劇場公開日 1958年9月7日

彼岸花のレビュー・感想・評価

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5.0昭和33年のトリック

2024年1月14日
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鑑賞方法:DVD/BD

舞台となる昭和33年頃からは一世代後ですが、昭和人である自分にとっては、すべてが懐かしい世界でした。たぶん、それだけでかなり没入してしまったように思います。小津作品はほとんど観てなくて、20年以上前に代表作「東京物語」(53)を観たとき、全く面白さが感じられず、自分の感性に合わない作風なのかなと思っていました。ある意味リベンジのような、でも、メインディッシュは後にとっておこうみたいな感じで恐る恐る本作を観ました。やはり、歳をとってわかるのかなというのが率直な感想ですね。平山渉(佐分利信)と妻の清子(田中絹代)は夫唱婦随の典型のような夫婦で、今の時代から観るとダメ出しされそうな言動のオンパレードですが、その時代なりの夫婦間、あるいは親子間の深い愛情が感じられて、嫌悪感はありませんでした。ご夫婦を演じている佐分利信さんと田中絹代さんがとにかく魅力的で、それは欠点の全くない優れた人物ということではなく、当時のごく平凡な日本人がもっている良識や感情をとても自然に表現されているというところで親近感がもてたように思います。すべてのカット、台詞に無駄がなく、今であれば2倍速で飛ばされてしまいそうな多くを語らないシーンでさえ後に尾を引くような深い味わいがあり、これが世界で賞賛される小津映画なんだな~と今更ながら感激してしまいました。今作に惹かれたもう1つの理由は、山本富士子さんの存在です。本作は脇役もしっかり活き活きと描かれていて、山本富士子さんも脇役ですが、扮する佐々木幸子のキャラクターが本当に魅力的で、とりわけ平山渉にトリックの話をするシーンの可愛らしさ、人としての美しさは、永久保存版の名シーンのように思いました。あまりに美しすぎる、この世には存在しえないかのような、武者小路実篤の世界観をふと思い出しました。

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赤ヒゲ

5.0小津安二郎作品で初めて笑えた。最高の映画。

2023年5月3日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

コメディ映画でした。最後に泣けました。

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あっちゃんのパパと

5.0昔の父親像

2022年6月1日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

長女(有馬稲子)に見合い話が持ち上がるが、当人はあまり乗り気ではないようだ。
そのうち、彼氏(佐田啓二)が結婚させてくれ、とやってくる。
父親(佐分利信)は無視されたと感じて反対、式にも出ないという。
長女の友人(山本富士子)が一計を案じ・・・。
戦争を体験した世代が、時代の移り変わりに戸惑っている。

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いやよセブン

4.0縞柄と格子柄、差し色に赤

2021年8月28日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

ザ・小津安二郎!ローアングル、懲りまくってる小道具に着物。着物も浴衣も湯呑みもなんでも縞柄か格子柄。色は藍、グレー、枯葉色など。そしてほぼ必ず差し色として赤が映像に入り込んでいる。畳の上のやかん、着物裏地、帯、座布団、ラジオ、ハタキ、洗濯物、湯飲み、テーブルクロス、お猪口など。

洋装の女性は皆ショートカットで可愛いドレス、シーム入りのストッキングに黒パンプスはヒール6センチ以上!

この映画でなんといってもピカイチなのは田中絹代でした。勿論いいポジションですが、彼女の演技と台詞と表情と話し方が追従を許さずに抜群でした。女の強さを具現してました。負け戦の詩吟に感動し校歌を友と一緒に歌うような男が、ラジオから流れる娘道成寺にウキウキする女にかなうわけありません。

浪花千栄子と山本富士子の母娘のやりとりは京都のことばが耳に心地よく華やかでお花のようでした。おかあちゃんが、人のうちの逆さ箒に気がついて戻すところは笑えました😊

とても気になって面白かった点が二つ。一つ目は誰の台詞であれ「ちょいと」が頻繁に入ること。東京ことばの特徴?二つ目は立ち姿の前でも後ろ姿でも右肩あるいは左肩が下がっているところ。特に洋装の男性にそれが目立ちました。

小津安二郎の映画だから「(娘を)かたづける」がテーマであるのは予想できたけど、なんかムカムカしてしまった。小津では「浮草」が一番好きです。

おまけ
佐田啓二登場の場面、一瞬、中井貴一?と思ってしまった。よく見れば目は明らかに姉の中井貴惠だけれど全体の雰囲気や空気感が中井貴一だった。

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talisman

3.0「親の望む相手との結婚こそが娘の幸せ」という父親心がしみじみと描か...

