緋牡丹博徒 お命戴きますのレビュー・感想・評価
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手癖で作った感が強い
前作『お竜参上』に引き続き加藤泰が監督ということで期待して鑑賞したが、いや、お前これ、完全に手癖だけで作っとるやないかい!
『お竜参上』にはあれだけ漲っていたエロスと緊張感はほとんど感じられず、形骸化した技法ばかりが悪目立ちしていた。障子や襖といった日本家屋の構造をふんだんに活かしたショットは散見されるものの、それらが総体として一つの流れを作り上げているという感じがしない。
ただ、鶴田浩二演じる親方の通夜シーンの長回しは見事なものだった。フィックスだけでここまで立体的かつダイナミックな運動を撮ることができるというのはやはりすごい。その後の画面が暗転してお竜だけにスポットが当たるという演出も、少々やりすぎの感はあるものの美しかった。
ラストはかなり酷い。敵の首魁を殺し終えたお竜。そこへ彼女を母のように慕うガキが似顔絵を持って笑顔で現れる。しかしこの一連のくだり、あまりにも唐突であり、また唐突さに必然性がない。そもそも組の存続を賭けた殺し合いが今まさに繰り広げられている最中に、似顔絵を抱えて笑顔でウロチョロするようなガキがいるだろうか。あまりにもガキを舐めすぎなんじゃないか。色鉛筆を買い与えたという伏線を回収するのに躍起になるあまり、演出では誤魔化し切れない論理的破綻が生じてしまっている。
素晴らしいショットはところどころみられるだけにいっそう悔しい出来の一作だった。
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