「哀しきテロリストの自我の目覚めと自由への渇望。」人斬り もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
哀しきテロリストの自我の目覚めと自由への渇望。
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①幕末は日本史の中でも最もテロリズムが横行しテロリストが暗躍した時代である。新撰組など正体はテロリスト集団である。本作は司馬遼太郎の原作を元とした土佐勤王党の有名なテロリスト岡田以蔵のお話。②司馬遼太郎は主人公を美化したりヒーローに仕立てる為に結構史実を湾曲する人なので、なるべく史実に忠実であって欲しい歴史好きとしては余り好きではない作家(大学の先輩だし、母方の里は奈良なんですけれどね)。③本作の岡田以蔵像やエピソードも史実からかなり離れていたり史実にないものも多い。ただ、これはドキュメンタリーではなく映画なので史実と混同さえしなければ、平均以上の出来の娯楽時代劇映画であるし、それで良いと思う。④最初は土佐勤王党のテロリストとして武市半平太の命令のまま人を斬り(殺し)まくっていたのに、殺し過ぎと煙たがれ重要任務からは外されるようになり、それでも命令に絶対服従と強要されるなかで、矛盾と疑問と孤独とを感じて一人の人間としての自我に目覚めていく岡田以蔵像なので、必然的に武市半平太が悪役となっている。テロリスト集団のボスというだけでなく、目的のためには協力者や仲間を平然と殺し、最後は戦争という手段で国家転覆を目論むヒトラーみたいな悪辣な人物造形になっているのがある意味スゴイ!⑤本作での、教育が無いため命令に盲従していたり功名心を押さえきれない一種子供のような一面があると共に、自我に目覚め内省し苦悶し絶望し悟っていく姿に感情移入できる岡田以蔵像を愛嬌たっぷりに演じて、勝新太郎はやはり並ではない俳優であったと思わせる。
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