2021年1月23日
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「親の望む相手との結婚こそが娘の幸せ」という父親心がしみじみと描かれ、今ならあれこれ信じられない設定が多かったがそれがむしろ新鮮に映った。赤色が最初から最後まで印象的に使われていたが、不自然に置かれた居間の赤いヤカンがずっと気になってしまった。

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tsumumiki

5.0本当のヒロインは田中絹代です

2019年12月19日
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鑑賞方法:DVD/BD

4人の若い娘が登場しますが、実のところ本当のヒロインは田中絹代です
彼女は実年齢49歳、母親役ですが、それでも彼女が一番長く登場し、一番多くカメラのアップを受けます

そのチャーミングなこと、そして美しいこと、可愛らしいこと
若い美女達をものともしません

監督もカメラも彼女を美しく捉える事に全身全霊をかけていることがひしひしと伝わってきます

序盤の結婚披露宴での夫の祝辞の言葉の中で、自分達夫婦には恋愛もなくとか卑下した時に、彼女が見せる微かな笑顔で、それを否定してみせるなんとチャーミングなこと!

そして披露宴が終わって夫が友人達と飲んで帰って来てからの彼女が甲斐甲斐しく夫の衣服などを片付けたり整えたりとチョコマカとする動きを画面の中に延々と捉え続けるカメラの視線は恋人を追う視線のようですらあります

小柄で控えめで、それでいて妻として母親として毅然と夫に意見もする

頑固で感情表現の不器用な夫の本当の心情の理解の深さ、夫のコントロールの手綱さばきの見事さを、素晴らしい演技とカメラで、理想の妻の姿を具現化してみせています

山本富士子も浪花千栄子も生まれは大阪ですが、それぞれ高校だったり、女給で働いたところが共に京都で、本当の流れるような京都弁を話しています
いくら方言指導してもネイティブには直ぐに分かります
というか現代ではネイティブですら、このような本当の京都弁は話せなくなってしまっています
本当の京都弁を久方ぶりに聞いて本当に懐かしく、嬉しくなりました

配役においてこの二人の役は、この本当の京都弁を話せるか否かで決まったものだと思います
他にいないのだから、例え大映の女優であっても配役するほかなかったのです
それは小道具に本物の美術品を使って撮る姿勢と同じことなのです
この二人の登場シーンは、特にコミカルで愉快で楽しいものでした

本作は小津作品初のカラー撮影作品です
白黒でなければという監督もおられる中で、本作はカラーでも全く違和感はありません
しかも単に色が付いただけではなく、カラー撮影になってよりクォリティーが増しているのです

色温度が低めの暖色系の色調のアグファカラーのフィルムに、一種独特のレンズの味が合わさって、えもいえない格調ある写真になっているのです

そして要所のシーンにアクセントとしておかれる赤い小道具の数々の使い方
ため息がでます

けれども題名の彼岸花も赤い花ですが、それは劇中には登場しません
赤い小道具が、彼岸花を代わって象徴しているのだと思います

花言葉は情熱、独立、あきらめ、思うはあなた一人、また会う日を楽しみに、とあります
その花言葉に本作の内容が込められているのです

そして夏の終わりから秋にかけて咲く花でもあります
娘は巣立ち、親は歳を取っていくのを実感するのです
それが蒲郡でのクラス会の翌朝シーンの台詞とつながっているのです

クラス会の夜の詩吟の内容は、叛逆者を討つ為に決起したものの結局敗れてしまう武将のことです
つまり親は子供には勝てないということなのです

素晴らしい傑作です

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あき240

3.5娘役三人より佐分利信と田中絹代が印象に残った映画。 しかし、中村伸...

2019年7月23日
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鑑賞方法:DVD/BD

娘役三人より佐分利信と田中絹代が印象に残った映画。
しかし、中村伸郎、北竜二、高橋とよといった脇を固める人たちはいつもながら素晴らしい。

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Mr. Planty

4.0・他人の子の結婚話だと理解示すくせに、自分の娘となると譲らないのが...

