強の長回しとなっていた。全体的に引きの映像ばかりで、かなりこだわりが感じられる。ストーリー的に考えると、前作とは全くの別物ととらえたほうがいいのかもしれないが、吉岡というヤクザの存在が面白くさせているのだ。
殴られそうになるところを助けたきっかけにより、友人として付き合うようになった吉岡と安城(山本という偽名で)。杯を交わそうとするも断られ、将棋を打ったりドライブに付き合ったりといった関係。弱小事務所のやりとりもヤクザの虚しさを伝えてくれている。なんたって車が高級車じゃなくて、セリカ(?)のカブリオレだったりして、常に汚れっぱなし。しかもストーリーが進むにつれ、汚れがひどくなってゆく(笑)。子分を上の組織にスカウトされ、怒った吉岡がその子分を殺し、ついでに殴り込みも・・・岩手県の朝比奈温泉に事務所ごと引っ越すという夢も断ち消えになるどころか、単独殴り込んで死んじゃった・・・
山本の住むアパートの住人の女の子(小林千賀子)に服飾学院のパンフをもらうために採寸されるモデルとなった。彼女とも発展しそうで発展しない。アパートのドアノブにプレゼント(?)の紙袋をかけていく姿もなぜか虚しい。
そうこうして復讐相手にたどり着いた安城だったが、結局その大物の上にもまだ黒幕がいるんじゃないかと匂わせる。しかし、しょうがないので大物の妻もろとも殺害。最後に吉岡の車で駆け抜けるシーンが虚しく映る・・・
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