2019年4月5日
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・他人の子の結婚話だと理解示すくせに、自分の娘となると譲らないのが頑固親父なんだな
・こんちゃんのバーのくだりで大笑い
・笠智衆の詩吟、聴き入っちゃった。ぐっとくる
・頑固っていうより、素直じゃないのか

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小鳩組

4.5☆☆☆☆★★ 《親の心子知らず》…とは言えども。 親ならばこそ、良...

2018年4月19日
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☆☆☆☆★★

《親の心子知らず》…とは言えども。

親ならばこそ、良い筍を…と思うもの。

これまで何回も鑑賞してはいるが、新生フィルムセンターの上映会へ駆けつける。

結婚式の場面。新婦の父の友人としてスピーチするのが、主人公で有り。厳格な父親の山村聰。
そのスピーチの内容こそが、本作を表しているのが直ぐに分かる。

ファーストシーン。東京駅のホームにて、何気ない清掃員らしき2人の会話による軽い笑いのジャブ。結婚式後には居酒屋「若松」へと移り。友人中村伸郎と北竜二の3人で、女将役の高橋とよを肴にしての ※ 1 「そうこなくちゃいけないよ」と笑いのフックを繰り出し。
締めとして登場する。浪花千栄子のクロスカウンターぎみの怪演によって観客を笑わせ、心を一気に鷲掴みにするこの脚本の凄さたるや、凄い!と言うしかない。

今回も上映前に、デジタル修復の説明映像が有り。その細かさに感嘆する。
本作は小津カラーの最高傑作だと思うのだが、それが更に鮮明になっている。
特に画面の隅に何気なく置かれているポットや、花瓶に活けられた花。山本富士子が着る着物の帯。桑野みゆきが持つ鞄等、赤色の使い方は実に繊細です。

小津作品の特徴として、同じ場面やシュチュエーションが2回繰り返されるシーン。
本作では、笠智衆は山村聰の会社へ2回会いに来るし。その関係から、BARルナへも2回行く。
この場面でのコメディー演出も冴え捲くっているし。 ※ 1 「そうこなくちゃいけないよ」の台詞も、結婚式後に行われた同窓会の場面でもう一度使われ。その言葉の破壊力は倍以上になっている…とゆう恐ろしさは、忌々しそうにステテコ姿になり居間をグルグル回り出す山村聰並みだ(笑)

笠智衆の娘役である久我美子が話す父親を批判する会話は、そのまま山村聰に当て嵌まるのだが。その言葉は終盤で、それまで甲斐甲斐しく支えていた妻役の田中絹代に、そっくり同じ言葉を言われている。
山本富士子が仕掛ける【トリック】も、やはり2回。
2回目に言葉尻を突かれる「親の決めた結婚なんか…」等の矛盾の台詞は、「会社なんか行かなくていい!」同様、作品の中の台詞で有った。
他にも幾つが有るのだが、分かりやすいのはこのあたりか。

あ?そう言えば、佐田啓二!は…。
この作品の佐田啓二はかなり重要な役。でもそれなのに…。
佐田啓二の登場場面も2回じゃないか。
まあ、有馬稲子を送る場面が有るので、正確に言うと 3シーンの登場回数では有るのだが…。

よくよく考えたら、2回しか登場しない人物は多いのか?…と思ったら。
(画面には映らない)結婚式後に主な登場人物を登場させる、脚本上での映画魔術により。山本富士子や浪花千栄子。笠智衆・中村伸郎らは3回登場する事になっていた。(北竜二は2回)
但し、それによって笠智衆の娘役の久我美子のその後。そして、山本富士子の【トリック】によって、真の幸福感に満たされる事となる。
この時の田中絹代の幸せそうな表情には、涙腺崩壊は必死。
ラストシーンは、先日見直した『浮草』同様に列車の走行場面で、新たな人生の始まりを示し締め括る。

これぞ人類遺産。人生至福の2時間を堪能しました。

併映 『彼岸花』撮影風景 (8分:8㎜→35㎜・無声・カラー)
状態が悪く。最初の4分は、何とか人が映っているのが分かるが。後半の4分は画面がカビによる損傷が酷く、何が映っているのかわからない。

2018年4月12日 国立映画アーカイブ /長瀬記念ホール OZU(旧 国立近代美術館フィルムセンター大ホール)

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松井の天井直撃ホームラン

3.0昭和の象徴

2016年1月31日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

昭和の風景と文化を見たければ小津安二郎('◇')ゞ失敬!(死語)

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mamagamasako